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2025-04-22 08:30:00
- 西友買収のニュースで、一躍日本全国に知れ渡ったトライアル。その強さの秘密は驚異的な”高効率性”にあるという。
- ディスカウントストア業界のトップに君臨するドン・キホーテと比較すると、「利益率」ではかなり劣るトライアル。
- しかし、B/Sを比較分析すると、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)に圧倒的な優位性が見て取れた。
おそらく多くの人にとって昔から馴染みのあるスーパーの一つが西友です。西友は関東133店舗を中心に全国で242店舗ある大手スーパーマーケットです。元々は、西武グループでしたが、2002年にウォルマートの傘下に入り、その後主要株主がプライベートエクイティファンドのKKRへと変わりました。
この西友の株式が3月6日に九州を基盤とする大手ディスカウントストアのトライアルホールディングス(以下、トライアルHD)に譲渡されることが決まりました。驚きなのはその金額で、約3800億円です。実はこの買収金額はトライアルHDの時価総額2800億円を超えているのです。つまり、トライアルHDは自らの時価総額よりも大きい会社を買収するというのが今回の注目論点といえます。
この買収によりトライアルHDの売上高は1.2兆円となり、小売業界で6位に位置付けることになります。この順位は、ローソン約1兆円、ニトリの約9000億円を超える水準です。これより上には誰もが知っているセブン&アイ、イオン、ユニクロを傘下に抱えるファーストリテイリング、ドン・キホーテやユニーを抱えるパン・パシフィックインターナショナル(以下、PPIH)、ヤマダHDなど、日本を代表する小売ばかりの状況です。

一方で、今回西友を買収したトライアルHDは、売上高7000億円超とはいえ、九州を基盤にするディスカウントストアであることから、知らない読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際、筆者もトライアルHDのことはほとんど知らず、千葉にある八千代店に行ってみたほどです。
今回は、このトライアルHDについて、ディスカウントストア業界トップのPPIHと比較をしながら、西友買収についての仕組みを、会計とファイナンスの観点から考察していきます。
トライアルHDはどういった会社なのか
まずはトライアルHDについて概要を説明し、その後、財務についてみていきましょう。
1974年にトライアルHDの前身となる家電製品販売業「あさひ屋」が福岡市博多において創業され、1984年にはトライアルカンパニーに商号を変更し、小売店向けのPOSシステム開発や、大手コンピューターメーカーの受託開発をしました。つまり、トライアルHDの元々の祖業はシステム開発等のITなのです。
その後、1992年にディスカウントストアトライアル1号店が福岡にて開店され、ディスカウントストアへと転換を図り、店舗を拡大しながら、2024年に東京証券取引所グロース市場に上場を果たしました。
このように業態を変えながら成長をしてきたトライアルHDについて、続いて売上高と営業利益を見ていきましょう。直近の2024年6月期において売上高は7179億円で、営業利益は192億円、営業利益率は2.7%です(図表2)。

ここで特筆すべきはトライアルHDの売上高の伸びです。なんと、24期増収を続けています。バブル崩壊後、失われた30年と言われている中、なぜこのようにトライアルHDは売上を伸ばしているのでしょうか。その理由は3つ挙げられます。
第1にトライアルHDのディスカウントストアという業態が伸び続けているためです。図表3は、国内ディスカウントストアの市場規模に関する情報です。国内ディスカウントストアの市場規模は2014年の2兆円から2023年までに4.4兆円まで拡大し、市場年平均成長率は9.0%となっています。
この年平均成長率は、他の小売業態であるドラッグストア6.2%、コンビニ2.2%、スーパー1.9%の成長率を大きく上回っています。その背景としては、度重なる消費増税の中、節約志向も高まり、さらにはコロナ不況による生活様式の変化の中、人々の需要が従来のスーパーよりもディスカウントストアに向かっていることが考えられます。
このように、トライアルHDによるポジショニングである国内ディスカウントストア市場の拡大が、トライアルHDの売上拡大にも寄与していると考えられます。

