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2024-02-05 00:25:00
ハワイで購入したApple Vision Pro。
撮影:西田宗千佳
アメリカで2月2日に発売された「アップルビジョンプロ」(以下Vision Pro)を、ハワイで購入した。
日本での発売予定は決まっておらず、現状は「英語で使うアメリカ国内向けのデバイス」だ。3500ドル(約52万円)と高価でもある。多くの方にとって、自ら手にするのはまだ先の製品だろう。他にも留意点は多々ある。
しかし使ってみると、これはやはりすごい。間違いなく、(コンピューティングの)進化の形の1つだとは感じる。
仕事や趣味などにどう使えるのか。実機写真とともにファーストインプレッションをお届けする。
電源は外付け。ケーブルでバッテリーをつないで使う。

撮影:西田宗千佳
購入したのは、ハワイ州ワイキキのApple Ala Moana。

撮影:西田宗千佳
噂通り箱は巨大だ。

撮影:西田宗千佳
本体の外側。センサーやカメラなどが透けて見える。

撮影:西田宗千佳
本体下側。

撮影:西田宗千佳
本体上側。右側にはDigital Crownがある。

撮影:西田宗千佳
空間全体に「複数のアプリ」を配置できる

画像:筆者によるスクリーンショット
実のところ、「空間全体で楽しむ」ようなアプリケーションを使った場合、画質はともかく、他社のHMDに近いところもある。
Vision Proをアップルは「空間コンピューティングデバイス」と呼んでおり、他社のように「ヘッドマウントディスプレイ(HMD)」や「VR機器」とは呼んでいない。
だがVision Proの本質は、「複数のアプリケーションや複数の機器を、同じ空間の中で併用する」ことにある。

Vision Proを使ってみた画面。背景に見えるのは滞在中のホテルの部屋。
画像:筆者によるスクリーンショット
ウェブブラウザーやWord、Excelなどを同時に使えるのは当然だが、それらを相互に「普通に」使える。
イメージとしては、iPadのアプリケーションが四角い画面の中だけでなく、自分の周囲の空間全体に配置できる……といったところだろうか。

数枚のスクリーンショットから合成してみた視界全体のイメージ画像。
撮影:西田宗千佳
しかも、表示はとても美しい。文字の読みやすさもウインドウの重なり具合も満足度が高い。
こうした凝ったユーザーインターフェースは動作が重くなりがちなのだが、そうした傾向も一切ない。空間全体に自然な形でウインドウを並べて使える。
周囲の風景が歪んだりすることもない。解像感や色合いは多少現実と異なるが、こちらもやはり「自然」だ。
Vision Proの各種アプリやインターフェイスの様子。
撮影:西田宗千佳
あくまで自然に、空間全体をコンピューターのディスプレイとして使えるようにするのがVision Proの特徴と言える。けれどもこれは、単に画面を並べているだけとは異なる。
ポイントは、「複数のアプリケーションを使いながらやりたいことが、ほぼ思った通りにできる」という点だ。
「Vision Proをつけ続ける」生活 は可能か
そのことを説明するには、Vision Proが搭載している「Persona(ペルソナ)」という機能を説明する必要がある。
ペルソナとは、Vision Proのカメラを使って顔を立体的にスキャンし、表情なども生成し、Vision Proのセンサーを使って「自分の表情や手振りに合わせて、CGの自分自身を空間内に描き出す」仕組みだ。
言葉で説明すると難しく感じるが、用途を考えるとよりわかりやすくなる。
HMDをつけたままビデオ会議に出るのは難しい。カメラで映せば、「HMDをつけた顔」になってしまうからだ。
だからこうしたプラットフォームでは、自分を3Dでキャラクター化した「アバター」を作り、自分の動きや声を重ね、自分自身の分身として使う。

