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出産とキャリアをめぐる“不自由な自由”にどう向き合う?「20代で計画的に考えた」元助産師起業家と考える | Business Insider Japan

働く女性にとって、キャリアと妊娠出産などのライフイベントの両立は悩ましいテーマだ。撮影:今村拓馬「子どもを産む・産まないは自由のはず。でも、その自由は本当に守られているのか?」2025年7月の参院選では、参政党の代表が「高齢女性は子どもを産めない」「将来の夢はお母さんという価値観を取り戻す必要がある」といった発言を行い、物議を醸した。少子化対策が急務であることは間違いないが、特定の価値観を押しつけるアプローチには多くの批判が集まった。子どもを持ちたいかどうかも含めて、「キャリアと出産」について考えたことがある女性は多いはずだ。今回は、産前産後ケアのスタートアップ・ジョサンシーズを立ち上げた渡邊愛子さんと、このテーマについて掘り下げてみた。自身も2児の母である渡邊さんが語るのは、出産をめぐる選択のリアルと、そこから見える社会の課題だ。この記事は、経済メディア『Business Insider Japan』とDEIメディア&コミュニティ『Mashing Up』によるポッドキャスト番組「社会のミカタ」vol.1、vo.2の内容をまとめたものです。【音声版はこちら】Spotify、Appleポッドキャスト、アマゾン音楽、YouTube渡邊さん自身の「キャリアと出産」の選択画像提供:Josan-she’s「私は(20代の)早い段階で計画的に結婚、出産をしました」そう語る渡邊さん。当時パートナーがいたこと、そして看護師・助産師として妊娠・出産に関する専門知識を持っていたことも、判断を後押しした。「キャリアだけを考えるのではなく、体の問題もある。医学的に35歳以上は高齢出産と言われます。体の変化や体質という現実もある中で選ばざるを得ないから、男性に比べて女性はキャリアの築き方やタイミングに迷う場面が多いのが現実です」渡邊さんの場合は、生理不順気味だったこともあり、リスクを意識して「早めに動いた方がいい」と考えた。当時、助産師として夜勤をこなす不規則な生活の中でも、20代で出産を計画した背景にはそうした事情がある。今は2児の母であり起業家。そこに至るまでにもキャリアと子育てにおける選択があったが、「後悔は一つもない。むしろ当時の選択が今につながっている」と振り返る。「自分の体を知ったうえでキャリアを考えること。それが本当に大事だと思っています」産後、キャリアの壁も画像提供:Josan-she’sとはいえ、助産師としてキャリアを続けるのは簡単ではなかった。1人目の出産後は4カ月で復職したが、勤務していた大学病院は夜勤を含む不規則勤務。継続は難しく、夜勤のないクリニックに転職した。それでも、産後の体と乳児のいる中で生活リズムをつくることは想像以上にハードだった。「産む前は“出産後もバリバリ働ける”と思っていたけれど、授乳で睡眠が細切れになり、出勤するだけで大きな負担でした。そこはあまり想像できていなかったですね」さらに2人目の子どもは体調面から集団生活が難しく、一般の保育園に預けられなかった。結果として臨床現場を離れざるを得ず、「助産師は続けたい。でも今の働き方では無理」というジレンマに直面する。実際、日本では助産師資格を持ちながら現場を離れている人が半数近くにのぼるという。また、日本では助産師は女性に限定されている資格であるにもかかわらず、働き方の柔軟性が乏しいのが現状だ。「この仕組みはおかしい」と起業撮影:今村拓馬「もどかしかったです。せっかく就きたい職で資格も取ったのに、幼い子どもを育てながら病院で勤務するのは難しい。助産師は専門性が高いのだから、違う形なら仕事を続けられるはずだと思いました」加えて、自身の出産経験も「この社会の仕組みはおかしい」と思うきっかけになる。「病院では、助産師として出産したお母さんたちに育児のノウハウをたくさん伝えてきたけれど、いざ自分が子どもをもってみたら“めちゃくちゃ大変じゃん”と。初めて我が子を抱く母親たちが試行錯誤している姿を思うと、もっと効率的で献身的なサポートがあるべきだと感じました」そうした実感から立ち上げたのが、産前産後ケアを軸にしたスタートアップ・ジョサンシーズだ。