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2026-03-11 02:35:00
大企業・理系人材の新卒採用の現場が今、静かに変わり始めている。
3月10日、パナソニックグループは、2027年度の大学・大学院技術系新卒採用から「学校推薦制度」を廃止し、事務系と同様にすべての応募を自由応募化すると発表した。
これに先立ち、3月2日に2027年度の採用計画を発表したジョブ型先進企業の日立製作所や、新卒一括採用を取りやめた富士通でも、2027年卒採用から学校推薦制度を廃止し、完全のジョブ型に移行する方針を示している。
他業界では、トヨタ自動車が2022年春採用から学校推薦枠を廃止している。大手企業の間で、大学と連携した伝統的な採用手法の転換が少しずつ進んでいる格好だ。
パナに日立、なぜ大手は学校推薦を廃止するのか
理系人材、特に電機系で専門性の高い学生を安定的に確保する必要のある技術者採用では、「学校推薦」は長年続く一般的な採用手法だった。企業側から見れば、「大学と長期的なコミュニケーションにより、学生や企業のニーズに合致した人材の確保ができた」(パナソニックHD広報)ことが、学校推薦のメリットだ。
今回の制度変更について、パナソニックは「他社の状況をふまえて、学生が自らキャリアをつくっていく環境を提供するため」と理由を説明する。学校推薦の廃止によって、今までと異なる専門分野・バックグラウンド・文化を持った学生の採用を狙いたいとする。
パナソニックの広報担当者はBusiness Insider Japanの取材に対し、パナソニックでは近年、学校推薦経由での入社者が減少していたと明かした。背景には、2022年以降に職種別の採用が強化されインターンシップを通じたマッチング精度向上の重要性が高まったことがある。また、就活の早期化、ジョブ型雇用の浸透といった環境変化が、学校推薦の廃止を後押しした。

同様の動きは、日立でも起きている。
日立では、2027年春の新卒採用について、全てのジョブを大学、学部、専攻問わず応募できる「自由応募」へと変更。2028年度の採用では、技術系と事務系と二分していた応募コースを統合する方針を示している。
学校推薦枠について尋ねたところ、日立の広報は、ジョブ型人材マネジメント推進の延長として、「2027年度採用計画より、従来一部の技術系ジョブで実施していた学校推薦による採用についても見直し、自由応募制度へ一本化しました」と廃止する方針だと回答があった。
日立は、制度変更の背景について、「学生一人ひとりが自身の関心や専門性、希望するキャリアに基づいて職種や事業を選択し、会社とマッチングすることが重要だと考えています」と説明。必要なスキル・経験を明確にした上で納得感のあるマッチングができれば、成長に必要な人材を十分獲得できるという考えだ。
幅広い人材を採用したい意向と、企業と学生とのマッチングを重視する姿勢は、パナソニックと共通している。
「推薦=優秀学生」ではない?

今後、学校推薦枠の廃止はさらに加速していくのか。
大学院生・理系学生の採用支援プラットフォームを運営するアカリクの山田諒代表は、理系人材採用における学校推薦制度は、高度経済成長期に製造業の技術者需要が急増する中で定着した仕組みだと説明する。
「企業側は『社内で活躍しているOBの後輩なら期待できる』という納得感で安定的に技術者を確保でき、大学側は就職率の安定と進路実績のブランド化につながる。双方にメリットがある合理的な仕組みだったため、理系(特に機電系)では長く続いてきました」(アカリク・山田代表)
学校推薦廃止の転換点は2020年。トヨタ自動車が2022年卒の採用で学校推薦を見直すことを表明したことがきっかけだろう。その後、ジョブ型人材マネジメントの浸透が加速する中で、富士通、日立、パナソニックといった大手電機メーカーで今回相次いで見直しを表明した形だ。
一方、旭化成のように「高専生のみの推薦枠」を残す企業もあるなど、多くの企業は制度を継続しており、廃止が直ちに業界全体の絶対的な主流になったとまでは言えない。ただ、山田代表によると、学校推薦を利用して得た内定を辞退する学生が増えたり、就活の早期化によって就活に乗り遅れた学生が推薦枠に流れたりと、実態として「推薦=優秀な学生を獲得できる」という図式は崩れつつあるという。
全枠を自由応募へ一本化するという極端な動きは採用ブランド力のある大手だからこそ取れる「強者の戦略」という側面ではあるものの、必ずしも推薦枠を維持することが合理的ではなくなっているようだ。

また山田代表は、就活マーケットをさらに俯瞰した目線で見ると、日立や富士通、パナソニックのようにデジタルシフトを進めカルチャー変革を推し進めていくような企業では推薦の廃止が進み、逆に「ものづくり現場」が依然として強い三菱電機のような企業では、推薦を維持するという「二極化」が進んでいくのではないかと見る。実際、三菱電機の新卒採用サイトを見ると、技術系採用の学校推薦枠は残り続けている。
一方で、興味深いのは、学校推薦という大枠を廃止する流れがあっても、企業からは研究室単位でのつながりを「むしろ強化したいという声を聞くことも多い」(山田代表)という点だ。結果的に、表向きには学校推薦が廃止されたとしても、特定の研究室とのピンポイントな関係性は維持・強化される可能性があるという。
制度としての学校推薦は見直されつつあるものの、大学と企業の研究室レベルでのネットワークがすぐに消えるわけではない。採用の入り口は自由応募へと広がりながらも、実態としては企業と研究室の関係性が別の形で残り続ける――。理系人材採用は、いままさにそんな過渡期にあるのかもしれない。
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