ロシア・シベリア連邦管区のペスト対策研究所で28歳の女性職員が死亡した事案をめぐり、マルコ・ルビオ米国務長官は2026年10月6日、ロシアに対してさらなる情報の共有を求めた。米国務省やWHOなどが状況を注視する中、死因や感染リスクに関するロシア当局の見解と外部の懸念の間で情報が交錯している。
死因を巡るロシア当局の発表と未確認情報の浮上
亡くなった女性職員の死因や状況については、様々な臆測や情報が飛び交っている。bbc.comの報道によると、ロスポトレブナゾールは女性が「原因不明の肺炎」で死亡したと発表しており、亡くなった女性と接触した人は全員、肺ペストの検査で陰性だったとしている。ロシア・メディアは2日に、研究所の職員が死亡し、約200人が経過観察下に置かれたと伝えた。現地報道では、亡くなった女性研究員は「ダリヤ・シピロワ」という名で、亡くなる数日前にモンゴルとの国境にあるブリヤート共和国を訪れていたという。さらに未確認の情報として、病原体が入った試験管を割った可能性や、野生のげっ歯類の間でペストが自然発生している地域で野外調査を実施した後に体調を崩した可能性が指摘されている。一方、ロスポトレブナゾールは6日、オンラインで流布している特別な疫病対策が実施されたとする文書について、公式情報源からのものではなく事実ではないとテレグラム上で否定した。
CNNが伝える世界保健機関(WHO)の評価と肺ペストの危険性
世界保健機関(WHO)は5日、ロシア保健当局と連絡を取り、何が起きたのかやどのような検査が行われているのかを確認していると発表した。CNN.co.jpの報道によると、WHOの報道官は入手可能な非公式情報に基づき「一般市民への公衆衛生上のリスクは低いと思われる」と述べており、より詳細な情報が得られ次第リスク評価を更新する方針を示している。また、bbc.comによると、WHOのクリスチャン・リンドマイヤー報道官は6日、ロシア側から「イルクーツク市では、この危険な病気の症例は記録されていない」との報告を受けていると声明で明らかにした。患者の接触者は全員特定されて健康状態が監視されているものの、現時点で発症者は確認されていないという。CNN.co.jpの報道では、ペスト菌が引き起こす肺ペストは、細菌感染症の中で唯一人から人へ直接感染するまれで致死性の高い肺感染症であり、科学者たちからペスト感染症の中で最も危険な形態と考えられていることが詳しく解説されている。
専門家が指摘する感染拡大の懸念と今後の見通し
英レディング大学のサイモン・クラーク准教授(細胞微生物学)は、BBCラジオの番組で、ペスト菌による肺炎は治療せずに放置するとほぼ確実に死に至るが、抗生物質で克服できると説明した。同氏は、肺ペストが人から人へ感染する可能性があるからこそ心配されていると述べつつも、集団感染が発生しても新型コロナウイルスのようなロックダウンにはならないとの見解を示している。イルクーツクにシベリア・極東ペスト対策研究所が設けられたのは約100年前であり、周辺地域でペストの集団感染が発生したことが背景にある。ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、ロスポトレブナゾールの調査結果に言及しつつ、アメリカからの支援申し出に対して「相互扶助の申し出があるのは良いことだ」と述べており、当局間でのさらなる調査と情報確認が続けられている。