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2025-11-10 22:30:00
その代表と言えるのがラッキンコーヒーの創業者たちが2022年に立ち上げCotti Coffee(コティコーヒー、庫迪咖啡)だ。上場していないので最近の数字は分からないが、2024年に店舗数が1万店を超えたと発表している。
ラッキンコーヒーとコティコーヒーはデリバリー・テイクアウト特化型の店舗が多く、店内の体験を重視するスタバとはビジネスモデルが異なる。
スタバのドリンクの価格は30元前後(約650円:1元=21.5円換算)なのに対し、コティコーヒーが価格破壊を仕掛けたことで、同社やラッキンのコーヒー1杯の価格は10元(約220円)前後まで下がった。同時にデフレが進行し、消費者も手軽で安価なブランドに流れるようになった。
中国都市部では豆や焙煎にこだわったスペシャリティコーヒーのチェーンも台頭し、スタバの競合として存在感を高めている。
強まるスタバ包囲網
コーヒー以外の競合もある。
コーヒー文化の歴史が浅い中国にあって、消費者の裾野がより広いのが「お茶」をアレンジしたティードリンク市場で、最近はスタバにとってより大きな脅威となっている。
ティードリンクブランドは2010年代後半から勢いを強め、近年上場ラッシュに入っている。
ティードリンクのブランドがコーヒーに進出するようにもなり、スタバも現地ブランドに対抗してティードリンクを発売し、2025年6月にはアイスティーや「フラペチーノ」など、コーヒー以外のドリンク価格を値下げした。
筆者は2024年、25年と中国に滞在した際、ほぼ毎日これらの飲み物をデリバリーした。ティードリンクもコーヒーも3年前に比べると価格が下がっており、しかもいくつもブランドがあるので、毎日違うブランド、違うメニューを試した。
消費者にとっては選択肢が増え、値段も下がっていいこと尽くめだが、企業側にとっては超レッドオーシャン、消耗戦になっているわけだ。
中国事業の過半を手放す
新CEO就任から2カ月経った昨秋、スタバが中国事業の一部売却を検討していることが表面化した。
関心を示す企業は多く、米メディアは投資会社のカーライル・グループ、中国メガテックの京東集団(JD.com)、やテンセント(騰訊)など名だたる企業が候補に挙がっていると報じた。
そして11月3日、スタバは投資ファンドのボーユ投資を中国事業のパートナーに選んだことを発表した。両社は中国事業を引き継ぐ合弁会社を設立し、博裕投資が6割、スタバが4割を出資する。
博裕投資は世界最大の電池メーカーCATL(寧徳時代)や、中国のティードリンクチェーン蜜雪氷城(MIXUE)など中国の多くの著名企業に出資するファンドで、2021年には資生堂とも新興企業に出資する投資ファンドを立ち上げている。
マック、KFCと同じ選択
スタバの中国事業の売却には、KFCやピザハットを展開する米ヤム・ブランズと、米マクドナルドというお手本が存在する。
両社とも2010年代半ば、賞味期限切れの鶏肉使用に端を発した「食の安全」問題と、現地企業との競争激化が要因で中国事業が不振に陥り、同事業を分離して再建に成功した。
ヤム・ブランズは2016年、中国事業を分離し「ヤム・チャイナ」が中国のフランチャイジーとして経営を引き継いだ。アリババグループの出資などを受けローカル化を進めたヤム・チャイナは、店舗数を約6900店舗(分離決定した2015年時)から1万6395店(2024年末)に増やしている。
マクドナルドは2017年、中国の国有複合企業である中国中信集団(CITIC)と米投資ファンドのカーライルなどに中国事業を20億8千万ドル(約3200億円)で売却。マックの中国事業を担う新会社「金拱門」が設立され、CITICが52%、カーライルが28%、マクドナルドが20%を出資した。
新会社は中国事業を再び軌道に乗せ、米マクドナルドは2023年、カーライルから株式持ち分を買い取って、金拱門の出資比率を48%に引き上げた。中国の店舗数は2017年比3倍の7227店(2025年6月末)に増えた。
ケンタッキーの中国1号店開店は1987年、マクドナルドは1990年。いずれも進出後25年ほど経って成長の踊り場を迎え、現地企業にかじ取りを任せた。
スターバックスも中国進出から26年目の決断であり、現在のスタバと当時のKFC、マックと状況がよく似ている。
中小都市開拓が鍵

スターバックスの中国の売上高は直近ではプラスに転じている。
ティードリンクや軽食メニューを充実させて昼や夕方の来店を促す施策や6月の値下げが一定の効果を上げ、デリバリーも好調だ。
ただし、デリバリーを運営する企業の値下げ(クーポンのばらまきや配送料の引き下げ)の恩恵を受けた面も大きい。
デリバリー業界もデフレを背景に競争が激しくなっており、プラットフォームが値下げの原資を引き受けて消費者を奪い合っている。
スタバにとってはデリバリーの売り上げや注文件数が増える一方で、客単価が下がる結果になっているだけでなく、客がデリバリーに流れることで“サードプレイス”の価値・ブランド力の低下など・新たな課題も懸念される。
スタバが中国の新会社に期待するのは、現地の競争環境に対応しながらもブランド力を維持することと、より小規模な都市の開拓だろう。
スタバは店舗数を8011店舗(2025年9月末)から2万店に拡大することを目指している。現在の店舗数は日本の4倍にとどまっており、2万店は決して非現実的な目標ではない。
しかし、これまで出店してきた北京や上海といった1、2級都市は既に飽和状態にあり、空白地帯の3~5級都市でどれだけ伸ばせるかが成長の鍵を握る。
トヨタや日産も、中国消費者に選ばれるEVをつくるため、現地の体制を変革している。事業の売却というとネガティブなイメージを抱かれやすいが、最大市場であるアメリカでも危機に瀕しているスタバにとって、競争が激しくなる一方の中国事業を他者に託してアメリカに集中するのは、合理的な選択に他ならない。
浦上早苗: 経済ジャーナリスト、法政大学MBA実務家講師、英語・中国語翻訳者。早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社(12年半)を経て、中国・大連に国費博士留学(経営学)および少数民族向けの大学で講師のため6年滞在。「新型コロナ VS 中国14億人」「崖っぷち母子 仕事と子育てに詰んで中国へ飛ぶ」(大和書房)。未婚の母歴13年、42歳にして子連れ初婚。
#スタバの中国事業売却は撤退か戦略かマックKFCが10年前に辿った道は #Business #Insider #Japan