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2025-04-25 12:00:00
連載
一生に一度は見たい東京美術案内
三鷹の森ジブリ美術館を見て回る時、決められた順路はない。「迷子になろうよ、いっしょに。」がテーマの美術館だから、どこをうろついてもいいし、二度、同じ展示室を見てもいい。
本来、ミュージアムはそうあるべきなのだが、美術館、博物館は館の運営上、人がうろうろすると管理に困るので、順路を設けている。ジブリ美術館のいいところは順路がないこと、そして、丁寧すぎる解説の付いたキャプションがないことだ。こうした美術館は稀有だ。見に行く人たちの自由を尊重している。
さて、決まった順路がないため、「迷った場合はここで待ち合わせ」を決めておいた方がいい。待ち合わせにいいのが地下一階の中央ホール、もしくは隣接している短編映画館「土星座」の前だ。この二つの場所がもっとも分かりやすい。また、館内の他の場所から見通すことができる。入館したら、迷子になった場合の待ち合わせだけ場所は決めておくことだ。
中央ホールの案内にはこうある。
「天井のガラスのドームには、海を泳ぐ黄色いクジラや、妹たちと泳ぐポニョが描かれ、大きな天井扇が回っています。階段や廊下の手すりには、取れそうで取れないガラス玉が陽の光を浴びて輝いています。
地下1階から全体を見渡すと、螺旋階段や空中廊下、張り出したテラスなどが、まるで迷路のような空間を作り出しています。宮崎﨑駿監督の映画に出てくる建物のような不思議な構造。映画の雰囲気を、あちこちで感じることができるのです」
迷子になっても中央ホールにいれば天井画や館内の雰囲気を楽しむことができる。
世界のジブリファンの「約束の場所」

現在、ジブリ美術館に来る人の8割近くは海外からの人たちだ。アジアだけでなく、ヨーロッパ、アメリカ、南米、アフリカからもアニメファンがやってくる。その人たちにとっては地下1階にある映像展示室「土星座」はプロミスドランド(約束の場所)ではないか。みんな、そこを目指してやってくる。

「土星座」は80人ほどが入れる小さな映画館だ。入場者が見ることのできるのは一回だけ。なかに入ると、世界各国から来た人たちがお行儀よく座っている。

土星座のためのオリジナル作品が10本程度あって、期間ごとに作品を変えて上映している。どうしても見たい作品があるのなら、その作品がかかっている期間に予約して入場するしかない。
作品の長さは10分程度と短いのだけれど、ついついのめり込んでみてしまう。短編アニメの見どころは絵だと思う。ストーリー展開ではなく、絵の力がそこに現れている

『たからさがし』という単純なストーリー展開の短編アニメでは少年とウサギが原っぱで競争する。競争しながら宝探しをするのだが、原っぱの絵が素晴らしい。草花、原っぱの起伏が精緻に描かれている。草にせよ、花にせよ、いずれも背景だ。だが、風に揺れる花を表現するために制作者は何千枚もの絵を描いている。アニメ制作者の奮闘が頭に浮かぶ。
短編の最後にはスタッフロールが流れる。わずか9分のアニメだけれど、表記されたアニメ作家の数は数十名になる。「アニメは大勢の人たちが作っているんだな」と分かる。まったく頭が下がるのである。
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