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2024-04-10 02:00:00
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が1992年に採択、「COP(Conference of the Parties:気候変動枠組条約締約国会議)」が1995年から毎年開催されるようになって、約30年。もはや気候変動問題が我々の生活や仕事、未来にどれだけの影響を及ぼそうとしているか知らない人はいないだろう。
同時に、解決にあたってはあらゆる国や世代、企業を超えて団結する必要があるが、環境活動家のグレタ・トゥーンベリ氏がスウェーデン議会や選挙権を持つ大人に二酸化炭素の排出削減に向けた行動を起こすことを求めて、登校のストライキを始めたように、その熱量はジェネレーションによって差があるとも言われる。
そこで、環境活動家であり若年層を中心に講演活動を行う露木しいな氏と、1975年に「3M環境方針」を制定した3Mで日本のサステナビリティを担当する永野靖彦氏が、あらゆる世代が気候変動問題に対する共通認識を持って、行動するにはどうすればいいかを話し合った。
(ファシリテーター:Business Insider Japan共同編集長/ブランドディレクター・高阪のぞみ)
※2024年3月8日に開催された「Wellbeing conference ──これからの社会と私たちのウェルビーイング」(Business Insider Japan、MASHING UP共催)のセッションレポートです。
若年層ほど気候変動問題への関心が低い?

「気候変動問題は若い世代ほど関心があり、中高年の世代ほど関心がない」
これは気候変動問題を語る上での“クリシェ”とも言えるが、内閣府の「気候変動に関する世論調査(2020年)」によると、18〜29歳で地球環境問題に関心があると答えた人が20.3%なのに対して、年齢が上がれば上がるほど関心度は上がり、70歳以上では60%を超えている。
このリサーチ結果に対して環境活動家の露木氏は、首をひねる。

露木しいな氏/環境活動家・SHIINA organic Founder。2001年横浜生まれ、中華街育ち。「世界一エコな学校」と言われるインドネシアの「Green School Bali」で高校3年間を過ごし、卒業。COP24 in Poland、COP25 in Spainに参加。肌が弱かった妹のためにオーガニックコスメブランドSHIINA organicを立ち上げる。2019年9月、慶應義塾大学に入学。現在は、全国の小中高学校に環境講演を行うため、休学中。220校3万人以上に話を届けている。
「私は環境活動家として、学生に講演することが多いのですが、正直この結果には驚いています。
肌感覚の話にはなりますが、私が講演を始めたころは『環境活動家』という肩書きを理解している人は少なかったけれど、今では浸透しています。
それに、各学校ではSDGsに関することを探求する授業が必須となっている学校もあり、年々若い層の関心度は高まっているのかなと思っていました」(露木氏)
永野氏が所属する3Mは、1902年にアメリカのミネソタ州で創業。ポスト・イットノートやキッチンスポンジのスコッチ・ブライト製品を筆頭に、約6万種類以上の製品を扱っているグローバルサイエンスカンパニーで、1975年から「3M環境方針」を制定するなどサステナビリティへの取り組みを進めている。
また2018年には「戦略的サステナビリティフレームワーク」を発表。「Science for Circular」(循環型経済に貢献)、「Science for Climate」(気候変動の課題を解決)、「Science for Community」(コミュニティに貢献)の3つの領域において、ゴールと目標を設定し、達成にむけて事業を推進してきた。
そんな3Mでも、毎年科学に対する意識調査を自社で実施しており、その中で気候変動やサステナビリティに関する意識についても調査をしている。
2024年3月に発表した「3M State of Science Insights(ステート・オブ・サイエンス・インサイト)」によると、「気候変動への対応はどの程度重要ですか?」との問いに対し、「とても重要」と回答した日本の若年層(18-34歳)は28%で、55歳以上は47%という結果だった。さらに注目すべき点は「特に意見はない/気にしない」と回答した18-34歳の若年層が13%にのぼり、調査対象の10カ国中で年齢別にみても唯一10%を超えていました。(グローバル平均5.1%)。
スリーエム ジャパンのコーポレートサステナビリティ担当部長として、サステナビリティ活動に従事している永野氏も、露木氏に同調する。