第2に店舗数の増加です。トライアルHDのように小売業態はいかに店舗を増やせるかが成長の鍵となります。先ほど見たようにディスカウントストアの市場が成長する中、毎年確実に店舗を増やしていくことで、24期連続の増収を達成しています(図表4)。

ただし、いくら新規店舗を増やしても既存店舗の売上が伸びなければ将来的にはジリ貧になってしまいます。では、既存店舗の売上はどうなっているのでしょう。それが3つ目の理由となる既存店舗の売上高の増加です。図表5は、既存店舗の売上高について前年同月比を比較したものです。2025年1月時点で、既存店売上高は44カ月連続で前年同月比のプラスです。
とはいえ、近年のインフレ傾向の影響もあり、物価上昇によって売上高が増加していると考える人もいらっしゃるかもしれません。ですが、トライアルHDでは客単価はもちろんのこと、客数でも多くの場合、前年同月比でプラスになっているのです。

このように、ディスカウントストア市場の拡大、新規店舗の出店、そして既存店舗の売上拡大を通じて、トライアルHDは24期連続の増収を達成しているといえます。もちろん、これらの根底には顧客の求める価値ある商品の提供をできているということがあります。
トライアルの利益率は、なぜドンキより低いのか?
では、次に利益率はどうでしょうか。2024年6月期のトライアルHDの営業利益率は2.7%でした。多くの場合、小売業の利益率は1桁前半と言われているので、この数字だけを見たら平均的に感じるかもしれません。そこで、他の小売企業と営業利益率を比較してみましょう。
図表6は他のディスカウントストア、ドラッグストア、スーパーマーケットの営業利益率もしくはセグメント別利益率(ただし、ドン・キホーテとユニーは経常利益率)を比較したものです。
トライアルHDの2.7%の利益率は、小売大手のイオンのディスカウントストア(DS)2.1%、スーパーマーケット(SM)1.5%、総合スーパー(GMS)0.9%、さらにはセブン&アイのスーパーマーケット部門(イトーヨーカ堂等)0.9%よりも高い水準に位置しています。
一方で、ディスカウント大手のパン・パシフィック・インターナショナル・ホールディングス(PPIH)傘下のドン・キホーテ8.5%、ユニー7.2%、UDリテール4.1%と比較すると半分前後の利益率です。

ディスカウントストア業界のトップに位置し、売上高は2兆円を超えているPPIHとトライアルHDではなぜ利益率に差があるのでしょうか。その理由を探るべく両社のP/Lを比較したものが図表7になります。ドン・キホーテ等を抱えるPPIH全体の営業利益率は6.7%であり、トライアルHDの2.5倍近くあります。

トライアルHDとPPIHのP/Lを比較した時、もっとも差があるのは原価率です。トライアルHDの原価率は80%弱の一方、PPIHの原価率は70%弱で10%も差があるのです。ITを活用することで、人件費を抑えることに長けているトライアルHDの方が売上高に占める人件費は8.5%とPPIHの9.4%よりも1%低いですが原価率に10%も差があることで、結果的に営業利益率には4%もの差が出ているのです。
同じディスカウントストアの業態にも関わらずなぜこのようにトライアルHDとPPIHでは、原価率に差があるのでしょうか。その主たる要因は、売上高の構成にあります。図表8はトライアルHDとPPIHの売上高の構成を比較したものです。

図表8からもわかるように同じディスカウントストアでも売上の構成は大きく異なります。トライアルHDの売上で最も大きい割合を占めるのは食品の74%です。一方、PPIHも最も大きな割合を占めるのは食品なものの、その割合は42%と半分以下です。他にも、日用雑貨、時計・ファッション、家電製品といったもの合わせると食品と同じ割合を有しています。
すなわち、食品を中心としたディスカウントストアであるトライアルHDは、PPIHよりも原価率が高くなっていることがここからわかります。
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