ファイアサラマンダーに紫外線を当てると腹部と側面に青緑色の星々のように光る点が出現することが、5月27日付けの英国王立協会の学術誌「Royal Society Open Science」に発表された論文で明らかになったと、ナショナル ジオグラフィック日本版(natgeo.nikkeibp.co.jp)が報じた。
ファイアサラマンダーとはどのような生物か
古代、サラマンダーは火に焼かれないと考えられていた。彼らが薪の中にいることから生まれた伝説のようで、毒をもち、黒地に鮮やかな黄色い斑点があるヨーロッパ原産のファイアサラマンダー(Salamandra salamandra)の名前もこの伝説に由来する。もちろん実際に火に強いわけではないが、新たな研究で光りを放つことが明らかになった。スペイン、バルセロナ自然科学博物館の進化生物学者で論文の筆頭著者であるベルナート・ブリエル・カランサ氏は、スペインでのフィールド調査の際、UVライトを持ち歩いていた。ある雨の夜に道路を横切る1匹のファイアサラマンダーに紫外線を当てたところ、体の側面が信じられないほど明るく輝いたと振り返っている。
生物蛍光がもつ生態学的な目的とは何か
研究チームがファイアサラマンダーに紫外線を当てたところ、腹部と側面に青緑色の星々のように光る点が現れ、体から光る粘液を分泌していることが確かめられた。論文では、これらの光る点で暗い森の林床で捕食者を威嚇したり、繁殖相手を引きつけたりしているのではないかとしている。ナショナル ジオグラフィック日本版の報道によると、他の両生類や潜在的捕食者は光の点から放たれる波長を見ることができるため、この光る分泌液は捕食者に対し毒があることの警告になっている可能性がある。また、オスはメスより黄色い部分の割合が大きいという報告もあり、繁殖期にオスを目立たせるのに役立っているのではないかとも考えられている。
両生類における生物蛍光の発見の広がり
ファイアサラマンダーは発見が相次ぐ生物蛍光を示す両生類の仲間である。蛍光とは、ある波長の光を吸収し、緑やオレンジ、赤といった別の波長の光を放つ現象を指す。かつて生物蛍光は主に海洋無脊椎動物やサソリなどの節足動物に限られると考えられていたが、ここ20年余りの間にモモンガやカモノハシ、サメなどさまざまな脊椎動物のグループで確認されるようになった。2020年には米セントクラウド州立大学の爬虫両生類学者ジェニファー・ラム氏らが、サラマンダーをはじめとする両生類も生物蛍光を示すと報告している。ラム氏は今回の研究に関与していないものの、生物蛍光を発する両生類や四肢動物が次々と発見されるワクワクする時代にいると述べている。
今後の科学的調査と検証への期待
ファイアサラマンダーの生物蛍光が明らかになったことは、よく知られた種であってもほかの科学者が生物蛍光現象を調べるきっかけになると、樹上性カエルの生物蛍光を研究する独立系研究者のコートニー・ウィッチャー氏はナショナル ジオグラフィック日本版の取材に対して指摘している。ウィッチャー氏も今回の研究には参加していない。何が発見されるかはそもそも何を探すかで決まるのであり、生物蛍光を示す両生類の記録が増えれば科学者はこの現象をより頻繁に検証し記録していくようになると期待されている。