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2024-12-09 10:00:00
キム・ジェファン/SOPA Images/Sipa USA、ロイターコネクト経由
- 韓国ではソウル市が3億2200万ドル(約482億円)を投じて孤独のまん延に取り組もうとしている。
- 孤独な人は年中無休のカウンセリング・ホットラインに電話をかけたり、地元のイベントに参加すると特典がもらえるという。
- 方向性は正しいが、問題の根っこを解決するものではないと専門家は話している。
孤独のまん延は、ソウルを内側から蝕んでいる。
街はきらびやかだが、地元の人々が韓国を「ヘル朝鮮」と呼ぶのには理由がある。彼らは莫大な借金と、プレッシャーのかかる学業や仕事と闘っている。孤独や孤立はこうした問題から生じ、状況を悪化させている。それは大都市ソウルの街並みにさまざまな形で現れる”災い”であり、行政が熱心に取り組んでいる”喫緊の課題”でもある。
韓国保健社会研究院(KIHASA)の2021年の調査によると、19~39歳の約3.1%、およそ34万人が「孤独」もしくは「引きこもり」と考えられている。
その行き着く先は「コドクサ(孤独死)」で、社会的に孤立した生活を送った後、自殺や病気で亡くなるという。
韓国保健福祉部のデータによると、韓国の孤独死は2021年の3378人から2023年には3661人に増加した。
ソウル市は、孤独の解消施策に3億2200万ドル以上を投じる計画だ。ただ、この取り組みは問題の根本原因に対処できておらず、政府が期待しているような効果は得られないかもしれないと専門家はBusiness Insiderに語った。
「孤独のないソウル」
『孤独のないソウル』というタイトルが付けられたこの5年間のイニシアチブは、多方面からのアプローチでこの問題に取り組もうとしている。
ソウル市は10月、孤独を感じている人は年中無休のカウンセリング・ホットラインを利用できると発表した。公共の場で一緒に食事をしたり、スポーツ活動や地域のイベントに参加することで特典をもらったり、ポイントを集めることもできる。
「誰も孤立しない、幸せな都市づくりのためにリソースを結集して、『孤独のないソウル』イニシアチブを実施し、予防から癒し、社会復帰、孤立の再発防止まで徹底的に取り組む」とソウルの呉世勲(オ・セフン)市長はコメントしている。
ソウル市の担当者はBusiness Insiderの取材に対し、この取り組みでは全ての部署が協力して「特定の分野、特定のライフステージに合わせた体系的なサポート体制を確立する」と語った。
「『孤独のないソウル』は市にとって大きな挑戦であり、簡単な道のりではない」と担当者は続けた。
「多くの試行錯誤が見込まれ、全ての問題を一度に解決できるわけではないが、ソウル市は継続的な努力とさまざまな革新的試みが最終的に目標の達成につながると確信している」
「ソウルは全ての市民が幸せに暮らせる都市をつくるために、これからも全力を尽くしていく」
韓国の女性家族部は2023年、社会的に孤立した若者に月500ドルほど支給し、社会との交流を促すとしていた。
「解決」よりも「予防」
Business Insiderが取材した心理学者や社会学者は、今回のイニシアチブは正しい方向に向かってはいるものの、”特効薬”ではないと話している。
「自分が孤立していると感じている人、孤独から抜け出したいと思っている人には役立つかもしれない。しかし、外部の助けを望まない人にとっては、これらの政策はおそらく意味がない」とシンガポール国立大学の社会学教授Joonmo Son氏はBusiness Insiderに語った。
「もうひとつ考えなければならないのは、政策そのものが孤独を防ぐわけではないということだ。むしろ、孤立した人々の孤独死を防ぐためのものだ」
台湾の国立清華大学の心理学教授Eva Chen氏は、韓国は早い時期から始まる激しい競争文化に取り組むべきだとBusiness Insiderに語った。
韓国統計庁のデータによると、2023年には80%近くの子どもたちが「ハグォン(学習塾)」のような民間教育プログラムに参加している。子を持つ家庭が民俗教育 —— 放課後の「ハグォン」から家庭教師まで、学業に関するあらゆる補助的な訓練 —— につぎ込んだ金額も194億ドルにのぼった。
「信じられないほど激しい競争社会で、子どもが学校に通い始めるとこうした問題が顕在化し始める。そして、韓国の学生の自殺率は、近隣諸国に比べてかなり高いことに気付くだろう」とChen氏は話している。
2023年、韓国では自殺率(10万人あたりの自殺者数)が27.3と、アメリカやイギリス、日本といったOECD加盟国の中でも最も高かった。
このような競争の激しい環境に身を置いていると、人はより引きこもりがちになり、孤立してしまうとChen氏は言う。
「役に立とうという意欲を削ぐようなものだ。幼い子どもには相手に共感したり、給料や学歴といった表面的な要素よりも道徳的な善意を重んじるという自然な傾向がある」
高麗大学校の心理学教授Kee Hong Choi氏は、韓国の教育制度は競争の激しさを和らげるために「劇的に変える」必要があると指摘する。
「人々が個人主義になっている。社会的な圧力や判断から精神的に硬直しているからだ」
「多くの人々が教育制度におけるこうした類の社会的比較によってトラウマを抱え、抑うつ症状や社会不安症状を発症している」
一か八か
韓国の”孤独のまん延”との闘いは社会的な意味だけでなく、経済的な意味を持つ。
高麗大学校の心理学教授Sohyun Kim氏は「孤独の問題は(この国が直面している)最も差し迫った社会的、経済的問題の1つだ」とBusiness Insiderに語っている。
「こうした人たちの多くは経済的にも苦労しているが、これは驚くにはあたらない。(孤独の問題は)生産性を含め、わたしたちの生活のさまざまな分野に影響を及ぼす可能性があるからだ。また、経済的な制約が多いと孤独のリスクが高いことも分かっている」とKim氏は言う。
高麗大学校のChoi氏は、若者の社会的孤立は出生率といった既存の社会・経済問題を悪化させる可能性があると話している。
韓国の2023年の出生率は0.72と、世界で最も低かった。これはソウルに限るとさらに低下し、0.55だった。
今のペースでいけば、5100万人のソウルの人口は2100年までに半減すると見込まれている。これはソウル市が出生率を上げるための「出産奨励」プログラムで解決しようとしているもう1つの問題だ。韓国では人口の5分の1近くがソウルに住んでいる。
「確かに、孤独な人は家庭を築きにくい。これは韓国にとって、次世代の子どもたち、より現実的なところでは次世代の労働力を生み出すという点で、非常に大きな問題だ」と国立清華大学のChen氏は話している。
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