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2025-04-24 08:30:00
- 「タリフマン」トランプ大統領により120年超ぶりの高水準となる米国関税は、日本経済に迫る脅威となっている。
- 特に海外比率が大きい大企業、製造業セクターへの打撃が大きく、日本株にはより大きな暗雲が立ち込めそうだ。
- サプライチェーンの見直しを迫られる日本企業の苦悩と投資家の懸念が交錯するなか、市場の先行き不透明感が漂う。
世界はトランプ関税で揺れている。今年1月に米国大統領に再就任したトランプ氏は、自身を「タリフマン(関税男)」と呼ぶように、就任直後から次々と関税を引き上げている。
関税は外国製品に課される税金で、国・地域別、品目別に税率が設定される。これは主に自国の重要産業(発展途上の産業や安全保障上重要な産業など)を保護する目的で設定され、日本でも農産品などの一部に課されている。
すでに多くの読者がニュースなどで目にしているとおり、トランプ大統領は中国に対して累計145%という関税の大幅引き上げを発表(4月中旬時点)し、メキシコやカナダに対しても先行して関税を引き上げている。こうした措置の結果、米国の平均関税率(各地域に課している関税の平均)は大幅に上昇する公算だ。
平均関税率は120年ぶりの水準に
エール大学の試算によれば、トランプ大統領就任後から4月9日までの措置を踏まえると、米国の平均関税率は20%強(前年は約2.42%)まで一気に上昇する公算となり、これはなんと1903年以来、実に120年超ぶりの水準である。トランプ大統領は本気で関税を使って米国経済を立て直そうとしている。
日本が米国に対して課している関税は低率であり、2020年からは日米貿易協定に基づき、一部品目の関税引き下げが行われているため、トランプ2.0が始まる前、日本に対しては他地域と比べれば高率の関税は課されないとの期待が一部にあった。
しかし、その期待は裏切られ、4月には日本も例外なく相互関税の対象となり、関税率が引き上げられるに至った。むしろ対米貿易黒字額が大きいことなどから、日本の相互関税率は最も低い地域(10%)よりも高い24%と発表された。なお10%からの上乗せ分については90日間の猶予期間が設けられ、今後の交渉次第では減免される公算もある。
TOPIXがより危険な2つの理由
トランプ関税の日本経済への影響をどのように捉えるべきだろうか。多くの読者は「GDPに対して〇〇%のマイナス影響」といった記事をすでに目にしているはずだ。日本経済を分析する上でGDPは最も重要な指標であり、GDPへの影響を検討することは不可欠ではある。
ただ、筆者は今回、あえて異なる視点を提供してみたい。具体的には、トランプ関税の影響は、GDPよりも日本株インデックス(TOPIXなど)により大きなマイナスの影響を及ぼす可能性があるという点である。
この理由として特に以下2点が重要なポイントとして浮かび上がる。
- GDPとは異なり、株価に影響する企業の連結売上高・収益は海外現地子会社も含まれること
- 株価に影響が大きい大企業では製造業の割合が大きく、輸出や海外現地売上高などの海外依存度が高いこと
GDPとTOPIXの大きな違い
順を追って説明していこう。第一のポイントとして、GDPとTOPIXの大きな違いは、細かい定義の違いを捨象すれば、前者は日本国内で行われる経済活動(日本企業だけでなく外国企業も含む)を対象としており、TOPIXは日本企業の事業活動が対象で海外現地法人の活動を含むという点だ。
大雑把ではあるが、単体決算か連結決算か、の違いと言えば、イメージしやすい読者の方もいるのではないか。GDPの正式名称はGross Domestic Productであり、真ん中のDomestic、国内という言葉に注目してほしい。統計上のDomesticとは、日本国民ではなく日本国内を指している。つまり、GDPに含まれる経済活動とは日本国内の範囲であり、企業で言えば海外現地子会社の事業活動による売上や収益などはGDPに含まれない。厳密には当然同一ではないが、GDPは単体決算に近いイメージと捉えることは可能だろう。
