米国を中心に、速歩とゆっくり歩きを3分ずつ交互に繰り返す「ジャパニーズ・ウォーキング」がブームとなっている。1日10,000歩の目標に重圧を感じる人々の間で共感を呼び、英ジムチェーンのPureGymの分析では、2025年7月から9月の検索数が前年同期比で2,968%増加したと報じられている。
ジャパニーズ・ウォーキングが海外メディアで注目を集める背景
米国では2025年6月以降、主要メディアが「Japanese walking」と呼ばれる歩行法を相次いで取り上げた。フォーチュンやタイム、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズ、CNNなどが、SNSで話題の日本発のウォーキングとして紹介している。2026年に入ると米国だけでなく各国へも注目が広がり、英国のThe IndependentやカナダのNOW Toronto、インドのIndia Today、アイルランドのRTÉなどがトレンドとして報じた。シンガポールでは民間のヘルスケア事業者がシニア向けのウォーキンググループを運営するなど、国際的な広がりを見せている。
TikTok動画を発端とした世界的なトレンドの拡大
このブームの火付け役とされるのは、オーストラリアのユージン・テオが2025年5月に投稿したTikTok動画である。テオは日本の研究者が考案したウォーキング手法を、専門用語を好まない人々にも伝わるように言い換えて説明した。この動画が多くの共感を呼んだ背景には、「1日10,000歩」という従来の目標を達成できずに重圧を感じている人が多い現実があった。なお、テオがジャパニーズ・ウォーキングの名付け親かどうかは確認されていない。
ルーツとなった信州大学発のインターバル速歩
「ジャパニーズ・ウォーキング」の呼称が示す通り、そのルーツは日本の長野県にある。1997年、長野県松本市と信州大学は共同で中高年向けの健康スポーツ教室「松本市熟年体育大学」を立ち上げた。教室の運営を2004年から担ってきた地元のNPO法人「熟年体育大学リサーチセンター(JTRC)」によると、9年間にわたる1,800人の受講生データでは、ほぼ毎日約10,000歩を歩いたのは全体の30%にとどまった。この層は体重や体脂肪率が下がり血圧も正常値に近づいたものの、脚の筋力や持久力は増えなかったという。
通常のウォーキングに不足していた運動の強さ
当時の事業に携わっていた信州大学教授の能勢博は、国内外の論文を調べ、足りなかったのは歩く量ではなく運動の強さであると考えた。米国スポーツ医学会によると、体力を高める運動の目安のひとつは「ややきつい」と感じる強さの運動を1日20分以上、週3日以上続けることである。しかし、1日10,000歩を目標にした歩行の強度は、これを大きく下回っていた。通常のウォーキングでは強度が低すぎたため、研究グループは新たな手法の考案に至った。
インターバル速歩の具体的な実施方法
能勢らの研究グループが考案した「インターバル速歩」は、最大体力の70%以上に相当する「速歩」と、40%以下の「緩歩」を3分間ずつ交互に実施する手法である。速歩の合計が1日15分以上になるように週4日以上続けるのが基本とされている。速歩の強度の目安は、息が上がって「ややきつい」と感じる程度である。脚の筋力や持久力が高まり血圧も下がる効果が期待できるとして、この運動法が海外でも高い関心を集め続けている。