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2025-05-31 09:30:00
「異彩を、放て。」をミッションに、福祉を起点に新たな文化の創出を目指すヘラルボニー。国内外の主に知的障害のある作家とライセンス契約を結び、アートをプロダクト化し社会に届けることで「障害」のイメージ変容に挑んでいる。
そんなヘラルボニーが提供する「DIVERSESSION PROGRAM(ダイバーセッション・プログラム)」は、組織のDE&Iを促進する企業向け体験型プログラムだ。
上智大学やヤマハ発動機でも導入され、“障害に対するイメージを根底から覆されるような衝撃を受けた”という感想があるなど、性別、年齢、国籍、障害の有無、価値観などが異なる多様な人々の存在を知り、尊重し、違いを掛け合わせることで大きな力が生まれることを体験する場として開発された。
ダイバーセッションとはDIVERSITY(多様性)とSESSION(ジャズのセッション)を組み合わせた造語。その本質に迫るべく、ダイバーセッション・プログラムの一部を体験。当日の様子をレポートする。
「車いす」「見えにくい」「聞こえない」マイノリティを体験
本プログラムは、「SESSION1 知る:講演会+ワークショップ」「SESSION2 感じる:ボードゲーム型ワークショップ」「SESSION3 表わす:福祉施設訪問+ART創作ワークショップ」の3セッション構成。今回はSESSION2の「ボードゲーム型ワークショップ」を体験した。
席に着くと、何やら怪しげな箱が置かれている。
その箱の名前は『異言語箱』。「制限時間は60分間です。謎を解いて、爆弾を解除してください」というヘラルボニー ウェルフェア事業部の菊永ふみさんの言葉に、会場からはどよめきが。

続いて配られたのは「役割カード」。チームメンバー一人ひとりが、カードに書かれた役割に応じてアイテムを身につけることに。
今回配られたカードは「あなた自身」「車いすの使い手」「見えにくい役」「聞こえない役」「10の言葉しか話さない役」の5種類だ。
「あなた自身」はいつも通りの自分自身として参加。「車いすの使い手」は椅子を使わず、座布団に座る。「見えにくい役」は視野が狭くなるメガネをかけ、「聞こえない役」は耳栓とヘッドフォンを着用。「話さない役」は「はい」「いいえ」「ありがとう」「わかった」「たのしい」「かなしい」「いいね」など10の言葉しか話さないルールだ。

各役割に与えられた条件を身に着けた状態で、チームメンバー同士が互いの状況を知るための共有タイムが与えられた。
「目線が低くて会話しづらいかも」「黄砂が飛んでいるみたいに視界がかすむ」「皆の声も自分の声も聞こえない」などそれぞれがどんな状況にあるのかを話し、「どのくらい離したら文字が読める?」「ジェスチャーを交えて話すのはどう?」とゲーム中のコミュニケーションの取り方を相談していった。
それぞれの役割を経験して分かった「本音」
ゲームではスマホで読み取った映像を手掛かりに、異言語箱の中にあるカードを使って謎を解いていくが、問題が進むにつれてだんだんと難しくなり、考え込んでしまうことも……。あっという間に前半30分が終了した。

ゲーム後半へ進むにあたり、「役割カードを引き直してください」と菊永さんから指示が届く。筆者は前半で「あなた自身」役だったが、後半では「車いすの使い手」役を引いた。
目線が低くなり感じたのは、目に入る景色が想像以上に“違う”ことだ。まずテーブルと床に座った状態での目の高さがほぼ同じなので、テーブルに置かれた紙やカードが見えづらい。メンバーとのアイコンタクトもとりづらいし、相手の顔を見上げて話すので首が疲れやすいと感じた。

チームメンバー内からは「○○は見えるけれど△△は見えづらい」「Aの音は聞こえてBの音は聞こえない」「好きに話せないのがもどかしい」など、前半を踏まえた本音が飛び出す。
話し合いの末、ゲーム後半は「やってほしいことは遠慮せずに頼む」「できない・分からないことは言う」「使えるものは使う」という新たなルールを立てて挑むことにした。

ゲーム後半はさらにミッションが続き、制限時間の60分が終了。残念ながら今回参加した全チームはミッションを最後までクリアすることはできなかったが、「もう終わり⁉」「あと少しなのに!」と悔しがる声が聞こえた。
「無意識の特権」は日常のあらゆる場所に存在する

振り返りタイムでは、個人とチームごとに振り返りシートを記入。筆者のチームではメンバー全員で意見交換を行い、さまざまな感想が出た。
・チームワークは良かったと思う。ただ自分が役に立てないことが多くて自己評価は低め
・紙とペンを導入したら、話せない自分にできることが増えて、道が開けた感じがした
・今どんな状況か分からない時、チームのペースを崩すのが申し訳なくて質問ができなかった
・環境設計をもっと早くすべきだった。進行状況を全員に対して見える化する工夫が必要
・全員の力をフルに使いきれたら、きっと時間内にクリアできたと思う
こうした声から感じたのは、多様なメンバーが参加するプロジェクトやミーティング、教育、研修などの場においても、同じようなことを感じたり、モヤモヤしたりしている人が少なからずいるのではないかということだ。

プログラムの最後に菊永さんは、「性別、性的指向、学歴、社会的階級、居住地、障害、言語など、社会にはさまざまなマジョリティとマイノリティがあります」と語り、「マジョリティ側の属性を持っていることで労なくして得られる優位性(無意識の特権)は自動ドアのようなもの。マイノリティ側の人間はそのドアを一つひとつ手でこじ開けている」という上智大学の出口真紀子教授の言葉を紹介した。
「ゲームの中で見えない役や聞こえない役になり、本当は助けてほしくても『言いづらい』『言えない』と感じた方もいると思います。
それはマジョリティ側の無意識の特権による抑圧かもしれません。お互いの違いを理解し、尊重するには『対話』が必要です。今日感じたことをぜひ皆さんの職場に落とし込み、職場ではどんなことが起こり得るか、ハード面とソフト面でどんなことを解決できるのかを考えてみてください」(菊永さん)
家族、友人、職場、地域社会など、あらゆるコミュニティの中にある「違い」に目を向け、想像力を働かせ、そしてアクションにつなげることの大切さを実感する時間となった。
(執筆:星野愛、編集:中島日和(Mashing Up))
#ヘラルボニーが手掛ける新感覚の謎解きゲームヤマハ上智大学でも導入マイノリティの疑似体験から見えたこと #Business #Insider #Japan