福井県の三方五湖で、魚の大量死や異臭が発生する異変が起きている。海水流入による水質変化や「青潮」の発生が要因とみられ、県と若狭・美浜両町は今年度から2年間の詳細調査に着手した。漁業関係者からはウナギやシジミ漁への影響を懸念する声が上がっている。
久々子湖で約8.5トンの魚が大量死
今年9月、福井県美浜町と若狭町にまたがる三方五湖の一つ、久々子湖で大量の魚が死んでいるのが見つかった。読売新聞によると、打ち上げられた魚の死骸は約6トンに上る。一方、福井テレビとFNNプライムオンラインは、死骸の量は約8.5トンに達したと報じている。死んだ魚の種類はボラやコノシロ、ウナギ、クロダイ、スズキなど多岐にわたる。付近の住民は「湖岸に魚の死骸が何千、何万とあり、初めて見る光景だった」「腐った臭いがすごかった」と被害の深刻さを語った。死骸は川を伝って若狭湾の浜辺にまで漂着し、広範囲で悪臭が立ち込めたという。
塩分濃度の上昇と湖内の異変
三方五湖は本来、塩分濃度が異なる5つの湖で構成されている。日向湖は海水、久々子湖・水月湖・菅湖は汽水、三方湖は淡水とされてきた。しかし近年、本来は海に生息するフジツボが、三方湖などでウナギを捕獲する伝統的な「筒漁」の仕掛けに大量付着する事態が発生している。福井テレビによると、地元の漁師からはシジミの不漁を懸念する声も上がっており、汽水湖や淡水湖での塩分濃度上昇が指摘されている。農家からも、湖の水を使用した田んぼで稲の生育不良が起きる「塩害」の報告が寄せられており、湖全体の環境がかつての状態から変化している可能性がある。

青潮と硫化水素の発生メカニズム
今回の大量死について、県嶺南振興局などは「青潮」の発生が直接的な要因とみている。汽水湖では重い海水が下層に流れ込み、酸素不足の状態となる。湖底のプランクトンの死骸が微生物に分解される過程で酸素が消費され、硫化水素が発生する。この硫化水素を含む層が風などの影響で水面近くまで上昇すると、水面が青白く変色し、酸素を求める魚が大量死に至る。水月湖周辺では、冬場に硫黄のような強い臭いがするという報告も相次いでおり、湖底に滞留する硫化水素が環境に影響を与えている実態が浮き彫りとなっている。
県と両町による2年間の水質調査
福井県と若狭町、美浜町は、地球温暖化に伴う若狭湾の海面上昇などが海水流入を加速させている可能性があるとして、詳細な調査に乗り出した。調査は三方湖、水月湖、久々子湖の計17か所を中心に実施される。今後2年間をかけて、上層と下層の水温、塩分濃度、酸素濃度、流動変化を測定する。異臭発生時には大気成分の分析も行う方針だ。県嶺南振興局の担当者は「まずは現状を正確に把握し、農業や水産業への影響を見極めたい」と述べている。

生態系と産業への影響を注視
三方五湖の環境変化は、観光地としての景観だけでなく、地域住民の生業にも直結している。東京大学の吉田丈人教授(生態学・陸水学)は、水月湖の淡水と海水の境界深度がかつての5メートル付近から2メートル付近まで上昇していると指摘し、湖全体の塩分濃度が確実に高まっていると分析する。吉田教授は「今後の影響を予測し対策を検討するためにも、青潮や硫化水素の発生がどのような地形や気象条件で起きるか、詳細な調査が必要だ」と強調した。県は年内いっぱい調査を継続し、年度内に結果を公表する方針を掲げている。