エジプト政府は、日本の学習塾「スプリックス」と共同製作した算数と数学の国定教科書を、今年9月の新年度から小学校1~3年と高校2年の公立学校で本格採用したと、yomiuri.co.jpが報じた。昨年度から小学1年に導入されていたが大幅に拡大され、2028年度にも全学年で使われる見通しとなっている。
エジプトが日本の教科書を拡大採用した理由
エジプトの公立学校における日本式教科書の採用拡大は、両国政府による教育分野での結びつきが背景にある。アブドルファタハ・シシ大統領が2016年に日本を訪れた際、学校を視察して「教育パートナーシップ」を締結した。これまでに学級会や掃除などを通じて協調性を学ぶ「エジプト日本校」が69校設立されており、教科書も日本産が普及しつつある。
数学の国際調査の低迷と日本式への期待
エジプトの教育現場が日本の教育システムに注目した契機として、学力の底上げという明確な課題が存在する。2019年の国際調査において、エジプトの中学2年の数学の得点は参加国39か国・地域の中で34位と低迷した。一方で日本は、国際学習到達度調査(PISA)の「数学的応用力」など3分野で経済協力開発機構(OECD)加盟国中1位を記録しており、エジプト政府はその実績に着目した。
スプリックスが手がけた教科書の工夫
教科書を共同製作したのは、東京都に本社を置き学習塾や塾教材の販売を手がける総合教育企業の「スプリックス」である。エジプト政府側からは、長い説明文や応用問題が多い従来の形式ではなく、基礎学力をしっかりと身につけるものを求める要望が寄せられた。同社の海外事業部長である左右真哉氏は、重要ポイントを簡潔に記して直感的に分かるよう英語とアラビア語で作成し、教員が教えやすいように複雑さを避けたつくりに工夫したと語っている。
約2500万人の児童と生徒に広がる学び
今年9月の新年度から小学校1~3年と高校2年の教科書に採用されたことで、学ぶ規模は飛躍的に拡大した。ラギィ・エルエトレビ駐日エジプト大使は、「約2500万人の児童と生徒が日本の教科書で学ぶことになる」と述べている。さらにエルエトレビ大使は、自国の教材が他国に採用されることは驚くべきことであり、日本の人々にも誇りに感じてもらいたいと話している。
2028年度の全学年導入に向けた今後の見通し
昨年度に小学1年で初めて用いられた算数と数学の国定教科書は、今回の導入を経てさらに適用範囲を広げている。エジプト国内では段階的な採用が進められており、2028年度には小中高の全学年で日本の教科書が使われる見通しとなっている。両国間の教育パートナーシップを背景としたこの取り組みは、数年内に同国のすべての児童・生徒に行き渡る計画で進められている。