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2026-03-28 08:30:00
- 82歳のラリーとバーバラ・クック夫妻は、連邦取引委員会(FTC)に「協力」することで正しいことをしていると思っていた。
- 2人は130万ドル(約2億円)の貯蓄をビットコインと金に換え、それを詐欺師に盗まれてしまった。
- 夫婦が詐欺だと気づくまでには7カ月を要した。2人は他の人々に注意を促すため、この苦難について語っている。
2023年9月、バーバラ・クック氏は、アマゾン(Amazon)と彼女が利用する金融機関であるTDバンク(TD Bank)のセキュリティチームを名乗る2人から電話を受けたとき、安堵感を覚えた。
当時80歳だった彼女と夫のラリーは、数カ月前からアマゾンで問題があり、注文ができなくなっていた。
彼女は電話を夫に渡した。男の1人は、ラリーの名前と社会保障番号がダークウェブでの購入に悪用されたと話した。
数時間のうちに、夫婦は詐欺師たちの策略に巻き込まれた。詐欺師らは、夫婦の老後資金、慈善団体への寄付、そして遺言で定めた家族への遺産として用意していた、130万ドル(約1億9500万円)の貯蓄を盗んだ。
詐欺師たちは夫婦の信頼を得た
この詐欺により、夫婦は50ドル札や100ドル札の束を大量にビットコインATMに投入し、また、夫婦が住むメイン州と、冬を過ごすためのマンションを所有していたフロリダ州で金塊を手渡した。
クック夫妻が騙されていたことに気づくまでには、6カ月以上を要した。夫妻は、連邦取引委員会(FTC)の職員を装った詐欺師の指示に従ってしまったのだ。
その詐欺師は、サイバー犯罪者を捕まえるために「資金の流れを追跡」していると述べ、FTCを支援することは市民としての義務だと主張し、夫妻の信頼を得た。

「妻と私は昔から人を助けるのが好きだった」と、現在82歳のラリー・クック氏はBusiness Insiderに語った。彼はペンシルベニア州の元牧師で、アフリカを拠点とする非営利団体「ケニアズ・キッズ(Kenya’s Kids)」の創設牧師でもある。「私たちはアメリカ政府を助けているのだと思っていた」
アマゾンとTDバンクの担当者を装った人物とのその後の電話において、詐欺師たちは、従わなければ高額な訴訟を起こすと脅し、「協力」するよう説得した。
詐欺師たちはまた、成功した専門職である夫妻の2人の息子がこの件に巻き込まれ、彼らの評判が傷つくことになるとも述べた。
詐欺師たちは、犯人が夫妻の社会保障番号を知っていると語った
彼らのもう1つの手口は、クック夫妻の貯蓄が盗まれる危険性があるため、ビットコインや金に換金した上で、「安全な口座」に移すべきだと主張することだった。彼らは、犯人グループが夫婦の社会保障番号やその他の機密情報を知っている、と語った。
次に、彼らは当時の財務長官を名乗る印章が押された、一見本物らしい手紙を送りつけた。その手紙には、「捜査」への関与を誰かに話せば、資産を没収されるという代償を払うことになる、と書かれていた。

「信じられないと思うが、私たちは怖かった」と、最初にポートランド・プレス・ヘラルド紙(the Portland Press Herald)に自身の体験を話したラリーは語った。彼は偽の合意書に署名した。
夫妻には「FTC捜査官」と名乗る「ライアン・テリー」という人物が割り当てられた。テリーは、WhatsAppのダウンロード方法(その後、彼自身が音声通話に使用した)や、ビットコインウォレットの設定方法を夫妻に教えた。
さらにテリーは、TDバンクから130万ドル(約1億9500万円)以上を数回に分けて引き出すよう説得し、401(k)プランを含む夫妻の貯蓄口座を空にした。ラリーによると、銀行員はほぼ毎回、詐欺ではないかと尋ねてきたという。
彼らはビットコインATMにお金を預け入れた
彼は、それが正当な捜査だと信じており、そして愛国心から、(銀行員の問いかけに)詐欺ではない、と言った。企業勤務時代に資産の大部分を築いたこの高齢男性は、その資金の使い道を開示する義務はなかった。
守りたいと願っていた家族には内緒で、夫婦は街角の食料品店やガソリンスタンドにあるビットコインATMに紙幣を投入した。
「中には怪しげな店もあり、ラリーが危害を加えられないよう祈った」と、夫が取引をしている間、よく車のなかで待っていたバーバラ・クック氏は語った。
テリーの指示のもと、現金とオンラインで購入した金のうちの一部は、夫妻のメイン州オーガスタ近郊の自宅やフロリダ州ネープルズにあるマンションから、名前の分からない宅配業者によって回収された。

