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2024-10-16 01:00:00
- 生成AIは人間の仕事を奪うのではないか。
- 生成AIは権利侵害のある学習データでトレーニングされている場合、仕事で使えないのではないか。
アドビのデジタルメディア事業部門代表であるDavid Wadhwani(デイビッド・ワドワーニ)氏。
撮影:小林優多郎
クリエイター業界に対する、アドビの答えはいずれに対しても明快だ。
まず、クリエイターの仕事が置き換えられてしまうのではないか、という懸念については明確に「No」としている。
動画生成AIも「動画を勝手に作る機能」ではない

「生成AIは人間の創造性をリプレイスするものではなく、ツールである」とワドワーニ氏。
撮影:小林優多郎
アドビのFirefly機能はほとんどの場合、既存のツールのワークフローの一部として組み込まれている。
例えば、今回のMAXの目玉とも言える動画生成AI「Firefly Video Model」についても同じだ。
Firefly Video Modelを使ったPremiere Pro(Beta)の新機能「生成拡張」は、「長さの足りないカットに対し、(前か後ろを)最大2秒間伸ばす」機能になる。

Premiere Proの新機能「生成拡張」は最大2秒、動画を伸ばせる機能。生成した部分には「AI生成」というタグが表示される。
撮影:小林優多郎
また、同じくFirefly Video Modelを使ったFirefly Web版の新機能「テキストから動画生成」「画像から動画生成」は、それぞれプロンプト(命令文)や手持ちの画像から5秒の動画を生成する機能だ。
現状はいずれも機能制限により「動画作品を作るためのAI機能」というより「動画作品制作を助けるAI機能」となっている。

Firefly Web版でウェイティングリストに登録すると、「テキストから動画生成」機能で5秒間の動画を生成できる。
撮影:小林優多郎
実際、アドビで プロフェッショナルフィルム&ビデオ製品マーケティングディレクターを務めるMeagan Keane(ミーガン・キーン)氏によると、生成される動画の時間制限は今後変わる可能性は大きいが、クリエイターへの独自調査の上、今回の仕様は決まったという。
「ユースケースをリサーチしたところ、最大2秒は(Premiere Proの)ソリューションでは必要な要件だった。2秒以上の空きを埋めたい場合は、違うクリップを探したり、(Firefly Web版の)動画生成機能を使ったりすることになるんじゃないか」
動画のストーリーを決め、いつカットするか、どのカットを入れるかはあくまでクリエイターが握っている。作品に使う動画素材が、自分で撮影や制作したものなのか、購入したものか、生成AIが作ったものか、という違いだということだ。
生成AI開発元に「学習の拒否」を表明できる

Firefly Video Modelは、イメージ、ベクター(イラスト)、デザインに続く4つ目のFireflyの生成AIモデルだ。
撮影:小林優多郎
生成AIに対するもう1つの懸念点は、AIのトレーニングに使われる学習素材の著作権的な問題と、そこに起因する商用利用の可否だ。
アドビは動画向けのFirefly Video Modelに限らず、画像向け、イラスト向け、デザイン向けのFireflyでも「学習素材は許諾を得たものやパブリックドメインのもの」を活用している。
許諾を得ているものというのは、同社が運営している素材サービス「Adobe Stock」のものが主になる。

アドビは生成AI開発の姿勢を大きく4つ定めている。
撮影:小林優多郎
14日の基調講演でもこれらの方向性は維持したまま、「ユーザーが(PhotoshopやPremiere Proで)作っているコンテンツからトレーニングはしない」「インターネットにあるコンテンツを収集しない」と改めて表明した。
また、学習素材についてはもう一歩踏み込んだ取り組みも進めている。
アドビはFireflyの登場当初からコンテンツの出自を明示できる「コンテンツ認証情報」の規格の標準化に努めている。

コンテンツ認証イニシアチブ担当シニアディレクターのAndy Parsons(アンディー・パーソンズ)氏。
撮影:小林優多郎
アドビは今回のMAXに合わせて、コンテンツ認証情報に「AI学習のトレーニングを許可するか否か」を権利をもつクリエイターや企業が表明できるようになったと発表した。
アドビ自身がこうしたタグを遵守するのは当然だが、標準化団体・C2PAには3700のメンバーが所属しており、その中にはグーグルやMeta、OpenAI、アマゾンなど多くのビッグテックやAI企業が含まれている。

2025年第1四半期にパブリックベータ提供が始まる「Adobe Content Authenticity」で、既存のコンテンツにコンテンツ認証情報を付与しているところ。SNSリンクの下に「AIトレーニング許諾」の有無を示すチェックボックスがある。
撮影:小林優多郎
「トレーニング許諾タグ」がどの程度の効力を発揮するかはまだこれからだが、アドビでコンテンツ認証技術関連のシニアディレクターを務めるAndy Parsons(アンディー・パーソンズ)氏は「大きな一歩を進んでいる。大きな企業が参加しているので楽観的に考えている」と、イベント現地での取材で答えている。
生成AIはプロンプト時代からコントロール時代へ

アドビでデザインおよび新興製品担当エグゼクティブバイスプレジデント兼CSOを務めるScott Belsky(スコット・ベルスキー)氏。
撮影:小林優多郎
MAX2日目(15日)のInspiration Keynoteで登壇したアドビCSOのScott Belsky(スコット・ベルスキー)氏は、現状のクリエイティブ領域における生成AIの技術の過程を振り返った。
ベルスキー氏は2019年のFireflyなど登場時を「プロンプト時代」と表現した。それは確かに便利なものだったが「(クリエイターが)長年積み上げてきたものを安っぽくしてしまった」とした。

Fireflyの初期など、ただ「プロンプトを打って画像を生成していた」頃をベルスキー氏はプロンプト時代と呼んだ。
撮影:小林優多郎

生成AIは「コントロール時代」に移るという。その背景には、MAX 2024で発表になった生成AI技術を使った様々なツール群がある。
撮影:小林優多郎
その上で、今回のMAXで発表された様々な機能を鑑みてベルスキー氏は「次の時代は『コントロール時代』になる」とした。
単にテキストでAIに命令するのではなく、直感的な操作で生成内容を調整したり、自身の権利を持つデザインを参照させたりして、よりクリエイターの意図したものが迅速に、高品質に出せるとしている。
登場から5年が経ち、動画生成にまで対応したアドビのFireflyだが、今後クリエイターや仕事でデザインに関わるすべての人にどのような影響を及びすか注目だ。
(取材協力:アドビ)
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