11月3日の開業を控える皇居・東御苑の新設「大手休憩所」について、毎日新聞やYahoo!ニュースなどの報道で全貌が明らかになった。総事業費約75億円を投じた木造平屋建ての施設には、皇居初となるカフェや屋上デッキが整備され、外国人観光客をはじめとする来園者の利便性向上のほか、日本各地への地方誘客や皇室文化の発信拠点としての役割が期待されている。
大手門の近くに誕生する木造平屋建ての大手休憩所
9月下旬、皇居の東側で地下鉄各線の大手町駅に近い「大手門」の工事用壁が取り払われ、新たな休憩所の外観が現れた。延べ床面積2800平方メートルを誇る木造平屋建ての施設は、11月3日のオープンに向けた大詰めの作業が進められている。宮内庁管理課長の伊藤良治さんは、「くつろぐだけでなく、観光拠点として情報発信を担っていきます」と、その狙いをアピールしている。
猿田彦珈琲が運営する皇居初のカフェと屋上デッキ
新設される休憩所の一角には、コーヒー専門店を展開する「猿田彦珈琲」が運営する皇居初のカフェが入る。皇居でしか味わえないオリジナルティや食事を提供する予定で、周辺の景観と調和した色彩に仕上げられるという。また、施設には屋上デッキも設けられ、これまで地上から見上げていた皇居内の石垣ややぐらを高い場所から見物できるようになる。

急増するインバウンド需要と地方への誘客機能
東御苑の2025年の入園者は213万人に達し、過去最多を記録した2019年の223万人に迫る勢いを見せている。特に外国人の来園者は10年前から倍増し、全体の6割近くを占めて日本人の割合を上回っている。こうした状況を受け、英語表記を「インペリアル・パレス・ビジター・センター」とした休憩所内では、阿蘇地域や宮島など日本各地の魅力を大型ビジョンで紹介。表示されるQRコードをスマートフォンで読み取ることで、観光地への行き方を指南するシステムを導入し、地方への誘客を促す工夫が凝らされている。
出国税を財源とした約75億円の事業と異例の民間運営
総事業費約75億円に上る施設の整備には観光庁も協力しており、その財源には国籍を問わず日本出国時に3000円が徴収される「出国税」が充てられている。観光庁の担当者は、皇居そばの東京駅周辺において「日本の魅力を網羅的に伝える施設が乏しかった」と整備の背景を説明する。さらに、宮内庁は民間のノウハウを活用するため公募型プロポーザル方式を採用。カフェに猿田彦珈琲、休憩所全体にJTBコミュニケーションデザインと丹青社の共同企業体を選定しており、皇居の公開エリアで民間企業が事業を運営することは極めて異例とされる。
同時リニューアルを迎える皇居三の丸尚蔵館との相乗効果
休憩所の開業と同じ11月3日には、7年に及ぶ工事を終えた「皇居三の丸尚蔵館」も営業を再開する。1993年に開館した同館は、皇室で代々受け継がれてきた絵画や工芸品などを保存・公開してきたが、今回のリニューアルにより展示室の広さは従来の8倍に拡大される。これまで同館にはゆっくりくつろぐスペースがなかったことから、休憩所の整備が決定した。宮内庁の黒田武一郎長官は定例記者会見で、「来園者のアメニティー向上、皇室や伝統文化の情報提供の強化を目的として整備してきた」と述べ、両施設の効果的な連携運用に意欲を示している。