ドナルド・トランプ米大統領は、2009年にテキサス州のフォートフッド基地で13人を殺害したニダル・マリク・ハサン元陸軍少佐について、米陸軍の銃殺隊による死刑執行を承認したと、ペンタゴンが発表した。
銃殺隊による死刑執行の承認と規定
死刑執行の日時や場所はまだ発表されていない。しかし、陸軍の規定では、大統領の承認から150日以内、かつ60日以上空けて執行が行われることになっている。さらに陸軍規則では、少なくとも2つのメディアの報道機関が立会人として選ばれるべきであると定めている。
2009年のフォートフッド銃撃事件
事件が起きたのは2009年11月5日である。当時陸軍の精神科医だったハサン元少佐は、1988年に入隊し、事件発生日まで陸軍で勤務していた。事件当日は、テキサス州のフォートフッド基地内にある兵士適性評価センターに押し入り、イラクやアフガニスタンへの展開を控えて医療検診を受けている兵士らに向けて、レーザー照準器付きの拳銃で銃撃を始めた。

銃撃により12人の兵士と1人の民間人が死亡し、ほかに32人が負傷した。犯行時にアラビア語で「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫んだハサンは、出動した民間警察官に撃たれて重傷を負い、その場で拘束された。その後、2010年4月9日未明にサンアントニオのブルック陸軍医療センターからテキサス州ベルトンのベル郡刑務所へと移送されている。
事件当時、ハサンは米軍のイラクおよびアフガニスタン駐留に強く反対しており、イエメンで米国のドローン攻撃により死亡したアルカイダの宣伝者アンワル・アルアウラキとオンラインで接触していたことが裁判で明らかにされた。公判でハサンは自ら弁護を担当したが、証人を呼ばず証言も行わず、起訴内容を否定する試みもほぼ行わなかった。裁判所の指定弁護人らは、彼が処刑を望んでいるのではないかという懸念を表明していた。
首席ペンタゴン報道官のショーン・パーネルは、「ピート・ヘグセス国防長官が勧告し、ドナルド・J・トランプ大統領が、2009年にフォートフッドで丸腰の米兵に発砲したジハード主義者であり、テロリストとして有罪判決を受けたニダル・マリク・ハサンの米陸軍銃殺隊による死刑執行を承認した」と述べた。
2013年8月、軍法会議の陪審団は、計画的殺人13件と殺人未遂32件などの罪でハサンに死刑判決を下した。彼はその後、カンザス州フォートレブンワースにある米陸軍の刑務所施設に収容されてきた。上訴は2020年と2023年に退けられ、2025年3月には最高裁への上訴許可請願が棄却され、死刑判決が維持されていた。
60年ぶりの軍事死刑
もし今回の死刑が執行されれば、1961年にオーストリアで11歳の少女に対する強姦と殺人未遂の罪で絞首刑に処されたジョン・ベネット二等兵以来、約60年ぶりの米軍による死刑執行となる。デス・ペナルティ・センターによれば、米軍による最後の銃殺刑は1945年11月に執行されたとされている。

死刑囚は現在、カンザス州フォートレブンワースの米陸軍規律兵舎に4人収容されており、ハサンはその一人である。連邦レベルでは、トランプ政権が過去の政権下での事実上のモラトリウムを経て死刑を再開し、2020年から2021年初頭にかけて13人の連邦死刑を執行した実績がある。
さらに、トランプ政権の2月に出された内部文書による「オペレーション・レゾリュート・ジャスティス」と名付けられた計画では、カンザス州の米陸軍規律兵舎から、インディアナ州テラホートにある連邦処刑施設へ死刑囚を移送するため、連邦刑務所局と調整するよう陸軍関係者に指示していた。死刑執行に関する詳細について、ペンタゴンは今後の手続きを進める方針を示している。
ショーン・パーネルはX(旧Twitter)で、「陸軍長官が死刑執行の日時と場所を決定する。ハサンにとっての審判の日がとうとうやって来たのだ」と述べた。

今後の法的手続き
トランプ大統領の承認によって死刑執行に向けた手続きの段階に入ったが、法的障害が完全に消えたわけではない。専門的な法制解説によれば、ハサン側は民間連邦裁判所への人身保護請求などにより、執行を数年間引き延ばす試みを行う可能性がある。
死刑制度に反対する団体である「デス・ペナルティ・アクション」は、トランプの決定に対して「ドナルド・トランプが最も愛しているのは人を殺す権力だ」と非難の声明を発表した。
陸軍長官が今後決定することになっている執行日時と場所の発表に向けて、国内外の司法関係者や人権団体からの注目が集まっている。