2026年9月6日、ドイツ東部のザクセン=アンハルト州選挙で、右派ポピュリズム政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」が、主流政党を大きく引き離す決定的な勝利を収めました。州選挙管理委員会の暫定結果によると、AfDは43.8%の得票率を記録し、保守系のCDUは17.2%にとどまりました。一方、ARD放送の出口調査では、AfDの得票率は44.4%、フリードリヒ・メルツ首相率いる保守派は18.3%とされています。
単独過半数に届かず:39議席という現実
AfDは州議会での単独過半数による政権運営を目指していましたが、最終結果では83議席中39議席となり、過半数に必要な42議席に3議席届きませんでした。これにより、第二次世界大戦後のドイツで右派政党が州政府を率いるという初の事例となるまであと一歩という状況となりました。
AfDの州候補者である35歳のウルリヒ・ジーグムント(Ulrich Siegmund)氏は、この結果について「歴史を塗り替えた」と述べ、政権を担う明確なマンデート(負託)を得たと主張しています。ジーグムント氏は、少数政府を率いるという「ゲーム」には関与しないと述べており、暫定結果で過半数に届かなかった状況を受け、「必要であれば、単に新しい選挙を行うだけだ」としています。一方で、党の全国リーダーたちは少数政府の可能性を検討しています。
CDUの崩壊とフリードリヒ・メルツ首相への打撃
今回の結果は、ザクセン=アンハルト州を24年間にわたり率いてきたメルツ首相の保守党にとって壊滅的な結果となりました。メルツ首相の個人支持率は歴史的な低水準にまで落ち込んでおり、有権者は彼の経済再生に向けた改革案や、失策の多いコミュニケーションスタイルから離れた形となりました。

ジーグムント氏はARDに対し、「今回の選挙キャンペーンにおいて、フリードリヒ・メルツは我々にとって非常に優れたキャンペーンマンだった」と皮肉を込めて語りました。
BSWの動向と「防火壁」の亀裂
主流政党はAfDとの協力を拒否する、いわゆる「防火壁(firewall)」を維持しています。AfDのザクセン=アンハルト州支部は、国内情報局によって「右翼過激派」に分類されており、同局は党員によるイスラム圏からの移民への誹謗中傷などを指摘しています。ジーグムント氏はこの分類を否定しています。
AfDが掲げる強硬な政策と価値観
2013年に結成されたAfDは、人口約210万人(200万人強)の小規模な州であるザクセン=アンハルト州のような、旧共産圏の経済的に恵まれない東部地域で強い支持を得ています。党が掲げる主な政策は以下の通りです。

- 治安と外交:移民の厳格な制限、「リミグレーション(remigration)」の推進、ロシアとの関係修復。
- 経済・主権:ユーロ離脱の検討。
- 価値観:恥じることのないドイツ的な愛国心の促進。
州レベルで政権を握ることは、警察、地方教育、文化への権限を持つことを意味します。
国際的な反応と2029年連邦選挙への影響
この結果は国際的にも注目されました。ドナルド・トランプ前米大統領は、ドイツのテレビ放送による予測のスクリーンショットをTruth Socialに投稿しました。また、ロシアのキリル・ドミトリエフ特使はトランプ氏の投稿を引用し、「実務的なAfDにとっての歴史的勝利」と称賛しました。ドミトリエフ氏は以前、AfDを「ドイツにとっての希望と理性の党、協力、真実、そして希望の党」と評していました。また、米国のJD・ヴァンス副大統領候補は、昨年の連邦選挙を前に同党を支持し、ドイツ国内で政治的干渉であるとの批判を呼びました。
一方で、ポーランドのドナルド・トゥスク首相は、「ポーランドでAfDの勝利を喜ぶのは、馬鹿か裏切り者だけだ」と厳しく批判しました。

AfDの共同リーダーであるアリス・ワイデルとティノ・クルパッラは、出口調査で2021年の結果の2倍以上の得票が見込まれたことに歓喜しました。ワイデル氏は、この結果が「歴史的」であり、AfDに政権を担う明確なマンデートを与えたと歓迎しました。
「これは単にザクセン=アンハルト州だけの問題ではない。ドイツ全土への、自信に満ちたシグナルだ」とウルリヒ・ジーグムント氏は支持者に語りました。ジーグムント氏は、州での勝利を、2029年に予定されている連邦選挙で国家権力を握るための第一歩として繰り返し位置づけています。
この結果の衝撃は大きく、主要テレビ局のDas Ersteは、この結果が何を意味するかに焦点を当てるため、伝説的な刑事ドラマ『Tatort』の放送をキャンセルしました。