インド政府は2026年9月、パキスタンとの1960年インダス水域条約を支持し、係争地での水力発電ダム建設の制限を命じた常設仲裁裁判所の裁定を全面的に拒否した。同条約をめぐっては、両国間で深刻な対立と緊張が続いている。
常設仲裁裁判所の裁定とインドの反発
しかし、インド外務省は月曜日に発表した声明でこの判断に反発し、主権に基づく決定に管轄権はないとして、同仲裁裁判所の裁定を「カテゴリー的に」拒絶した。さらに、今後の見解も含めて、インド国内で進められているプロジェクトに対するいかなる影響も及ぼさないと主張している。
条約の効力とラトル水力発電所をめぐる制限
世界銀行の仲介によって1960年に結ばれたインダス水域条約は、インダス川流域の6つの河川の利用を両国間で定めている。インドには東部諸河川への無制限のアクセスが認められる一方、パキスタンは西部諸河川の権利を受け取っている。この枠組みはこれまでに3度の戦争を乗り越えてきたが、近年は緊張の再燃により大きな試練に直面している。
今回の仲裁裁判所による制限措置は、世界銀行が任命した中立専門家が最終決定を下す時期まで継続される見通しである。専門家による最終判断は2027年7月までに下されることが予想されており、それまでの間、ダムの壁や取水構造物に関する工事は一定の水準を超えないよう制限されている。
パキスタンの歓迎と水資源をめぐる危機感
下流国であるパキスタンにとって、インダス水域条約は国民の生活と農業を支える生命線である。同国ではインダス流域の水がかんがい農業の約80%を支えており、労働人口の65%が従事する同セクターは国内総生産の約25%を占めている。

Ishaq Dar 外相(パキスタン)は、今回の裁定によって、拘束力のある国際条約を一方的に停止または破棄することはできないというパキスタンの整合した主張が正当であると証明されたと述べた。
停止の背景にある安全保障上の亀裂
インドが同条約の効力を停止させる動きに出た背景には、カシミール地方の観光地で発生した武装勢力による襲撃事件がある。インド側は、この事件で多くの犠牲者が出たことを受けてパキスタンが背後にいると非難し、昨年4月に条約の効力を停止すると宣言した。これに対しパキスタンは関与を否定し、独立した調査への参加を申し出たものの、外交・貿易関係のダウングレードや国境閉鎖を経て、軍事的な衝突にまで発展した経緯がある。

仲裁パネルは、インド側が主張したテロや武力の行使、主権、気候変動といった理由は、国際法上の条約停止や終了の厳格な要件を満たしていないと結論付けた。2027年7月に予定される中立専門家の判断に向け、核保有国間の水資源をめぐる攻防は今後も予断を許さない状況が続く。