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2025-05-18 08:30:00
- 人生の厄介ごとのひとつが相続だ。それを円滑に行うために、参考にしたいのが『「実家の相続」がまとまらない!』である。
- 本書では和菓子屋を営む72歳の男性が死亡後、その相続の対象となった3人の兄妹が土地を巡って対立する小説をベースに、相続について解説している。
- 本書から学べるエッセンスは、死ぬ前に相続について決めておくこと、相続税分の資金は持っておきたい、などだ。
人生の厄介ごとのひとつが相続だ。
普段、仲の良い家族でも、背に腹は代えられない。まとまったお金が入るとなれば、自分の利益を追求するのが人間の性(さが)である。不動産価格も上昇し、国民の預金額も増えている昨今、相続で受け取れる額は増えている。
そんな相続を円滑にするために、参考にしたいのが『「実家の相続」がまとまらない!』(青春出版社)である。税理士法人レガシィの会長である天野隆氏と、作家の伊藤かよこ氏が執筆し、2月25日に刊行された書籍だ。
レガシィは相続専門は、富裕層向けのコンサルティングも行う税理士法人。天野氏は税理士、公認会計士、宅地建物取引士などの資格を有し、相続にまつわる本をいくつか執筆している。2015年に刊行し、昨年に最新版を出した『やってはいけない「実家」の相続』(青春出版社)は同氏のベストセラーだ。
本書では和菓子屋を営む72歳の男性が死亡後、その相続の対象となった3人の兄妹が土地を巡って対立する小説をベースに、相続について解説している。相続人は、上場企業に勤める長男の初郎、長女のみどり、父の和菓子屋の職人で末っ子の優二の3人だ。
小説は各3人の視点で描かれる。最終的には平和な形でまとまるのだが、紆余曲折にはややハラハラしてしまう。高齢である程度の資産を有している人、または、親が高齢で相続が心配な人は、本書に目を通しておくと良いだろう。
本書から学べる4つのエッセンスを抽出した。
1. 死ぬ前に相続について決めておくこと
本書の小説は、和菓子屋の経営者(3兄妹の父親)が急死するところから始まる。
和菓子屋がある約9200万円の土地と100万円の建物、300万円の預金を合わせて、総額約9600万円の課税対象財産が残った。そこで、3人のうち誰かが和菓子屋の事業を継ぐのか、初郎と優二が継いで、みどりは代償分割で現金を受け取るのか、または土地を売却して3等分するのかで争いが起きてしまう。そもそも被相続人は遺言書を作成していなかったのだ。
現金や投資信託など、流動性の大きい財産であれば、簡単に等分できる。しかし、土地や建物といった資産は簡単に分けることはできない。まとまったお金が手に入る、滅多にないこの機会に、兄妹たちは争うことになる。
遺言書を用意していれば、争いにならなかったはずだ。この記事を読んでいる方には投資家も多いことだろう。自らの死後に家族が”争族”にならないよう、遺言書を作成し、準備しておきたい。
2. 相続税分の資金は持っておきたい
巷でよく言われるのは、「相続したら国に半分持っていかれる」という言説だ。
相続税率が最大55%であることに由来するが、税率が50%を超えるのは、「法定相続分に応ずる取得金額」が3億円を超えてからである。課税対象額から法定相続人に応じた基礎控除を引き、それを相続人の数で割ってから、税率が判明する。簡単に言えば相続分が少ないほど、税率も低くなる仕組みだ。
本書のシミュレーションでは、基礎控除額が「3000万円+600万円×(法定相続人の数=3)」であり、課税対象額は9600万円から4800万円を引いた約4800万円だ。つまり兄弟1人当たりの「法定相続分に応ずる取得金額」が約1600万円となる。
税率は15%で、50万円の控除もあるため、1人あたりの相続税は約190万円。各相続人が得られる約3200万円に対して、6%ほどにしかならない。とはいえ大きい金額である。すぐに用意できる金額ではない。
つまり、親がある程度の資産を持っているのであれば、相続税がいくらになるのか予め計算し、相続税を支払える分の預金を準備しておく方が良さそうだ。現金などの流動性の高い資産であれば、すぐに支払うことができるが、本書のように土地が主体の場合は、現金が別途必要になる。
3. 1人が土地を継ぐなら、残りの相続人に対価を支払う
相続した資産を3等分する場合を考えてみよう。
仮に9300万円の土地を3兄妹の1人が継ぐ場合、その人物は残りの2人に「代償分割」という形で、代償金を支払わなければならない。つまり現金を6200万円用意する必要がある。土地を3人のうち2人が共同で継ぐ場合、その2人は土地を継がないもう1人に対して3100万円の代償金を支払う必要があるのだ。
もっとも、相続した不動産を処分する例が多いのは、代償金を持っていない人が多数派のためである。流動性の低い資産が大半である家庭は、この点に注意しておきたい。
4. 売却にも税金がかかる
土地の所有者を決定できない場合や、相続税が支払えない場合、または代償金を用意できない場合は、売却して現金を捻出することになるだろう。
本書の兄妹も1度、土地の売却を検討する。しかしここにも落とし穴がある。土地を譲渡した場合、その利益に対し、20.315%の税(所得税+住民税+復興特別所得税)がかかってしまうのだ。相続税を支払うための売却にも税がかかる。いらだちを覚えそうな制度だが、国の方針であり、仕方がない。
本書のシミュレーションにおいて、土地の売却額は約1億1500万円と試算された。ここから取得費や仲介手数料などを差し引くと譲渡益は約1億円。つまり、相続人1人当たりの譲渡所得は約3300万円 強となる。
しかし、売却したからと言って、3300万円がすべて手に入るわけではない。土地を売却して現金化する場合、相続税とは別に、1人あたり680万円の譲渡所得税を支払わなければならないのだ。3300万円から譲渡所得税、そして相続税などを支払うと、手元に残るのは2900万円弱となる。
動産や不動産、さまざまな資産を有している場合は、こうした事情を認識しておく必要がある。子供に余計な税を支払わせないよう、現金の相続人はA、不動産の相続人はBという分け方も有りだそうだ。
まとめ
以上、本書から学べるエッセンスを抽出した。せっかくの家族が相続を機に仲違いするのは残念なことだ。相続時の財産配分について、投資家や資産保有者は予め決めておく必要がある。現役世代でも、いつ亡くなってしまうかは分からない。ある程度の資産があれば、なおさらだ。
本書で株や債券、投資信託などは現れないが、根本の考え方は同じである。NISAで儲かった人、長年の投資で資産を構築した人は参考にしておきたい。
なお結末の詳細は書かないが、小説で登場する3人は最終的に平和的な手法で解決することになる。資産だけでなく「生き方」を問う内容にもなっており、仕事との向かい方にも参考になりそうだ。
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