永野靖彦氏/スリーエム ジャパン コーポレートサステナビリティ担当部長。1985年住友スリーエム(現 スリーエム ジャパン)に入社し、スコッチ・ブライト製品事業部 技術部に配属。2010年コンシューマー&オフィス技術部長、コンストラクション及びホームインプルーブメント技術部長、2013年コンシューマー製品技術部 統轄技術部長、2017年相模原事業所長を経験。2020年よりサステナビリティ活動に従事し、2021年より現職。
「我々としても、内閣府の調査と同じような結果が出たことに驚いています。と同時に少し違和感を持っています。今、世界ではグレタ・トゥーンベリさんのような、若い方の環境活動が耳目を集めています。
むしろ若い方のほうが、自分たちの未来をより良いものにするべく、積極的なアクションをしていると感じています」(永野氏)
情報は世代によってアプローチを変えるべき
実際に小中高、そして大学と教育現場で講演している露木氏は「環境問題が私たちの生活や社会に与える影響を知ると、すごく真剣に考えてくれる」と、草の根的な広がりを実感している。
ただ、そのためには露木氏は一方的かつ画一的な形で伝えるのではなく、オーディエンスによって伝え方を変えていくことがポイントだと考える。
「小学校の子どもたちは『気候変動が自分にどう影響を与えるか』というよりも、『自分以外の友達や動物、植物にどんな影響を与えるか』という視点で伝えると、とてもしっかり受け止めてくれます。
例えば、海洋プラスチックゴミの問題で数多くの生物が傷つけられていますが、「クジラがプラスチックを餌と間違って食べて、その結果死んでしまうんだよ」と伝えると、本当にショックな顔をして聞き入ってくれます。中には、泣いちゃう子もいるくらいなんですよ。
一方、高校生や大学生になると『自分にとってどんな影響があるのか』が、響く印象があります。人間は1週間でクレジットカード1枚分に相当するマイクロプラスチックを食べているという研究結果があるそうですが、そういった自分自身との関連が強い情報ほど真剣に聞いてくれます」(露木氏)
露木氏の言葉に対して、永野氏は企業が率先してサステナビリティ・レポートを発信しているのにも関わらず、若い世代に情報が届きにくい状況をこう分析する。
「特にグローバル企業はサステナビリティ・レポートを発信していますが、このレポートは『TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)』の提言に沿ったものです。
そのため、どうしても自社の環境にかかわる取り組みが、財務的にどう影響を与えているかを伝えるレポートになりますし、自社のステークホルダーに向けての発信になりがちです。
そういう意味では露木さんがお話されたように、理解のハードルを高くしすぎていることは、見直すべきなのかもしれませんね」(永野氏)
3Mではサステナビリティ・レポート以外でも、イベントやニュースリリースを発信している。永野氏は「まだ、これから(より良い方法を)考えている」としながら、企業が多くの人に自社のサステナブルな活動を知ってもらうには、複数のステークホルダーの組み合わせや連携までをも念頭に置く必要があると提言する。
「今、企業はいろんなスタンスからアプローチしています。例えば、気候変動問題を自社の活動にとどめるのではなく、地球環境全体の生態系も含めた課題であることを認識して、真正面から取り組む企業があります。
一方で、ビジネスチャンスやビジネスリスクといった視点に大きく重きを置いて気候変動問題に取り組む企業もいる。そうなると必然的に、自社と関係値の高いステークホルダーに向けた情報発信となるので、結果として不特定多数の人には届きません。
自社をより多くの方に理解していただくには、企業はより広い視点に立って発信をする必要があります」(永野氏)
若年層には「シンプルさ」と「リアリティ」のある情報が届く

イベント会場では、100%植物由来&リサイクル素材を使用した食器洗い用スポンジ「スコッチ・ブライト グリーナークリーン セルローススポンジたわし」が展示され、サンプルも配られた
若年層も含めた、より多くの世代に向けて受け入れられる情報を発信するには、どんな方法が取れるか。これまで若年層に向けて講演活動を行ってきた露木氏は、その経験も踏まえて「シンプルさ」と「リアリティ」がポイントだと説く。
「政府や企業、メディアの情報をしっかり読み込んでいる若い方はそんなにいないのかなと思います。
α世代やZ世代はショート動画などの情報摂取に慣れているので、なるべくシンプルに分かりやすくするのはポイントの一つだと思います。
もう一つは『リアリティ』です。よく、企業は環境問題に対しての取り組みや実現できている成果を発信します。でも、逆にできていないことこそ、気になるものです。
私もタンブラーを忘れてしまって、熱中症を避けるためにペットボトルの水を買うときもあります。それと同様に“不完全である”点を、透明性を持って開示すれば共感が生まれると考えています」(露木氏)
ビジネスではなく、気候変動問題を「軸」にする
最後に、露木氏は企業に対するアクティビズムではなく、企業や消費者とともに現状を改善させる環境活動家としてできることを、言葉で残してくれた。

「気候変動問題を解決するには、消費者ができることと、企業ができることがあります。例えば、3Mから環境に配慮されたアイテムが発売されても、実際に消費者に手を取ってもらわなければ、企業としてはサステナブルな社会に向けた活動につながらない。
私は企業と消費者が手を取り合うことでようやく環境問題が解決できると考えているので、その橋渡しにもなれるようにこれからも行動していきます」(露木氏)
スリーエムジャパングループのサステナビリティの取り組みについてはこちら
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