1750763205
2025-06-24 10:00:00
連載
ドイツの「これでいい」暮らし
「ドイツの食事」と聞いてまず何を思い浮かべるだろうか?ドイツに住み始める前に私がイメージしていたのは「ビールとソーセージ」だった。そして、私たちが毎日寿司を食べないように、ドイツの人々もさすがに毎日ソーセージを食べているわけではないだろうと思っていた。ところが実際にドイツに7年ほど住んでみてわかったのは、「ドイツの人々はかなりの高頻度で、なんなら毎日ソーセージを食べている」ということだった。最初はこれには非常に驚いたが、納得できる理由もとても多かった。ドイツでどのようにソーセージが親しまれているか、その一部を紹介したい。
ソーセージは1500種類以上ある
私たちがソーセージと聞いてイメージするものといえば、茹でたり焼いたりして食べる、お弁当などにもよく入っているあのソーセージくらいのものだろう。ところが実はドイツではそうではない。ソーセージはドイツ語でヴルストと呼ばれているが、一口にヴルストといっても多種多様で、そもそも加工肉全般を指す語でもある。肉のパテやサラミ、生ハムや加熱されたハムも含んでヴルスト(ソーセージ)とくくっているため、一説によるとその種類はドイツ国内だけで1500以上にのぼるという。「ドイツの人は毎日のようにソーセージを口にする」というのは、決して嘘ではないのだ。

スーパーの冷蔵コーナーにはヴルストのコーナーが広く取られ、量り売りのコーナーも充実している。それぞれの地域特有のヴルストというものも多くあり、私の暮らすニーダーザクセン州には穀物とひき肉を一緒に腸詰にしたソーセージがあったり、ミュンヘンなど南ドイツには、鮮度を重視するあまり「午前中しか口にしてはいけない」といわれている白ソーセージなどもあり、そういった現地の味を楽しみにドイツ国内を旅行する人も少なくない。
世にもおいしい「生肉のソーセージ」

ドイツのソーセージ文化のなかでもとりわけ異色に感じるのが、Mettwurst(メッドヴルスト)だ。
これは生の豚もしくは牛肉を使って作られるソーセージで、生のまま食べるのが最大の特徴だ。生の豚肉と聞くと不安を覚えてしまうところだが、亜硝酸塩を使った加工や燻製などの処理によって食べることが可能になっているのだとか。実際、一般的なスーパーや駅のパン屋などでも売られているのを見かける。日本の食材で味を例えると「ネギトロに似ている」と説明される場合も多い。

このメットヴルストの中でも地域ごとに味や食べ方もさまざまだが、私の住む地域では、生のままパンに塗り、生玉ねぎやチャイブ(ヨーロッパでよく見られるハーブ)などを合わせて食べることが多い。私が購入したメットヴルストは玉ねぎ入りで、ペースト状なのでそのままパンに塗って食べることができ、手軽に食べられるという点でも気に入っている。電車での長距離移動の際、友人が車内に持参したナイフとパン、玉ねぎ入りのメットヴルストで即席サンドイッチを用意しているのも見たことがある。ドイツ国内で広く親しまれている味覚の一つだ。

もちろん生の豚肉なので、本来は食中毒リスクが高い食品のはずだ。ドイツ国内では食品衛生規則によって厳格に施設や加工方法が定められており「製造当日しか販売してはいけない」「肉は2℃以上の温度になってはいけない」などのルールで非常に厳しく管理されており、そのおかげで安全な状態で提供することができているのだとか。
ドイツ人がソーセージを好きすぎる理由

実際、大学の教授や友人など、誰の家に行っても必ず冷蔵庫にはソーセージやサラミ、ハムがあり、気軽に食べられるものとしてとても身近に存在している。ドイツの人々の暮らしの中で、これほどまでにソーセージが身近な存在となっているのは、なぜなのだろうか。
一つには、冬の寒さが厳しく土地も痩せた地域で健康を損なわずに暮らしていくために、保存の効くタンパク源が重要だったという歴史的な経緯が挙げられるだろう。そして前にの記事でも紹介したように、ドイツの人々は、冷たくて簡易な食事(カルテスエッセン)を好んでいるという事情もありそうだ。夕食時などでもチーズや簡単なサラダ、そして切ったソーセージとパンだけなどの簡単なもので済ませて、夜の自由な時間をゆったり過ごすという食文化が、今でも広く一般的なものとなっている。こうした制約の中で、それでも豊かな味わいを探求した結果、1500種類以上のバリエーションが生まれ、メットヴルストのような珍しくおいしいソーセージも生まれてきたのだろう。
ソーセージとは、この国に暮らす人々にとって単なる名物ではなく、気候や文化と密接に結びついた、この土地の食生活になくてはならない存在なのだ。
#豚の生肉ソーセージは絶品ドイツ人がソーセージを毎日のように食べている理由 #Business #Insider #Japan