イラストレーターの花村舞さんが2024年1月10日、東京都内で自身のイラスト集を手にしている。(毎日・辰己健司撮影)
人気イラストレーターの花村麻衣さんは2019年6月、女性漫画家の代理人弁護士から通知書を受け取った。
告発状は、ハナムラ氏がトレースしてアーティストの作品を盗んだと訴えていた。彼女は最初、それは単なる誤解で解決できるものだと思っていた。それが自分の生活を脅かす訴訟に発展するとは予想もしていなかった。
覚えていないことで告発された
花村さんは美術大学を卒業後、ゲーム会社にデザイナーとして入社。2013年にフリーランスのイラストレーターに転向。イラスト集も出版するなどキャリアが順調に進んでいた矢先に紛争が起きた。
花村氏が受け取った通知書には、彼女が描いたゲームキャラクターの300枚以上の画像を検査し、線の重なりなど、漫画家の作品と類似しているとされる点を列挙したと記載されていた。
アニメやイラストの世界では、他人の作品をトレースして盗むことを「トレパク」と呼びます。これは、「トレース」という日本語の発音と、「パクリ」というコピーや盗作を意味する俗語を組み合わせたものです。
花村さんは、思いもよらぬところから来た告発に衝撃を受けた。彼女が受け取った告発状は、彼女が以前勤めていたゲーム会社の親会社にも送られていた。会社側も「トレパク」を否定したが、告発者はこれを認めなかった。
2019年10月、花村さんは誤解を解きたいと思い、漫画家の前で直接描く機会を設けた。
イラストレーターの花村舞氏が自分の作品を「トレースコピー」したと訴えた女性漫画家が、訴訟の証拠として作成し提出した画像。花村氏の弁護団が提供したもの。左上には花村氏の絵、下には漫画家の絵、右側には類似点を指摘する重ね合わせた画像が表示されている。
キャンセルされた仕事
花村さんは自分の実力を発揮できると自信があったにもかかわらず、漫画家は「トレースなしで描くには画力がない」と一方的に判断した。花村さんは一連の出来事をブログやツイッター(現・X)で綴っていた。
これらの投稿では花村さんは「H」という仮名で呼ばれていたが、話題が広まるにつれてすぐに特定され、果てしない誹謗中傷にさらされた。
2020年に入ると、複数の企業が彼女に依頼していたイラストの仕事を取り消したことで、仕事を失うのではないかという彼女の懸念は現実のものとなった。
「怒り、悲しみ、後悔…(告発を)否定しても何も伝わらなかった。どうしていいかわからず、生まれて初めて絵を描くことが楽しくなくなった」と当時を振り返る。
疑惑に終止符を打つため、花村さんは法廷で決着をつけることを決意した。
訴訟の結果
決め手となったのはイラストが描かれた時期でした。
花村氏の作品をコピーしたとされるイラストの記録データを見ると、その多くが花村氏よりも前に描かれたものだったことがわかった。
23年10月、裁判所は「異なる作品でも線が重なることはよくあること」として、それだけではトレースや盗作とはみなされないと判断した。花村被告が漫画家の作品をトレースしたとは推定できないとの判決を下した。
また、このような「トレパク」をめぐるスキャンダルはネット上で批判を呼びやすいことに触れ、今回の告発が「花村氏の社会的信用に大きな影響を及ぼした」として、花村氏に314万円の支払いを命じた。
双方とも控訴しなかった。花村さんは約4年間の紛争を振り返り「肉体的にも精神的にも経済的にも大きな負担だった。相手も同じだったのかもしれない。こういう紛争は何も生まない」と語った。
『著作権虚偽請求事件簿』の著者である友利昴氏が本人から提供された写真に写っている。
デジタルソフトウェアの利用増加
友利さんによると、ペイントソフトの普及も一因だという。近年、イラストデザインはデジタルが主流となり、安価なソフトが普及したことで、イラストに挑戦したい人にとって敷居が低くなったという。
同時に、他人の作品をデジタル化し、複数の画像を重ね合わせて類似点を探すことで、知的盗難を特定しようとすることが容易になりました。
友利さんは「盗作の摘発には慎重さが必要だ。一度疑われると風評は拭い去れず、作家は仕事を失う恐れがある。冷静な視点が良質な作品を守る鍵だ」と注意を促した。
(辰己健二記者)
#日本のイラストレーターにとって簡単なソフトは偽のトレースコピー告発の危険性を高める