1707911601
2024-02-14 01:00:00
アルコール度数8%を超える「ストロング系」飲料の新商品を販売しない方針が相次いで報じられている。
撮影:三ツ村崇志
アサヒビールやサッポロビールが、今後アルコール度数8%以上のいわゆる「ストロング系」飲料を新規販売しない方針であることが話題となっている。
アサヒグループジャパンの広報担当者はBusiness Insider Japanの取材に対し、
「社として発表したわけではないが、アルコール度数8%以上の新商品は今後発売しない方針です。ただ、既存商品の販売は継続することになっています」
と回答。
サッポロビールも、新規販売をしない方針だとする報道を事実とした上で「健康志向の高まりなどの昨今のトレンド踏まえ、RTD商品※ポートフォリオを総合的に検討した結果となります」と理由を答えた。
※RTD商品:Ready to Drinkの略称。ふたを開けてそのまま飲める、缶チューハイなどの商品群を指す。
ストロング系の飲料は低価格でジュースのように飲みやすい上に高いアルコール度数であることから、「すぐに酔える」飲み物として人気に。一方で以前から度々依存性の高さやアルコールの過剰摂取による健康被害への懸念が指摘されていた商品でもある。
なぜここに来て新規販売をしない方針となったのか。
成長に陰り、「高アル」に頼らない戦略へ

浅草にあるアサヒグループの本社。
FiledIMAGE/Shutterstock.com
アサヒビールがストロング系飲料の市場に参入したのは2010年。
2008年にキリンビールがアルコール度数8%の「氷結 ストロング」を、2009年にサントリーが同8%のストロングゼロの販売を開始したことを考えると、アサヒビールの市場参入は「後発」だ。
「刺激爽快系というコンセプトでアルコール度数9%、糖質70%オフの『アサヒ スパークス』という商品の開発を始めました。最初は500万箱程度で規模としては小さかったんですが、その後各社色々な商品を展開していったことで、市場規模が拡大していきました」
アサヒビールでRTDマーケティング部次長の佐藤猛博氏は、ストロング系飲料が市場に広がっていった当時をそう語る。
アサヒビールもその後「アサヒもぎたて」シリーズや、ウイルキンソンブランドなどからもストロング系の商品を拡大。2020年末の段階では、79品目のストロング系飲料を展開していたという。ただこの間、競合他社から強いブランドが現れたこともあり、(ストロング系飲料の売り上げが)大きく成長する展望が描きにくくなっていった側面があった。新商品を販売しないという方針は、ストロング系からの撤退とも取れる。
ただ佐藤氏は、
「我々は2020年から『スマートドリンキング』という宣言をして戦略を考え直していました。これがやっぱり大きかったと思っています。
アルコールの摂取量を気にするようになっていったときに、高アルコール商品に頼るだけではなくより良い、満足できる商品を販売していった方が良いということで、新しい高アル系をやらないという方針を掲げています」
と、アサヒビールのRTD商品のポートフォリオがコロナ禍で変わっていった側面も強いと指摘する。
アサヒビールではその後、高アルコール飲料の「集約」を進めてきた。前述した『アサヒもぎたて』は2022年に販売を終了。ウィルキンソンブランドのストロング系商品も2023年の9月に販売を終了している。アサヒビールが展開するストロング系商品は、2023年12月段階で2品目(同一商品の350ml缶と500ml缶のみ)にまで減少した。
なお、商品の集約を進めてきた中で、経営面への影響は「そこまでなかった」と佐藤氏は語る。