基本的に病院勤務しか選択肢がない助産師の働き方に、一時的な訪問支援やオンライン相談といった新しいスタイルを広げようとしている。出産とキャリアのはざまを支えるジョサンシーズでは、オンラインでの相談から低月齢期に対応したベビーシッター、産後ケア施設の運営まで、必要なときに専門職のサポートを受けられる仕組みを整えてきた。多くの家族と関わる中で、女性の「出産とキャリアの両立」に関する悩みにも近くで触れてきたという。結婚や妊娠をきっかけに仕事をどう続けるか迷う人、育休からの復帰タイミングに不安を抱える人、そして「子どもと一緒に過ごしたいけれど、(仕事を辞めて)社会から取り残されるのが怖い」と揺れる声も少なくない。渡邊さんは、そうした声に耳を傾けながら「正解は一つではない」と強調する。「何が良いとか悪いではなく、みんなそれぞれの立場でベストを尽くそうと考えている。悩みは尽きないし、制度や社会の圧があるからこそ難しい問題なんだと思います」だからこそ渡邊さんは「自分で選ぶ」ことの重要性を伝えるようにしているという。母子中心の体制にも疑問画像提供:Josan-she’s渡邊さんは、産後ケアの現場から父親の課題にも目を向ける。「女性だけでなく男性たちも、家庭や子育て、そして自分のキャリアを含めて非常に苦しんでいるのではないかと思います」日本は妊婦健診や安全な出産のための医療体制は整っているものの、出産後になると支援の枠組みは急に心もとなくなる。出産前の対象は「母親と赤ちゃん」に限られることも多く、父親が学ぶ機会や関わるきっかけが圧倒的に少ないのが現状だ。こうした中で、父親は赤ちゃんが生まれた瞬間から生活が一変する。そのギャップこそが、渡邊さんが課題視するポイントだ。そこで、ジョサンシーズでは助産師が父親に赤ちゃんのケアの仕方や関わり方をレクチャーするサービスも始めている。産後の妻から教わることが多い沐浴やおむつ替えといった基本的なケアを専門家から学ぶことで、自信を持って育児に関われるようにするのが狙いだ。実際、妻が産後に再入院し、新生児と2人きりになった父親から支援要請があったケースもある。最初は自治体に相談したものの「産後ケア事業は母子が対象」と利用を断られてしまったという。「社会の仕組みがいまだに母親と赤ちゃんを前提にしている重さを痛感しました」と渡邊さんは語る。キャリアと出産のミカタとは?今回は「産む選択」を軸に考えたが、いずれの道を選んでも課題はつきまとう。では、出産とキャリアをどう見ればいいのか。渡邊さんの答えはシンプルだ。「自分の心に問うことです」その理由をこう語る。「誰かに『この方がいい』と言われても、決めるのは自分自身。出産もキャリアも、他人の言葉に合わせて選んでも納得感は得られません。だからこそ“私はどうしたいか”を問い続けることが大事なんです。そのためにはまず、自分の身体を理解して、そもそもどんな選択肢があるのかを知っておいてほしい」▼ゲストJosan-she’s 代表取締役 渡邊愛子さん看護師・助産師資格取得後、都内大学病院に就職し、ハイリスク分娩管理に従事。自身の妊娠出産と、助産師としての経験を活かし、日本の産前産後ケアの革新に注力するために2021年10月にJosan-she'sを設立。助産師を中心とした女性専門職のシェアリングプラットフォームとして、複数の産後ケアサービスを展開中。家庭や医療従事者から幅広い支持を得て、新しい働き方と育児支援のモデルを提案する。現在小学生の子を持つ2児の母。ポッドキャスト番組『社会のミカタ』 ──ニュースより身近な、世の中の「なんで?」を考えよう日常の中で感じる「本当にそう?」「これってなんで?」というモヤモヤを入り口に、“社会の見方”をアップデートしていく番組です。ゲストとの対話を通じて、多様な価値観や新しい視点を知ることで、明日から世界が少しだけ違って見える。そんな、やさしい“ミカタ”が増えていく時間をお届けします。【音声版はこちら】Spotify、Appleポッドキャスト、アマゾン音楽、YouTube※番組で取り上げてほしい内容や感想はこちらからお寄せください「まず自分が悪いと思え」。ガーナのごみ問題も「自分ごと」にできる人は世界をどう見ている? | Business Insider Japan #出産とキャリアをめぐる不自由な自由にどう向き合う20代で計画的に考えた元助産師起業家と考える #Business #Insider #Japan

