『Psolus fabricii』ナマコの切断された体は長期間生存し成長する
ニューファンドランド・メモリアル大学の研究チームは、海に生息するナマコの一種『Psolus fabricii』が、切断された体の一部を切り離された後も数年にわたり生存し、成長を続けることを突き止めました。この発見は『Science Advances』誌に掲載され、生物の組織がいかにして個体としての生死の境界を超えて存続し得るのかという新たな問いを投げかけています。 驚異的な「ゾンビ」組織の生存能力 通常、多細胞生物の四肢が体から切断されると、その組織は急速に壊死し腐敗します。しかし、ナマコの一種である『Psolus fabricii』の切り離された断片は、驚くべき回復力を見せます。研究チームが海水タンク内で観察したところ、切断された組織はわずか3日で傷口を閉じ、6日後には筋肉細胞が退化する一方で結合組織が成長するという劇的な再構成を遂げました。 この現象について、研究の主導者であるサラ・ジョブソン氏は以下のように述べています。 「これまでに見たこともないような現象です。まるで尻尾が切り離された後に、それ自体が野生で生き延びて動き回っているかのようです。」サラ・ジョブソン氏(ニューファンドランド・メモリアル大学、マーシエ研究室) 研究チームは、この切り離された組織を「LiPfe(生きている不死のP. fabricii外植片)」と名付けました。これらの組織は、元の個体から切り離されているにもかかわらず、外部から栄養を吸収し、免疫系を維持して微生物の侵入を防ぎながら、数年間にわたって生存し続けます。 生物学的な「死」の再定義を迫る研究 この研究が科学界で注目を集めているのは、従来の細胞培養の常識を覆した点にあります。これまでの「不死化細胞」の研究は、多くの場合、厳密に管理された無菌環境や栄養溶液(培地)内で行われてきました。しかし、今回のナマコの組織は、特別な処理を施していない自然の海水中で生存しています。 研究に携わったジョブソン氏は、この組織の特異な状態を「愛着を込めて『小さな研究室のゾンビ』と呼んでいます」と語ります。その理由として、彼らが「生きているのか、死んでいるのか」という定義に当てはまらないグレーゾーンに存在していることを挙げています。 「彼らは生殖もせず、口も消化管もありません。それにもかかわらず、複雑な生物学的構造を維持し、元の個体とは別に、おそらく無期限に存続し続けています。」サラ・ジョブソン氏(ニューファンドランド・メモリアル大学、マーシエ研究室) この発見について、研究チームは論文の中で「生物学的生命と細胞の自律性の境界に挑戦し、組織が『生きている』とはどういうことかという定義の再考を迫るものだ」と指摘しています。 なぜナマコは「不死」に近い能力を持つのか