東京都豊島区の池袋駅周辺で、外国人観光客によるスーツケースの不法投棄が急増している。区は昨年度、路上や公園などで約290個の放置スーツケースを回収した。安価な日本の製品への買い替えや、荷物の増加が主な要因とみられ、区は民間業者と連携して適正な処分を促す対策を講じている。
豊島区で年間約290個のスーツケースを回収
豊島区によると、観光客の増加に比例してスーツケースの放置事案は深刻化している。昨年度、区道や公園、ごみ集積所などで回収された数は計約290個に達した。民泊やホテルが集中する池袋駅周辺で特に目立ち、宿泊施設に不用品を置いていくケースも報告されている。都の「外国人旅行者行動特性調査」では、都内を訪れた外国人観光客の4人に1人が池袋を訪問しており、このエリアへの観光客集中が背景にあるとみられる。
買い替えや荷物増が招く不法投棄の背景
不法投棄の背景には、円安の影響で日本の安価で丈夫なスーツケースを買い替える旅行者が増えている現状がある。また、お土産などで荷物が増え、既存のケースに入り切らずに古いものを捨てていくケースも多い。近隣住民からは「ここ数年で民泊が増えてから、路上で計50個以上は見た」との声が上がる。区豊島清掃事務所の高桑光浩所長は、中身が不明なスーツケースの処理について「警察官の立ち会いで中身を確認する手間がかかっており、住民からも怖いという通報が寄せられる」と現場の苦悩を語った。
民間業者と連携した多言語での適正処分促進
区は不法投棄を減らすため、7月に買い取りサービスを行う「カルチャーズジャパン」(台東区)および「日本鞄材」(岐阜市)と連携協定を締結した。両社の連絡先や処分方法を英語、中国語、韓国語などで記載したチラシを作成し、宿泊施設や量販店で配布している。日本鞄材は宿泊施設に出向いて1個2500円で引き取るサービスを展開しており、区は池袋西口公園などの大型ビジョンを活用した多言語での周知も強化している。本来、不要なスーツケースの処分には、コンビニ等で粗大ごみ処理券(400円分)を購入し、区に収集を依頼する必要がある。
新宿や浅草でも相次ぐ放置スーツケース
スーツケースの放置問題は豊島区に限った話ではない。都監察指導課によると、今年4月以降、島嶼部を除く都道上で回収されたスーツケースは先月16日時点で計50個に上る。特に新宿や浅草といった観光地で目立っており、新宿区でも昨年度、区道で約30個を回収した。新宿清掃事務所は、民泊事業者に対し、旅行客が残したスーツケースを「事業系ごみ」として適切に処分するよう注意喚起を強めている。
罰則付き条例の制定と今後の対策
豊島区はさらなる対策として、今年度中に罰則付きの条例を制定し、来年度からの施行を目指している。区環境政策課の沢田健司課長は「民間の力も借りながら対策を強化したい」と述べている。オーバーツーリズムに詳しい龍谷大学の阿部大輔教授は、観光客にとって現地の廃棄ルールは分かりにくいと指摘し、適切な行動を促すための特典付与といったインセンティブの導入が重要だと提言した。東京都を訪れた外国人観光客は昨年、前年比16%増の約2865万人と過去最多を記録しており、観光客の利便性と地域の美化を両立させる仕組み作りが急務となっている。