出産とキャリアをめぐる“不自由な自由”にどう向き合う?「20代で計画的に考えた」元助産師起業家と考える | Business Insider Japan

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2025-08-29 03:35:00

働く女性にとって、キャリアと妊娠出産などのライフイベントの両立は悩ましいテーマだ。
撮影:今村拓馬

「子どもを産む・産まないは自由のはず。でも、その自由は本当に守られているのか?」

2025年7月の参院選では、参政党の代表が「高齢女性は子どもを産めない」「将来の夢はお母さんという価値観を取り戻す必要がある」といった発言を行い、物議を醸した。少子化対策が急務であることは間違いないが、特定の価値観を押しつけるアプローチには多くの批判が集まった。

子どもを持ちたいかどうかも含めて、「キャリアと出産」について考えたことがある女性は多いはずだ。今回は、産前産後ケアのスタートアップ・ジョサンシーズを立ち上げた渡邊愛子さんと、このテーマについて掘り下げてみた。自身も2児の母である渡邊さんが語るのは、出産をめぐる選択のリアルと、そこから見える社会の課題だ。

この記事は、経済メディア『Business Insider Japan』とDEIメディア&コミュニティ『Mashing Up』によるポッドキャスト番組「社会のミカタ」vol.1、vo.2の内容をまとめたものです。

【音声版はこちら】SpotifyAppleポッドキャストアマゾン音楽YouTube

渡邊さん自身の「キャリアと出産」の選択

画像提供:Josan-she’s
画像提供:Josan-she’s

「私は(20代の)早い段階で計画的に結婚、出産をしました」

そう語る渡邊さん。当時パートナーがいたこと、そして看護師・助産師として妊娠・出産に関する専門知識を持っていたことも、判断を後押しした。

「キャリアだけを考えるのではなく、体の問題もある。医学的に35歳以上は高齢出産と言われます。体の変化や体質という現実もある中で選ばざるを得ないから、男性に比べて女性はキャリアの築き方やタイミングに迷う場面が多いのが現実です」

渡邊さんの場合は、生理不順気味だったこともあり、リスクを意識して「早めに動いた方がいい」と考えた。当時、助産師として夜勤をこなす不規則な生活の中でも、20代で出産を計画した背景にはそうした事情がある。

今は2児の母であり起業家。そこに至るまでにもキャリアと子育てにおける選択があったが、「後悔は一つもない。むしろ当時の選択が今につながっている」と振り返る。

自分の体を知ったうえでキャリアを考えること。それが本当に大事だと思っています」

産後、キャリアの壁も

画像提供:Josan-she’s
画像提供:Josan-she’s

とはいえ、助産師としてキャリアを続けるのは簡単ではなかった。

1人目の出産後は4カ月で復職したが、勤務していた大学病院は夜勤を含む不規則勤務。継続は難しく、夜勤のないクリニックに転職した。それでも、産後の体と乳児のいる中で生活リズムをつくることは想像以上にハードだった。

「産む前は“出産後もバリバリ働ける”と思っていたけれど、授乳で睡眠が細切れになり、出勤するだけで大きな負担でした。そこはあまり想像できていなかったですね」

さらに2人目の子どもは体調面から集団生活が難しく、一般の保育園に預けられなかった。結果として臨床現場を離れざるを得ず、「助産師は続けたい。でも今の働き方では無理」というジレンマに直面する。

実際、日本では助産師資格を持ちながら現場を離れている人が半数近くにのぼるという。また、日本では助産師は女性に限定されている資格であるにもかかわらず、働き方の柔軟性が乏しいのが現状だ。

「この仕組みはおかしい」と起業

撮影:今村拓馬
撮影:今村拓馬

「もどかしかったです。せっかく就きたい職で資格も取ったのに、幼い子どもを育てながら病院で勤務するのは難しい。助産師は専門性が高いのだから、違う形なら仕事を続けられるはずだと思いました」

加えて、自身の出産経験も「この社会の仕組みはおかしい」と思うきっかけになる。

「病院では、助産師として出産したお母さんたちに育児のノウハウをたくさん伝えてきたけれど、いざ自分が子どもをもってみたら“めちゃくちゃ大変じゃん”と。初めて我が子を抱く母親たちが試行錯誤している姿を思うと、もっと効率的で献身的なサポートがあるべきだと感じました」

