千葉県市川市の田中甲市長が、行徳モスクによる公園での集団礼拝を認めなかった判断の根拠として、隣接地の住民が転居したとの誤った説明をしていたことが判明した。毎日新聞の取材に対し、元住人や不動産業者が事実を否定し、市長は発言の誤りを認めた。
公園での集団礼拝を認めなかった市長の判断
市川市は2026年5月、市内の行徳モスク側がイスラム教の祝祭に合わせて計画した市立公園での集団礼拝を不許可とした。市は以前、公園利用を許可していたが、今回は「公衆の公園の利用に支障を及ぼさないとは言い切れない」と判断を変更した。毎日新聞によると、この決定を巡り、田中甲市長は5月29日の定例記者会見で、モスクに隣接する空き地について言及した。田中氏は、かつてこの地にあった家の住人が「イスラム教徒の皆さん方が出入りする場所の隣に生活することが気持ちの上で難しいということで、撤去された」と述べ、この地元の意見が集団礼拝を認めない根拠の一つであると説明した。

元住人が否定した転居の理由
しかし、この説明は事実と異なっていた。毎日新聞の取材に対し、モスクに隣接する3階建ての家に住んでいた男性は、田中氏が主張するような精神的な理由による転居を否定した。男性によると、家が老朽化した上に大きすぎて維持が困難だったことから、モスク側から売買の申し出を受けたという。男性は「願ったりかなったり」で5年前に売却したと語り、田中氏の発言に対して「事実と乖離している気がする」と困惑を示した。この住民の転居理由は、市長が公の場で説明した経緯とは根本的に異なるものである。
不動産業者の証言と市長の対応
田中氏が「市内の不動産業者から聞いた」としていた情報についても、事実関係の食い違いが明らかになった。毎日新聞が当該の業者を取材したところ、業者は「モスクがあることで近隣の土地が売れないという話はした」と認めたものの、その土地はモスクに隣接する物件とは別の場所であったと証言した。これを受け、田中氏は10月6日にメールで回答し、発言の誤りを認めた。市長は「伺った話は、モスクに隣接する土地ではなく、近隣の土地について『モスクがあることで土地が売れない』という趣旨のものだった」とし、「両者は別の話だった」と訂正した。
公園利用を巡る論争と今後の見通し
田中氏は発言を訂正した一方で、「モスク周辺の住民にさまざまな声があるという認識に変わりはない」と強調した。また、7月17日の定例記者会見でも、元住人の転居に触れつつ「公園で礼拝する姿を、住民の方々はどのように思っているかというのを、私の中で判断した上で結論を出した」と述べていた。今回の事実誤認について、はてなブックマーク等では、判断の根拠が崩れたことに対する批判や、元住人への影響を懸念する声が上がっている。市側が公園での集団礼拝を認めなかった判断自体の妥当性について、今後どのような検証が行われるのかが注目される。