アサヒが販売を継続するストロング系の既存商品「クリアクーラーストロング レモン&ライムサワー」。
撮影:三ツ村崇志
健康意識もストロング系に「一定のニーズある」
アサヒグループジャパンで「責任ある飲酒」にかかわる取り組みを進めるコーポレートコミュニケーション戦略部の縣祐一シニアマネジャーは「決定的だったのが2021年3月に厚生労働省から発表された第2期アルコール健康障害対策基本計画でした」とも語る。
この基本計画では、いわゆるストロング系の商品に対して名指しで「正しい飲み方」の周知や、容器にアルコール度数ではなく「純アルコール量※」の明示を検討するよう指摘がなされている。
※厚生労働省は、生活習慣病のリスクが高まる1日のアルコール摂取量の目安を「男性で40グラム以上」「女性で20グラム以上」と示している。
その後、業界全体で缶に含まれているアルコール量をグラムで表示する動きが拡大。アサヒビールも、2023年中に全商品への表示が完了したという。

アサヒビールの「クリアクーラー ストロング」の成分表示を見ると、純アルコール量がグラム単位で表示されていた。アサヒに限らず、多くの飲料メーカーが純アルコール量の表示を進めている。
撮影:三ツ村崇志
健康面での課題を考慮してストロング系の新商品を販売しない決定をしたとはいえ、既存商品の販売は継続される。佐藤氏は「高アルコール飲料を集約してきた一方で、一定のニーズがあることも確かです。現時点で既存商品の販売を終了することは考えていません」と今後の方針を話した。
なお、サッポロビールからは今後の既存商品の考え方について「既存の該当商品の継続販売有無は、検討中となります」と回答があった。
気になるサントリー、キリンの対応は

サントリーのストロングゼロと、キリンの氷結ストロング。どちらもアルコール度数9%だ。
撮影:三ツ村崇志
アサヒビールの動向を踏まえて気になるのが、サントリーやキリンといった大手の動向だ。
Business Insider Japanでは、サントリー、キリンにメールでのアンケート調査を実施した。ストロング系だけではなくノンアルコールや低アルコール商品群も含めたラインナップを拡充していく方針は、両社ともアサヒビールなどと同様だった。この動きは業界全体の動きと捉えて良いだろう。
では、肝心のストロング系飲料の販売はどうか。
「-196℃ ストロングゼロ」シリーズで知られるサントリーは、2023年の実績で「-196℃ ストロングゼロ」を3051万ケース販売(1ケース250ml×24本換算)している。ただ、前年比で売り上げは97%と微減だ。
RTD商品の中でいわゆるストロング系のラインナップ数も、2020年段階の15フレーバーから現在は9フレーバーと減少傾向にある。
アサヒビールの動きを受けての対応方針の変化などを問うと。「他社の動きなどを受けて新たな対応・検討をしていることはない」とした上で
「社会的な関心事であるアルコール関連問題については、当社としても重要な課題だと受け止めており、酒類を製造・販売する企業の責任として、アルコール関連問題に積極的に取り組んでいます。
サントリーグループでは責任あるマーケティングの実践と適正飲酒の啓発活動”ドリンク・スマート”を大きな柱として積極的に活動を推進してきており、今後も継続強化していきます」
と回答があった。
キリンHDも氷結シリーズをはじめ、ストロング系の商品を現在10品目展開している。なお、個別商品の売上推移については基本的に公表していないという。
アサヒビールの動きを受けての対応については具体的な回答はなかったが、適正飲酒に関して
「当社では、『酒類メーカーとしての責任』を経営の根幹に据えており、ノンアルコール・低アルコール販売の拡大に対して目標値を作成・開示をし、達成に向けて取り組むと共に、継続して“スロードリンク”の考え方である、飲む『量』ではなく、流れる『時』に心が満たされる提案を強化し、適正な飲酒を啓発しながら適量を飲んでいただくことを啓発してまいります。さらに今年は、適正飲酒に関するセミナーを常設し、より多くの方に適正飲酒を啓発してまいりたいと考えております」
と回答があった。
適正飲酒に対する啓発活動については全社業界の課題として継続的に取り組んでいくとしている。
#相次ぐストロング系の新規販売終了は撤退か戦略かサントリーキリンの対応は #Business #Insider #Japan
