ウェストミンスター治安判事裁判所での検察側の主張
検察官のカシフ・マリク氏はウェストミンスター治安判事裁判所に対し、サウスヨークシャー州ロザラム出身のジョシュア・ケリー被告が7月8日に赤いボクスホール・コルサでウィデコム氏の自宅に到着し、正面玄関から侵入したと述べました。検察側の主張によれば、ケリー被告は黒い手袋を着用し、わずか2分間だけ現場に滞在していました。その短時間の間に、ウィデコム氏はハンマーで繰り返し殴打され、椅子から転落させられました。被告はその後、ウィデコム氏の財布を奪って車で逃走したとされています。
発見に至る経緯と死因の調査
ウィデコム氏は、7月8日の午後13時直前に予定されていたチャンネル5のマット・オールライト氏の番組によるオンラインインタビューに現れませんでした。番組制作チームはウィデコム氏の個人秘書を通じて連絡を試み、秘書がウィデコム氏の庭師に様子を確認するよう依頼したと法廷で説明されました。翌7月9日、庭師が室内に入ったところ、キッチンでうつ伏せに倒れているウィデコム氏を発見しました。救急隊が駆けつけましたが、同日午後12時20分に死亡が確認されました。検察側のマリク氏は、ヘイターにある自宅の防犯カメラの映像から、ウィデコム氏が前日の7月8日に致命的な攻撃を受けたことが判明したと報告しました。
検視官による開廷審問では、検視解剖が行われたものの、「現段階では、正確な医学的死因は特定されていません」との慎重な姿勢が示されました。一方で、法廷では病理学者が暫定的な死因を頭部への鈍器による外傷と判断していることが報告されています。
対テロ捜査と今後の司法手続き
ケリー被告は、対テロ対策探偵が主導する捜査の結果、殺人罪で起訴されました。警察は現在、犯行に政治的な動機やテロとの関連があるかどうかを慎重に調査しています。ウェストミンスター治安判事裁判所での短い審問中、ケリー被告は感情を見せることなく、氏名、生年月日、住所を確認する以外は発言しませんでした。被告は答弁を行っておらず、今後オールド・ベイリー(中央刑事裁判所)での審理が予定されています。
アン・ウィデコム氏の政治的経歴
亡くなったアン・ウィデコム氏は、長年にわたり英国政界で活躍した人物です。1990年代にはサー・ジョン・メージャー政権下で閣僚を任され、ケント州メイドストーン選出の保守党下院議員として23年間務めました。政界引退後はテレビ出演も積極的に行い、2010年にはBBCの『ストリクトリー・カム・ダンシング』に参加、8年後には『セレブリティ・ビッグ・ブラザー』で準優勝するなど、国民的な知名度を誇りました。その後、ブレグジット党の欧州議会議員(MEP)としてイングランド南西部を代表し、2023年には改革英国党(Reform UK)の党スポークスウーマンに就任していました。
事件の捜査は継続中であり、警察は引き続き、現場となったヘイターの自宅の防犯カメラ映像を含む証拠を精査しています。