各小包の価値は、5万ドル(約750万円)から15万ドル(約2250万円)に上った。テリーは夫婦に、指示に従っている証拠として、札束や金塊の写真を送るよう求めた。
彼は、連邦取引委員会(FTC)が夫婦に新しい社会保障番号を提供し、貯蓄を回復させ、費用を払い戻すと約束した。
自分が国のために貢献していると思っていた
当時ラリーが見過ごしてしまった危険信号の1つは、テリーが彼のフロリダ州の住所を確認し、ネープルズの綴りを尋ねてきたことだった。「私は彼に綴りを教え、『あなたは政府の捜査官だ。ネープルズの綴りくらい分かるはずでは?』と、言った」
テリーは言い訳をし、その瞬間は過ぎていった。「彼はいつも、優しくて思いやりのある人に見えた」とラリーは言った。彼はよくクック夫妻の60年にわたる結婚生活について尋ね、自身は妻との関係で困難な時期を過ごしていると打ち明けていた。
「彼は、これが終わったら直接会ってアドバイスを求めたいと言っていた」とラリーは付け加えた。

この詐欺は、ラリーがケニアにある自身の団体の児童養護施設を訪問して帰国した直後の2024年4月まで続いた。彼はテリーに電話をかけたが、テリーのWhatsAppはすでに使えなくなっていた。
彼は何度も電話をかけようと試みた後、テリーがよく勤務していると語っていたダラスにある連邦取引委員会(FTC)の地域事務所に連絡した。オペレーターは、そのような職員はいない、と答えた。
被害者ホットラインに転送され、警察やFBIに連絡するよう言われたとき、彼はがっかりした。FTCは消費者に送金や仮想通貨・金の購入を求めたり、捜査を秘密にしたりすることはないと言われた。
捜査官たちはクック夫妻の自宅に2日間滞在し、詐欺師たちからのメールや手紙を精査した。その多くには、夫妻が気づかなかったスペルや文法の誤りがあった。
夫婦のメディケアの支払額は大幅に増加した
捜査が開始されたものの、2025年秋、夫妻は当局から資金回収の見込みはないと告げられた。それに先立ち、内国歳入庁(IRS)は夫妻が引き出した資金は課税対象所得とみなされるため、数十万ドル(約数千万円)の税金を支払わなければならないとの判断を下していた。
彼らはメイン州選出のスーザン・コリンズ上院議員の事務所に助けを求めた。同事務所が介入した結果、2人はすでに支払った税金の少なくとも一部を取り戻し、その一部を免除してもらうことができた。
もう1つの問題は、当初の確定申告額に基づいて算出される彼らのメディケアの支払額が、驚くほど増加したことだ。詐欺被害に遭う前は月額200ドル(約3万円)だった保険料が、今では月額1465ドル(約22万円)にまで跳ね上がっており、この健康保険の問題は、未解決のままだ。

ラリーは2024年4月の、胸が張り裂けるような瞬間を振り返った。それは、夫妻が最も親しい家族を呼び寄せ、詐欺について打ち明け、現金取引を秘密にしていたことを謝罪した瞬間だ。
「私たちは、みんなで一緒に泣いた」と彼は語った。「彼らは打ちのめされており、なぜ私がこんなことを許してしまったのか理解できなかった。私を非難していたわけではなく、『お父さん、もっとよく考えるべきだった』と言っていた。それは確かにその通りだった」
夫妻は人々に注意を促し、同じ境遇の人を慰めたいと考えている
彼は、盗まれた資金の多くが両親の遺言で彼らに遺贈されたものだったという事実は、重要ではなかった、と語った。彼らが最も懸念していたのは、ケニアでダウン症の子供たちのための新しい専門施設を建設するのに充てられる予定だった多額の資金が、失われてしまったことだった。その施設は、ダウン症を患う夫婦の25歳の孫にちなんだものであった。
それでも、クック夫妻は詐欺に負けることを拒んでいる。彼らは、自分たちの体験を語ることで、他の人々に注意を促し、同じように詐欺に遭いながらも声を上げることを恐れている人々を慰めるという、新たな使命を神が与えてくれたと信じている。
ラリーは言った。「恥ずかしいか? そうだ。無知で愚かだったか? そうだ。だが、我々は痛みと怒りを同情と共感へと転換したのだ」
編集者注:アマゾンとTDバンクは、個々の顧客口座についてはコメントできないとしている。TDバンクは顧客に対し、不審な電話には応じず、公式の連絡手段を通じて銀行に連絡するよう勧めている。アマゾンは、詐欺の疑いがある場合はamazon.com/ReportAScamで報告するよう消費者に呼びかけている。
詐欺被害を防ぐ方法や、被害に遭ったと思われる場合の対処法に関する詳細は、FBIの詐欺対策ウェブサイトをご覧頂きたい。
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