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2024-10-27 22:20:00
エネルギー需要の増加
最大規模のデータセンターを保有し、いまなおその拡大を加速させようというアマゾンのような巨大企業が前節で触れたような困難に直面するのは当然のことかもしれない。
サプライチェーンおよぶ物流に特化したコンサルティング会社、MWPVLインターナショナルのマーク・ウルフラート創業者兼社長は、Business Insiderの取材に対し、アマゾンが今後240カ所以上のデータセンターを展開する可能性があると指摘する。
同氏はその根拠として、アマゾンが合計7500平方フィート(試算値)、エンパイアステートビルに換算しておよそ27棟分にも及ぶ広大な(データセンター専用)ビルスペースの確保を進めている実態を挙げる。
アマゾンにコメントを求めたところ、顧客企業のエネルギー需要は「増加を続けて」おり、それに対応するため「データセンターを効率的に建設および運用する」方法を継続的に模索していると、広報担当からメール経由で返答が届いた。
「データセンター建設が極めて複雑な事業であることを最もよく熟知しているのは当社です。そうした困難を受け入れ、解決に取り組むことで、長い時間をかけて非常に高度なノウハウを獲得してきたのです。
顧客企業が必要とするクラウド(コンピューティングおよびデータストレージ)キャパシティを提供するデータセンターを、今後も継続的に迅速なペースで整備できると当社は確信しています」
電力供給に関する疑念
最も不足しているリソースはおそらく電力だろう。
ボストン・コンサルティング・グループ(Boston Consulting Group)の予測によれば、生成AI関連の需要増により、米国内のデータセンターにおける電力消費量は2030年までに3倍増する。
また、バーンスタイン・リサーチ(Bernstein Research)によると、このまま特段の対応策を取らなければ、米国内のAIデータセンターにおける電力需要は2年以内に供給を上回る可能性があるという。
アマゾン社内でも電力不足は大きな懸案事項であり、内情に詳しい関係者によれば、近年は経営会議でも定番の議題になっているという。
5月の社内文書によれば、同社はすでにオレゴン、オハイオ、バージニア北部の3リージョンで電力供給上の問題に直面している。例えば、ポートランドに拠点を置くアマゾン提携先の公益事業者パシフィコープ(PacifiCorp)の予測では、2030年まで電力不足と発電量の制約が続くとされる。
アマゾンは複数の市場においてエネルギー供給が予測不能な状況に陥っており、データセンター建設が進んでいく早期段階において電力を維持するための「つなぎ」的供給確保の手段を失う可能性がある。
具体的には、上記の社内文書にこんな記述がある。
「商用電源に吹きつける逆風に伴い、送電における制約、契約済みもしくは利用可能な電源に関する想定外の変化、期待される増分の電力量と実際に供給される電力量のギャップ、公共事業者による電源開発プロジェクトの遅延によるつなぎ電力の潜在的な喪失などが引き起こすリスクが引き続き想定されます」
「ゾンビ」データセンターの存在
一部の市場には、いわゆる「ゾンビ」データセンターが存在する。
これは正式な用語ではなく、Business Insiderの取材に応じたアマゾンの複数の従業員たちが使った表現だ。社内的には「運用停止中」と表現されることもあるようだ。
アマゾンの広報担当によれば、フル稼働時に必要な電力が確保できない場合でもデータセンターの竣工自体を優先するケースが「ごく少数ながら」存在し、そうした状況は全て通常業務の流れの中に位置づけて管理しているという。
同社のクラウド部門、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のマット・ガーマン最高経営責任者(CEO)は近頃、AIデータセンターの拡張計画をめぐり、GPU(画像処理装置)や電力の十分な確保が課題であることに公の場で言及している。
同氏は8月に公開されたあるポッドキャスト番組のインタビューで、顧客企業の「気が遠くなるほど」の需要に対応するため「大きな投資」が必要で、「おそらく今後しばらくの間はタイトな状況が続く」と語った。
「光に集まる蚊のように」
アマゾンはより多くのエネルギーを確保しようと奔走している。
前出の社内文書によれば、同社は公益事業者との協力のもと、追加で確保可能な送電容量を見積もる調査を進めており、結果次第では割当(供給)電力量を拡大できる可能性がある。
また同じ社内文書には、休廃止電源の再稼働ないし再利用の検討についても記載がある。これはおそらく、老朽化して経済性もしくは持続性の観点から使われなくなった発電所を再開発する取り組みを指すものと思われる。
Business Insiderの取材に応じた関係者によると、アマゾンはサードパーティーがサーバーやネットワーク機器の設置スペースをレンタル提供する形のコロケーションデータセンターと提携するチャンスをより積極的に探しているという。
コロケーションなら、スペースをリース利用するだけで必要な電力を確保する厄介な業務をデータセンターの運営企業に転嫁できるからだ。
