世界中の渡り鳥の約9分の1が絶滅の危機に直面しており、全体の45%が個体数減少に陥っていることが、2026年9月11日に発表された国際的な保全報告書で明らかになった。ケニアのナイロビで開催された国際会議では、生息地保護に向けた約60億ドルの資金動員を掲げる「ナイロビ渡り鳥宣言」が採択された。
渡り鳥の45%が減少、11%が絶滅危機の現況
国境を越えて地球規模で移動を続ける渡り鳥が、かつてない深刻な圧力にさらされている。BirdLife Internationalが4年ごとに発行する最新の報告書「State of the World’s Birds 2026」によると、評価対象となった1,843種の渡り鳥のうち、45%にあたる種で世界的な個体数の減少が確認された。安定しているのは30%、増加傾向にあるのは14%、残りの11%については動向が不明となっている。
絶滅リスクは全体として高まる傾向にある。状況の悪化により上位のリスクカテゴリーへ移行した種が102種あった一方、改善によって下位カテゴリーへ移行した種はわずか34種にとどまった。近年では、主にヨーロッパ、北アフリカ、西アジアを原産地とするシベリアホトグリ(スレンダービルド・カーリュー)が、1995年にモロッコで最後に確実な記録を残して以降、公式に絶滅が宣言された。これは、ユーラシアおよびアフリカ大陸の本土における近現代初の世界的な鳥類絶滅事例とされる。
生息環境別の影響と渡り経路ごとの深刻度
特に大きな打撃を受けているのは、海洋および沿岸の湿地に依存する鳥類である。渡り鳥のシギ・チドリ類の54%、海鳥の49%が減少しており、森林や沿岸湿地などに生息する種についても47%から51%の範囲で個体数が減っている。
主要な4つの陸上フライウェイ(渡り経路)システムの中で、最も減少種の割合が高かったのは東アジア・オーストラリア地域フライウェイであり、その比率は53%に達した。また、世界に6つある海洋フライウェイを利用する種の半数も減少傾向にある。地域的なモニタリングによれば、ヨーロッパとアフリカの間を往復する長距離渡り鳥は1980年以降で約35%減少した。北アメリカにおいても、1970年から2017年の間に419種の渡り鳥が約25億羽の純減を記録している。
BirdLife Internationalの首席科学者Stuart Butchartは、渡り鳥は環境の監視役であり、その減少は人類を支える自然システムへの圧力が高まっていることを示していると述べた。一方で、協調的な行動によって絶滅を防ぎ個体数の回復を助けられるなど、保全策が有効であることは科学的に明らかであり、解決策は既に存在するため、現在はそれをフライウェイ規模で実施することが必要であると語った。
人間活動がこうした危機のほぼすべての主因であると報告書は指摘している。脅威を受けている渡り鳥のうち、139種が外来種や疾病の影響を受け、農業と気候変動がそれぞれ103種、狩猟および罠にかかる影響が99種、汚染が96種、都市開発が71種、人間の攪乱が65種、漁業が62種、エネルギーインフラが55種、森林伐採が39種に及んでいる。さらに、ヨーロッパ、地中海、コーカサス、アラビア半島では、毎年推定1,310万羽から4,270万羽の渡り鳥が違法に殺害または捕獲されており、カスミ網やとりもちを使った食用目的の密猟が後を絶たない。
ナイロビでの首脳会議と60億ドルの資金動員
この宣言に呼応し、複数の国際開発金融機関がフライウェイ保全を融資枠組みに統合する具体的な計画を表明した。生息地の保護と回復のために総額約60億ドル(約44億ポンド)が動員される見通しである。
| 機関名 | 動員計画・支援内容 |
|---|---|
| アジア開発銀行(ADB) | 今後10年間で30億ドルを動員し、東アジア・オーストラリア・フライウェイ沿いの優先湿地50カ所以上を保護。約2億人の生活も支援。 |
| ラテンアメリカ・カリブ開発銀行(CAF) | 2050年までに30億〜50億ドルを動員し、30以上の景観・海域を保護。 |
| 世界銀行およびBirdLife International | アフリカ、ヨーロッパ、アジアで20億羽以上の渡り鳥が利用するフライウェイを支援するため、数十年規模の資金を拠出。 |
日本的高円宮妃殿下は、BirdLife Internationalの名誉総裁として会議に寄せたメッセージの中で、Migratory birds do not recognise borders. They connect Asia to Africa, the Arctic to the tropics.
国境を越えた保全の成果と今後の課題
希望のない状況ばかりではない。報告書は、国境を越えた協調的な保全活動がいくつかの種を蘇らせた具体的な成功事例も挙じている。

- オーストラリアのマッコーリー島では、外来種のウサギ、ネコ、ネズミ、ウェカ鳥の排除により、ブルーペットレルやハイイロシロハラミズナギドリなどの渡り海鳥が劇的に回復した。
- 中国では、海岸の泥干潟の開発目的で1979年に導入された外来植物スパルティナ(平滑互米草)を駆除する大規模な国家プログラムが実施され、初年度だけで全体の半数にあたる3万7,553ヘクタールが復元され、シギ・チドリ類の餌場が再生された。
- 英国エセックス州のウォラシー島では、海岸侵食の脅威にさらされていた農地を湿地として復元した結果、ピーク時には3万2,000羽以上の水鳥が飛来するようになり、その中には1万1,270羽のアカアシシギ(レッド・ノット)が含まれている。
しかし、196か国が合意した2030年までの生物多様性目標に向けた進捗について、報告書は依然として「遅すぎる」と警鐘を鳴らしている。個別の国境内にとどまらず、大陸間の移動経路全体を網羅したフライウェイ規模での実効的な施策の実行が、今後の最大の焦点となっている。