北海道大学理学研究院の化学部門で、複数の准教授が組織的に孤立させられていた問題について、同大のハラスメント対策室が「組織的なアカデミックハラスメント」と認定した。これを受け、理学研究院の現役教員が毎日新聞に手記を寄せ、大学のガバナンスの欠如と「講座制」の弊害を強く批判している。
北大ハラスメント対策室によるアカハラ認定の経緯
毎日新聞の報道によると、北海道大学ハラスメント対策室は今年7月、理学研究院化学部門の「講座委員会」による教員への対応を組織的なアカデミックハラスメントと認定した。問題の核心は、2020年度に教授が不在となった研究室に残った教員に対し、講座委員会が学生を配属しないなどの内部基準を決定したことにある。この決定により、当該教員は複数年にわたり冷遇を受け、准教授の一人が研究室から別室へ追いやられる事態となった。対策室は、こうした行為が「研究上の権利を侵害している」と判断した。
教員が手記で告発する「追い出し部屋」の実態
この問題を受け、理学研究院の現役教員が手記を公表した。教員は、教員に対して学生を配属せず、組織の中で孤立させる行為を「追い出し部屋のような状態」と表現し、極めて異常であると糾弾している。単なる人間関係のトラブルではなく、教員から教育・研究の機会や役割を奪う行為であり、教育研究の質や安全管理の面でも非常に危険な状況を招くと指摘した。研究者にとって研究の場所を奪うことは、その根幹を奪うことに他ならないと、教員は強い危機感を表明している。
閉鎖的な「講座制」と大学ガバナンスの限界
手記の中で教員は、問題の根本原因として、教授をトップに据えた閉鎖的な「講座制」の弊害を挙げた。これまで大学界では、「大学の自治」を盾に、研究室内部のトラブルに対して大学本部や執行部が介入を避ける傾向があった。しかし、今回のハラスメント対策室による認定は、組織的な問題として大学が介入し是正すべきケースであることを明確にした。教員は、大学の自治を理由に内部の問題を見過ごしてはならないと説き、今回の認定が組織として異常性を認識した重要な一歩であると評価している。
日本の大学全体が問われるアカデミアのあり方
今回の事態は北大固有の問題にとどまらず、日本の大学組織全体が抱える課題であると教員は指摘する。大学との雇用契約に基づき、教員には本来、教育・研究を行う職務が与えられている。しかし、組織的なハラスメントが放置されれば、大学の存在意義そのものが揺らぎかねない。教員は、大学人が模範を示すべきであるとし、アカデミアのあるべき姿を取り戻すためには、大学自体のガバナンスを根本から見直す必要があると訴えている。
今後の対応と組織統治のあり方
組織的なアカハラが認定された今、大学側には実効性のある是正措置が求められている。教員が「組織として是正すべき問題」と強調した通り、今後は大学執行部による関与が不可欠となる。大学の自治を維持しつつ、ハラスメントを許さない組織統治の仕組みがどのように機能していくのか、今回の認定が今後の大学運営にどのような影響を与えるのかが注目される。