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2024-03-20 23:00:00
3月15日、戦略的パートナーシップの検討に向けた記者会見に立つ日産、ホンダの経営トップ。左から日産の内田誠社長、ホンダの三部敏宏社長。
撮影:三ツ村崇志
まだ駆け出しの自動車業界の記者だった頃、「金曜の午後は空けておけ」と、古株の先輩から教えてもらった。
なぜなら、もしその時間帯に重大な情報が発表されても、株式市場が閉まるまでの時間が短く、翌日は東京証券取引所が動かない週末に入るために、株価への影響は最小限に抑えられるからだ。
今回、日産とホンダのトップが揃い踏みで会見をするというニュースが飛びこんだのも、まさに金曜の出来事だった。
既報の記事にあるとおり、今回の発表では事実上、「日産とホンダが提携に向かって歩み出す」宣言をした。当然、現段階で言えることは限られており、ホンダの三部敏宏社長と日産の内田誠社長が並んで登壇した割には、あっさりとした内容ではあった。が、その背景にあるものの熱量の高さは、推して知るべしだ。
なぜ今、あえて日産とホンダの2トップが会見したのか

日産の軽EV「Sakura」とホンダのEV「honda e(ホンダ イー)」。ホンダ イーは2024年1月をもって生産終了している。
出典:Business Insider Japan/本田技研
集まった記者による再三のツッコミにもかかわらず、二人のトップが明言したのは、「個別の協業内容については、これから両社で協議をして決める」ということだけだった。
ただ記者とのやりとりの中で明かされたことを整理すると、1つの明確な方向性が見えてくる。
100年に一度と言われる自動車産業の変革期において、すべてを自前で開発する意義は薄れており、特に電動化と知能化の領域については、技術開発をすべて個社で行うことが難しい —— そう考えていることは、筆者の目には明らかに見えた。
実際、この領域はコストを低減する上でスケールメリットが重要になるため、電動化・知能化分野での協業を軸にする可能性は高いはずだ。
3月15日の会見に先駆けて、2024年1月中旬にはすでに両社に共通する課題の認識があり、提携による効果が出るだろうと考えるまでに至ったと、現地では説明している。
これ以上はNDAを結ばないと深い議論はできない段階になったため、今回の発表につながった。
「スピード感が重要な時代なので、とにかく、できることからやっていくつもりです。なかでも、知能化、eアクスルの分野での連携がしやすいと感じています」と三部社長が発言すると、「両社とも技術ドリブンなところがあって、似ている部分も多いと感じています。過去にルノーとも一緒にやってきた歴史があり、同じ目的があれば、企業文化の違いは乗り越えられると考えています」と内田社長が応じるといった具合だ。

撮影:三ツ村崇志
自動車業界に身を置くものとして興味深かったのは、「過去の自動車ビジネスでの成功パターンを繰り返すだけでは、企業の成長につながっていない」とホンダのトップである三部社長が認識しているということだ。変化の激しいビジネス環境下において、さまざまな打ち手を繰り出して、検証していかなければ勝てない時代なのだ。
しかも、新興メーカーが続々と台頭しており、彼らの変化の速度はとても速く、強力だ。ホンダや日産のような大企業であっても、のんびりと構えている余裕はない。
「これまで内燃機関を中心とした緻密さを武器にしてきたが、急激な変化に対しては、従来の武器では戦えません。ホンダは2030年にトップランナーでいたいとの意思のもと、今回の検討に取り組むつもりです」と、三部社長は意気込む。
確かに、2030年に生き残っていられるか?と言う観点で語るなら、開発期間を含めると、「動くなら今」という判断はもっともだ。
「コロナ禍が収束したら、再び、業績が伸びるだろうと考えていましたが、そんなことはありませんでした。その背景にあるのは、新興メーカーの躍進です。グローバルでの競争にさらされる中で、このスピードに乗れるか?競争力があるか?が重要になっています」と、日産を率いる内田社長も変化のスピードが加速している危機感をにじませる。
日産とホンダ、実は「部品メーカー」では協調体制進んでいた
会見を通じて、両社の意気込みは理解できたが、2つの異なる背景を持つ大企業が共に動き出すには、相応のフリクション(摩擦)が生じることは想像にかたくない。ただ幸いにも、両社に部品を供給する体制は、実はひと足先に一枚岩になりつつある。
具体的には、主に日産に向けて部品を供給する「日立オートモーティブシステムズ」とホンダ系の部品メーカーである「ケーヒン」、「ショーワ」、「日信工業」が、2021年1月の段階で「日立Astemo」として経営統合を済ませているのだ。産業革新投資機構(JIC)傘下のファンドが2割出資したほか、日立製作所が40%、ホンダが40%の割合で株式を有して、中立的な体制で部品供給ができる状況になっている。
その技術レベルにも期待してよいだろう。2023年のJMS(Japan Mobility Show、旧東京モーターショー)開催の目前に、筆者は旧ショーワのテストコースで日立Astemoの技術を満載したテスト車を試している。三部社長と内田社長が重視する電動化と知能化については、世界基準を目指して開発を進めている印象だ。
具体的な例を挙げると、旧日立製作所が得意とするコネクテッド技術と電動モビリティの制御技術、そして旧日立製作所と旧ショーワの双方が持つ「アクチュエーター※」制御技術をうまく組み合わせることで、クルマの挙動を自在に操れるステア・バイ・ワイヤーの技術を提案する、といった具合だ。
※アクチュエーター:電気や空気などを用いて機械的な動きを生み出す装置のこと。サスペンションや操舵といったクルマの動きに重要な部品を動かすための油圧系や電気系などを指す。
他にも、360度カメラをはじめとするセンサーを統合する技術を利用して、自動運転につながる最新ADAS(先進運転システム)を開発するなど、部品メーカーを統合したことで実現できたソリューションは枚挙にいとまがない。
日立Astemoでは、次世代モビリティに欠かせない要素とされている「CASE(コネクテッド、自動化、サービス、電動化の頭文字から次世代モビリティに必要な要素の略称)」についてはもちろん、SDV(=ソフトウェア・デファインド・ビークル)なる次世代モビリティのための設計思想を実現するにも、重要な要素技術を保有している。
経営トップが問う「2030年に生き残れるのか」の重み

日産の内田誠社長。
撮影:三ツ村崇志
三部社長と内田社長という二人の経営トップの抑制的な言葉の端々に見え隠れするのは、顧客の望み=Whatに向き合う開発の重要性だ。「世界初」や「先代比」と、自動車の性能をみがく“スペック重視”の時代から、Whatをとらえたユーザー体験を重視した上でのサービス開発がますます重要になっている。
ただ、それらを実現するための手法=Howについては、今回のNDAの締結を機に議論した上で、ベストなやり方を見極めていくということなのだろう。
重厚長大な日産に対して、軽快なホンダというイメージ、つまり互いの企業のブランドイメージの独立性は協業後も保てるのか?という質問に対しても、両社のトップの回答は明快だった。
「スケールメリットが出る部分では手を組んでいくが、日産らしさ、ホンダらしさの追求の手は緩めない」と、内田社長は答えている。
2030年の段階でも「生き残れるか?」という三部社長の問いに応えるのは、両社の次の世代を担う経営陣かもしれない。しかし、6年後に振り返ったとき、この日の記者会見が両社の歴史に刻まれるのは間違いないだろう。
#日産とホンダ提携は実現するか協調体制は日立系部品メーカーで先行 #Business #Insider #Japan
