岩手県北上市の温泉施設「瀬美温泉」で起きたクマによる従業員襲撃事件をめぐり、文藝春秋や各メディアの報道から詳細が明らかになった。司法解剖の結果、被害に遭った男性従業員の死因は出血性ショックと判明し、現場周辺では大規模な捜索の末にハンターによる発砲でクマが駆除された。
司法解剖で判明した死因と現場の状況
文春オンラインなどの報道によると、岩手県北上市の瀬美温泉で発生したクマによる襲撃事件で、亡くなった男性従業員(60)の遺体は司法解剖の結果、死因が「出血性ショック」と特定された。発見時の状況について、文春オンラインでは遺体の頭部が全体を白い包帯で覆われており、遺族の慟哭が部屋に響いたと伝えている。また、プレジデントオンラインの報道では、被害者が50メートルも引きずられていたというクマの執着心の強さや、上空を旋回するトンビが発見の手がかりになったことが示されている。

元プロレスレフェリーという数奇な経歴
亡くなった男性従業員は、かつて全日本女子プロレスなどで活躍した名物レフェリーの「ささやん」ことSさんだった。温厚な人柄と公正な判定で知られ、2015年からはプロレス団体「ゼロワン」の運営会社で副社長を務めた経歴を持つ。プレジデントオンラインや文春オンラインによると、Sさんは2025年2月にレフェリーを完全引退し、家族と過ごす時間を増やすために旧知の間柄であった瀬美温泉代表取締役の岩本和裕の誘いを受けて、同年3月から同施設で住み込みとして働き始めていたという。
100人規模の捜索隊とハンターによる発砲の一部始終
事件発覚後の10月17日午前8時、警察、消防、猟友会など約100人規模による捜索が開始された。プレジデントオンラインの報道によると、北上市猟友会の会長である鶴山博らが後方支援に回る中、ドローンによる熱源確認や轟音玉を用いた警戒が行われた。その後、対岸の雑木林に入った20代のハンターが、距離10メートル未満でヤブから立ち上がったクマと遭遇。頭部を狙って発砲し、他のハンター2人も続いたことで計3発の銃声が響き、クマが駆除された。

遺留品に残された娘の給食費の領収書と残された悲しみ
Yahoo!ニュースなどの報道では、現場取材に基づく経営者の証言や現地の状況が詳報されている。瀬美温泉の代表取締役である岩本和裕は、自身がSさんを誘わなければこのような事態にはならなかったと悔恨の念を語っている。また、Sさんの遺留品を確認した際、ほぼ空だった財布の中に娘の給食費の領収書が残されていたことが明かされた。観光業である同施設は大きなイメージダウンと営業上の打撃を受けながらも、新たな安全対策を施して再出発を図っており、事件の真相や背景にある教訓についての検証が続けられている。