Vision ProからZoomに参加。筆者は左だが、CGになっているのがわかるだろうか。
画像:筆者によるスクリーンショット
ゲームなどではキャラクターっぽいCGモデルを使うことが多いが、アップルのペルソナでは、自分の顔をキャプチャーして作る。
Vision Proをかけてビデオ会議アプリやFaceTimeを使った場合、通常だとビデオカメラを介して送られる「顔の映像」は、Vision Pro内で合成されたペルソナのものになる。

iPadでのZoomの画面。筆者は右。Vision Proからペルソナを使って参加しているため、iPad(編集部側)からはCGに見える。
画像:編集部によるスクリーンショット
正直、画質はそこまで良くない。自分そのものか、と言われると戸惑う完成度でもある。
ただ、他人から見れば「なんとなく本人の特徴は備えている」とのことだし、的外れなレベルではない。
なにより、会議中はちゃんと相手の顔を見たり、手振りを伴って話しかけたりができる。画質以上に、表情の再現や対話の自然なことが重要だ。
ペルソナ機能は、(おそらく)可能な限りVision Proを外さずに作業するためにある。
「ビデオ会議のためにVision Proを外す」のでも「ビデオ会議のためにVision Proをつける」のでもなく、電話に出るかのように自然にビデオ会議に参加し、相手に自分の姿を見せるために「自分を模したアバター(ペルソナ)」を使う。
ビデオ会議の招待のためにURLを作り、参加してほしい人に渡す、と言った場面は多い。Vision ProでもZoomの専用アプリなどでは、参加用のURLを簡単に発行できる。
招待を相手に送るには、メールなどを使ってもいいし、メッセンジャーアプリなどで「コピペ」してもいい。Vision ProではMacやiPadでアプリを複数使い分ける時と同じように、相互にコピペしたり同時に開いておける。
この「PCやタブレットと同じように使える」ことと、ペルソナのように「Vision Proを外す機会を減らす機能」、そして「周囲が自然に見える機能」がセットになることで、自分にしか見えない周囲の空間に必要なアプリを置きつつ作業がこなせるようになる。
Macの画面も「ワンタップ」でVision Proの中へ
実はMacとの連携機能もある。
MacBookを認識すると上に「Connect」という表示が出るのだが、そこをタップすると、Macの画面がVision Pro内に大きく表示されるのである。
遅延などもほとんど感じられず、まるで単に「大きな4Kのディスプレイが空中にあらわれた」ようだ。

下のMacの画面がVision Proの中に。実際にはもっと大きな表示に拡大可能。
画像:筆者によるスクリーンショット
さらには、MacのキーボードやタッチパッドはVision Proと連携する。Macのものがそのまま認識され、Vision Pro上で文字を入力したり、何かを選択したりするのに使える。
同様の機能は、既に「iPadの操作をMacで行う」連係機能として実現済みのものだが、それがMacとVision Proの間でも採用されていることになる。
Vision Proが目指す世界は一般化するのか
Vision Pro自体が重いことや、どうしても顔などに圧迫感があることなどはマイナスだ。体に対する物理的な制限という面では、技術的な課題がまだ大きい。
価格の高さ、ソフトコンタクトレンズや(Vision Pro側に別売りのレンズを付ける)インサートレンズが必須という構造といった、「自然さ・快適さのための技術的なトレードオフ」はまだ多いのも事実だ。
その点からVision Proを否定するのは簡単だ。
だが、Vision Proの中でこの原稿を書いてみると、「空間コンピューティング」の作業空間には、未来につながる「なにか」がある。
筆者はVR機器を使って「空間全体を使って仕事をする」手法を色々と試してきた。
それらは確かに便利だったのだが、Vision Proほどの「自然さ」はなく、「便利さ」の点でも足りないところがあった。
だが、Vision Proではそれらの課題が一気に高い水準で解決された。新しい要素が支持されるには「快適である」ことが必須の条件だ。
現状のVision Proは「機能の量」や「ユーザーインターフェースの良さ」という点では高い評価ができて、まさに「快適だ」と思う。
技術的な課題はいつか解決できる。
Vision Proがやろうとしていることも、ほんの1年前までは「この先の未来に可能になること」だった。だが、今は目の前の現実だ。
他社も含め、ここから軽量化・低価格化・快適化の競争が本格的に始まるだろう。
Vision Proが示したものが「多くの人に支持されない未来」になる可能性もゼロではないが、もし順調に軽量化・低価格化・快適化が進むなら、そこまで特別な世界ではなくなるのではないだろうか。
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