アマゾンはさらに、北バージニアやアリゾナといったすでに実績十分のデータセンター市場だけでなく、インディアナのような比較的新しいエリアへの進出も始めている。
データセンターの立地が稠密(ちゅうみつ)するエリアでは、電力その他のリソースが不足状態に陥っており、その分だけ新たなエリアは(リソースが充実していて)魅力が高く映る。
加えて、アマゾンは代替エネルギー源の発掘にも積極的な姿勢を強めている。
同社は2024年3月、ペンシルベニア州北東部に位置するサスケハナ原発の近隣に位置(して電源と直結)するデータセンターを6億5000万ドルで購入し、容量増強の上で同原発と960MW(メガワット)規模の電力購入契約を結ぶ計画を発表。
10月16日には小型モジュール炉(SMR)開発を手がけるエックスエナジー(X-energy)の5億ドル規模の資金調達ラウンドでリード投資家を担う方針も発表した。
「まるで蚊が光源に集まるように、私たちも電源に引き寄せられているのです」(前出の関係者)
シリコンバレーは高コスト
アマゾンが新たなデータセンターの建設と運営に他より高いコストを支払う特殊なケースも存在する。
シリコンバレーの中心、カリフォルニア州サンタクララで計画中のデータセンターがその例だ。
プロアメリカンフットボールチームのサンフランシスコ・49ersが本拠地とするリーバイス・スタジアムの近隣にデータセンター建設を計画中のアマゾンは、必要な電力を確保するため、過去2年間にわたって地元のサンタクララ市と協議を重ねてきた。
同市で電気事業者の監督責任者(CEUO)を務めるマニュエル・ピネダ氏の市議会における説明によれば、アマゾンとはデータセンター向けの電力供給契約をめぐって調整を続けており、契約期間は15年間、年間電力供給量は20MW、アマゾン側が実際の使用量と無関係に電力供給に伴う全てのコストを負担する条件が提示されている。
アマゾンは通常より最大50%高い電気料金を支払わねばらなくなるものの、契約上のリスクをカバーするための追加的な「財務保証」をサンタクララ市から受けられるという。
なお、ピネダ氏の説明によれば、アマゾンはこの契約の一環として、現時点では電力容量の設定されていないデータセンター敷地内の隣接する建物に上記の電力供給契約を適用して追加供給する計画(最大80MW)も検討されている。

サンタクララ市議会で使用されたアマゾン向け電力供給契約に関する資料。
サンタクララ市
このサンタクララ市との電力供給契約をめぐっては、協議がいまだ合意に至らず遅延に次ぐ遅延を重ねており、顧客企業へのクラウドサービス提供に支障が生じる懸念を訴える書簡がアマゾン側から提出されるなど、先行き不透明な状況が続いている模様だ。
工業用水確保、規制対応の必要性
工業用水の確保も問題の一つだ。
サーバーやその他ネットワーク機器の冷却に従来の空冷方式ではなく液冷方式を採用するデータセンターが増えており、そのために大量の工業用水が必要となってきている。
前出のアマゾンの内部文書には、一部のエリアで「地元当局が管轄する既存の水インフラに負担をかけて」おり、その問題を緩和するには「長期間にわたることが予想されるインフラのアップグレードに依存するか、そうでなければ独自のソリューションを構築する」必要があると記載されている。
その点、アマゾンにコメントを求めたところ、同社は「世界で最も効率的な水運用を実現している企業の一つ」であり、とりわけ「データセンターの水運用は業界平均よりはるかに高効率です」との返答があった。
さらに、土地利用規制や建設認可の問題も無視できない。
同じ社内文書によれば、地元当局の一部は工業用地のデータセンター向け用途変更を認めておらず、環境規制も他より厳格なケースがある。
それらの規制が将来的にデータセンター容量の選択肢を狭めるなど大きな影響を及ぼしかねないため、アマゾンは課題解決に向けて地元当局と「積極的に取り組んでいる」という。
熟練した電気技術者の不足
最後に、データセンターの建設・運営を支える熟練した電気技術者の不足は、さらに大きな問題となる可能性がある。
内情に詳しい複数の関係者によれば、配線や機器設置などの電気関連工事はデータセンター建設の根幹を成す部分だが、アマゾンはその部分を担う人材の十分な確保に苦しんでおり、特に地方では問題が深刻な模様だ。
一部の市場では、地元大学やゼネコン、労働組合などに声をかけて電気技術者の養成強化に向けて(協力できないか)協議を進めていると、上記の関係者の一人は語る。

アマゾンがオレゴン州で運営するデータセンター。
アマゾン
2023年にアップタイム・インスティテュート(Uptime Institute)が公表した「データセンター・スタッフィング・サーベイ」では、回答者の半数以上が欠員を補充する際に困難を感じており、その理由として熟達したスキルに対する需要が供給を上回り、小さなパイの中で競争が激化していることを挙げている。
社内文書には以下のような深刻度の感じられる記載がある。
「労働力に関して言えば、採用可能な熟練(電気技術)労働者の不足が見られ、そのために(手元の)熟練労働者をどの部分に配置配分すべきか優先順位をつける必要に迫られています。同時に、高額な作業報酬を支払う必要のある派遣電気技術者への依存度がますます高まっています」
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