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2025-02-20 02:00:00
内閣府は2月17日、2024年第4四半期(10〜12月)の国内総生産(GDP)を発表した。すでに報道各社が伝えているように、物価変動の影響を除いた実質値は前期比0.7%増、年率換算で2.8%増だった。
2024年通年の実質成長率は前年比0.1%と、かろうじて4年連続のプラス成長を維持した【図表1】。

内訳を見ると、今四半期のプラス成長をポジティブに受け止めるわけにはいかない。
実質成長率に対する寄与度は、純輸出(輸出から輸入を差し引いたもの)が0.7%ポイント、GDPの過半を占める個人消費(民間最終消費支出)が0.1%ポイント、設備投資も0.1%ポイント。したがって、成長をけん引したのはほぼ外需だった。
その好調な外需についても、内訳をよく見ておく必要がある。
まず、プラス成長に大きく寄与した純輸出については、輸出の伸び(前期比1.1%増)以上に輸入の減少が効いたことを無視できない。
第4四半期の輸入は前期比2.1%減と、3期ぶりのマイナスを記録した。秋(9〜11月)は統計開始以来の高温となり、平年に比べて暖房需要が抑制された結果、原油や天然ガスなど鉱物性燃料の輸入が減少した。
個人消費に代表される冴えない内需が輸入減につながった面もあるだろう。
そのように際立った輸入の減少が見られた一方で、輸出が前期比1.1%増と3期連続で増加し、実質GDPのプラス成長に寄与したことも事実だ。
輸出を財とサービスの内訳で見ると、前者は0.1%増とあまり動きがないのに対し、後者は4.1%増と大幅に伸びている。言うまでもなく、訪日外国人観光客(インバウンド)の需要増(旅行サービスの輸出と見なされる)がけん引した結果だ【図表2】。

実質GDPの構成項目のうち個人消費から差し引かれる「非居住者家計による国内での直接購入」はインバウンド需要の動向を示す数字として注目されるが、2024年第4四半期は前期比4.3%増と大きな伸びを示した。
すでに触れたように個人消費が前期比0.1%増と低迷する中で、このインバウンドによる消費の伸びは非常に際立つ。
「国内総所得」に注目すべき理由
前節では、外需の好調により2024年10〜12月も3四半期連続となる実質成長率のプラスが実現し、2024年通年でも4年連続のプラス成長を維持したことを確認した。
しかし、絶対額で見た光景は若干、いや相当異なる。
2024年通年の実質GDPは557.4兆円で、パンデミック前の2019年に計上した552.5兆円と大差ない。言ってしまえば、ほぼ成長していない。
さらに、実質国内総所得(詳細は後述)を見ると、2019年の550.5兆円に対し、2024年は549.7兆円と驚くべきことに減っている。
報道各社の記事タイトルでは、「伸び率拡大」「実質4年連続プラス」といったポジティブな論調が目立つものの、正しい数字を正しく解釈して実態を見誤ることのないようにしたい。
例えば、ロシアによるウクライナ侵攻直後の2022年3月以降、日本は通貨安と資源価格高騰のダブルパンチに見舞われ、海外への所得流出に苦慮してきたが、そうした国の根幹を揺るがしかねない深刻な問題の存在も、実質GDPを見ているだけでは捕捉できない。
そこで注目せねばならないのが、上で触れた実質国内総所得(GDI)だ。
字面通り、実質GDP(Gross Domestic Product)は生産面から、実質GDI(Gross Domestic Income)は所得面から、一国の経済活動を捕捉する指標だ。
実質GDPに交易利得・損失(交易条件の変化による実質所得の増加=海外からの流入、もしくは減少=海外への流出)を加えると実質GDIになる。
生産面から経済の数量変化を捉える実質GDPでは、為替や資源価格など輸出入価格の変動に由来する購買力の変化の影響を考慮することができない。
しかし、粘着的に繰り返される円安が輸入価格の上昇を焚きつけ、家計や企業の購買力を奪い、それが日本の政治経済にとってますます重要な意味を持つようになる中で、実質GDIに注目しない理由は見当たらない。
先述のように円安と資源価格高騰に見舞われた2022年は15.6兆円、2024年も7.7兆円と大規模な交易損失(つまり国内所得の海外流出)を計上しており、それを差し引いた分だけ実質GDIは実質GDPに劣後している【図表3】。

なお、「国内」における生産や所得から経済活動を捕捉する実質GDPや実質GDIではなく、「国民」が得た所得として日本企業の海外支店などの所得まで含める実質国民総所得(GNI)に注目すべきとの見方もある。
日本が海外で獲得する所得(国際収支における第一次所得収支の黒字に相当)は年々拡大しており、2024年は前年から4.7兆円積み増して40.2兆円を計上。その数字から容易に想像されるように、実質GNIは実質GDPをはるかに上回る水準で推移する。先の【図表3】でもそうした動きを確認できる。
しかし、詳細な論理は過去の寄稿に譲るが、第一次所得収支黒字は実態として「国内に戻ってこない」再投資に回される可能性の高い所得であり、その点を踏まえると、実質GNIよりは実質GDPや実質GDIの方が日本経済の実態をよく表していると筆者は考える。
名目ベースの指標に惑わされてはならない
さて、ここまで触れたGDP統計の中で、家計の景気実感に最も近そうなのは実質GDIだと筆者は考えるが、契機実感との近さだけに絞り込んで考えるなら、(GDP統計の一部として示される)「実質雇用者報酬」を見るのが適切だろう。
国全体として個人事業主を除く就業者に配分された賃金や賞与を示す指標だが、企業が負担する社会保険料(厚生年金や健康保険、雇用保険など)も含まれるため、家計の受け取る報酬はこれより少ない。
下の【図表4】を見ると分かるように、足元では円安と輸入物価の上昇が実質雇用者報酬の伸びを妨げ、結果として実質個人消費を抑制する形になっており、その動きは実質GDIの低迷と合致する。

あらためて、本稿で解説したような実情を踏まえれば、堅調な伸びを示す名目ベースの数字を見ているだけでは、経済の実態を把握できないことは明らかだ。
※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。
#日本の実質GDP4年連続プラス成長と安堵する人たちが見落としているもう一つの指標 #Business #Insider #Japan