そうした実感から立ち上げたのが、産前産後ケアを軸にしたスタートアップ・ジョサンシーズだ。基本的に病院勤務しか選択肢がない助産師の働き方に、一時的な訪問支援やオンライン相談といった新しいスタイルを広げようとしている。

出産とキャリアのはざまを支える

ジョサンシーズでは、オンラインでの相談から低月齢期に対応したベビーシッター、産後ケア施設の運営まで、必要なときに専門職のサポートを受けられる仕組みを整えてきた。

多くの家族と関わる中で、女性の「出産とキャリアの両立」に関する悩みにも近くで触れてきたという。結婚や妊娠をきっかけに仕事をどう続けるか迷う人、育休からの復帰タイミングに不安を抱える人、そして「子どもと一緒に過ごしたいけれど、(仕事を辞めて)社会から取り残されるのが怖い」と揺れる声も少なくない。

渡邊さんは、そうした声に耳を傾けながら「正解は一つではない」と強調する。

「何が良いとか悪いではなく、みんなそれぞれの立場でベストを尽くそうと考えている。悩みは尽きないし、制度や社会の圧があるからこそ難しい問題なんだと思います」

だからこそ渡邊さんは「自分で選ぶ」ことの重要性を伝えるようにしているという。

母子中心の体制にも疑問

画像提供:Josan-she’s
画像提供:Josan-she’s

渡邊さんは、産後ケアの現場から父親の課題にも目を向ける。

「女性だけでなく男性たちも、家庭や子育て、そして自分のキャリアを含めて非常に苦しんでいるのではないかと思います」

日本は妊婦健診や安全な出産のための医療体制は整っているものの、出産後になると支援の枠組みは急に心もとなくなる。出産前の対象は「母親と赤ちゃん」に限られることも多く、父親が学ぶ機会や関わるきっかけが圧倒的に少ないのが現状だ。

こうした中で、父親は赤ちゃんが生まれた瞬間から生活が一変する。そのギャップこそが、渡邊さんが課題視するポイントだ。そこで、ジョサンシーズでは助産師が父親に赤ちゃんのケアの仕方や関わり方をレクチャーするサービスも始めている。産後の妻から教わることが多い沐浴やおむつ替えといった基本的なケアを専門家から学ぶことで、自信を持って育児に関われるようにするのが狙いだ。

実際、妻が産後に再入院し、新生児と2人きりになった父親から支援要請があったケースもある。最初は自治体に相談したものの「産後ケア事業は母子が対象」と利用を断られてしまったという。

「社会の仕組みがいまだに母親と赤ちゃんを前提にしている重さを痛感しました」

と渡邊さんは語る。

キャリアと出産のミカタとは?

今回は「産む選択」を軸に考えたが、いずれの道を選んでも課題はつきまとう。では、出産とキャリアをどう見ればいいのか。渡邊さんの答えはシンプルだ。

「自分の心に問うことです」

その理由をこう語る。

「誰かに『この方がいい』と言われても、決めるのは自分自身。出産もキャリアも、他人の言葉に合わせて選んでも納得感は得られません。だからこそ“私はどうしたいか”を問い続けることが大事なんです。そのためにはまず、自分の身体を理解して、そもそもどんな選択肢があるのかを知っておいてほしい

▼ゲスト

Josan-she’s 代表取締役 渡邊愛子さん

Josan-she’s 代表取締役 渡邊愛子さん

看護師・助産師資格取得後、都内大学病院に就職し、ハイリスク分娩管理に従事。自身の妊娠出産と、助産師としての経験を活かし、日本の産前産後ケアの革新に注力するために2021年10月にJosan-she’sを設立。助産師を中心とした女性専門職のシェアリングプラットフォームとして、複数の産後ケアサービスを展開中。家庭や医療従事者から幅広い支持を得て、新しい働き方と育児支援のモデルを提案する。現在小学生の子を持つ2児の母。

ポッドキャスト番組『社会のミカタ』 ──ニュースより身近な、世の中の「なんで?」を考えよう

日常の中で感じる「本当にそう?」「これってなんで?」というモヤモヤを入り口に、“社会の見方”をアップデートしていく番組です。ゲストとの対話を通じて、多様な価値観や新しい視点を知ることで、明日から世界が少しだけ違って見える。そんな、やさしい“ミカタ”が増えていく時間をお届けします。

【音声版はこちら】SpotifyAppleポッドキャストアマゾン音楽YouTube

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執筆者について: nipponese

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