ロキの痕跡:銀河の「食い合い」の証拠
研究チームは、銀河系の銀河盤(銀河の平面状に広がる領域)に位置する20の金属貧乏星を分析した。これらの星は、銀河系の他の金属貧乏星と異なる化学組成と軌道を持つことが判明した。特に、超新星や中性子星の衝突によって生成された重元素を含んでおり、それらの星が銀河系に吸収される前の別の銀河からのものである可能性が高いとされる。
銀河系は、形成期に複数の矮星銀河と衝突・合体を繰り返しながら現在の姿に成長したと考えられている。今回の研究では、ロキが「宇宙の初期に形成された最も古く小さな銀河の一つ」だった可能性が指摘されている。銀河系の歴史を解明する上で重要な手がかりとなるという。
金属貧乏星の特徴と衝突の証拠
金属貧乏星は、宇宙の初期に形成された星で、その化学組成が当時の環境を反映している。研究チームは、これらの星の軌道が銀河盤近くで異常であることに注目。通常、古い星は銀河のハロー(銀河盤の外側に広がる領域)に分布するが、今回の星たちは銀河盤に近い位置に存在していた。
「これらの星の化学的特徴と軌道から、銀河系がかつてロキという矮星銀河と衝突し、その残骸を吸収した可能性が高いと推定できます」と、研究リーダーのフェデリコ・セスティト氏(イギリスハートフォードシャー大学)は語る。「銀河の成長過程を理解する上で、非常に重要な手がかりです」と補足している。
さらに、これらの星は白矮星(太陽サイズの星が寿命を終えて残す核)を含んでいないことが判明。白矮星は数十億年かけて形成されるため、ロキは非常に短命な銀河だったと考えられている。
銀河の「食い合い」は一般的な現象
銀河の成長は、小さな銀河との衝突・合体によって行われる。銀河系は、120億年にわたって10個以上の矮星銀河と衝突したとされる。例えば、2026年4月に発表された別の研究では、銀河系の境界がこれまでの予想より近いことが明らかにされている。
今回の発見は、銀河の進化における「食い合い」が銀河系の構造に与える影響を理解する上で重要な示唆をもたらす。銀河系の中心部に存在する古い星たちが、宇宙の初期に形成された銀河の残骸である可能性がある。
今後の研究課題と意義
研究チームは、今回の結果は小規模なサンプル(20個の星)に依存しており、ロキの存在を確定するにはさらにデータが必要であるとしている。今後は、より多くの金属貧乏星の観測が求められる。
銀河系の歴史を解明するには、銀河の衝突・合体の記録を詳細に追跡する必要がある。今回の研究は、銀河の進化にかかわる「宇宙の食い合い」のプロセスを理解するための新たな手がかりを提供している。
銀河系がかつて食べた銀河「ロキ」の痕跡。この発見は、銀河の成長プロセスを解明するだけでなく、宇宙の構造形成に関する理論の再検討を促す可能性を秘めている。