一方で、TOPIXなどの日本株インデックスに反映されるのは連結決算でみた日本企業の事業活動だ。例えば、日本の自動車メーカーの場合で言えば、日本国内での売上に加えて、米国現地法人による売上、収益なども含まれる概念だ。
この点を踏まえれば、今回のトランプ2.0における関税政策はGDP以上に日本株を下押しする圧力になる可能性が高いことが直感的にお分かりいただけるだろう。なぜなら、今回の関税政策は中国など特定地域を対象に絞らず、全世界を対象としているため、対米輸出を行う際に抜け道が少ない。
日本の大企業は米国依存度が高い
中国に対してのみ関税が課されるのであれば、例えばメキシコやベトナムの現地法人からの輸出にシフトするようにサプライチェーンを組み替えることで相応に対応できる面がある。しかし、全世界対象となれば、日本企業の米国現地法人による輸入、および米国以外の現地法人からの米国向け輸出に対して、すべて何らかの関税が課されることになる(もちろん今後例外措置などが取られる可能性はある点には留意されたい)。
両者の違いを踏まえ、統計で海外依存度を確認してみよう。まずGDPに占める輸出の割合は約14%程度で、そのうち米国向けは25%程度、つまりGDP全体の4%だ。
一方、株価を形成するのは海外事業活動をしている上場企業中心で、主に大企業と想定して複数の統計データから構成を探る(一部筆者試算)と、大企業の連結売上高に占める輸出額(国内法人)は9%程度、海外法人の売上高は約45%と、海外依存度の大きさがわかる。なお、米国向け売上高(米国現地法人売上+米国向け輸出)の割合は全体の17%を占める。
図表1:GDPとTOPIXの業種別ウェイト
|
輸出の割合 |
海外現地売上高の割合 |
うち米国向けの割合 |
|
|---|---|---|---|
|
GDP |
14% |
– |
4% |
|
大企業売上高 (連結ベース) |
9% (国内売上高に占める割合は17%) |
45% |
17% |
※ 大企業の構成比は一部筆者試算
出所:内閣府、経済産業省、日本銀行、財務省
要するに、GDPで見た日本経済のなかでは輸出よりも内需の割合が大きい一方、日本株を形成する大企業については海外依存度ないし米国市場への依存度がより大きい。トランプ関税は日本株に対する負荷がより大きくなりそうにみえる。
TOPIXは海外進出する製造業中心
視点を変えると、大企業の海外依存度が高い理由は、製造業の割合が大きい点も挙げられる。製造業が生産するモノは、サービスと比べれば海外への輸出や現地生産が物理的にも容易であるため、一般的に製造業の方が海外依存度は大きい。
大企業における製造業の割合が大きいということは、つまり株価も製造業の影響を受けやすいということだ。実際、TOPIX時価総額に占める業種別割合を見ても、製造業は全体の50%強を占める。他方で、GDPでは製造業の割合は20%程度に留まる。
図表2:GDPとTOPIXの業種別ウェイト

※ TOPIXは時価総額の割合。業種分類は筆者による区分
出所:内閣府、Macrobond、Bloomberg
GDPとTOPIXを海外依存度や業種別割合などから比較すれば、トランプ関税はGDP(すなわち日本経済)よりも、TOPIX(すなわち日本株)への悪影響が大きいことがおわかりいただけるのではないか。
今後の展開を注視する必要があるが、特に日本株に関心のある読者については、グローバルなサプライチェーンを持つ製造業の動向にはより注意すべきだろう。また、企業側は関税リスクへの対応として、サプライチェーンの見直しや国内も含めた代替的な生産拠点の検討を早急に進めていると推察される。サプライチェーンの見直しを迫られる日本企業の苦悩と投資家の懸念が交錯するなか、世界経済・金融市場には先行き不透明感が漂っている。
※本記事は取材対象者の知識と経験に基づいて投資の選定ポイントをまとめたものですが、事例として取り上げたいかなる金融商品の売買をも勧めるものではありません。本記事に記載した情報や意見によって読者に発生した損害や損失については、筆者、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。
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