フランスのソミュール博物館は2026年9月27日、レストアを進めていた「ティーガーI 114号車(愛称:Bretagne)」の自走に成功したと発表しました。1950年代から動かない状態が続いていたこの車両は、クラウドファンディングによる支援を経て、オリジナルエンジンを搭載した世界で唯一の走行可能なティーガーIとして復活を遂げました。
ノルマンディーから現代へ繋がる114号車の歴史
今回自走に成功したティーガーI 114号車は、1944年4月に製造された歴史的価値の高い車両です。ノルマンディー上陸作戦後に走行不能となったところをフランス軍が鹵獲し、その後フランス陸軍によって運用されました。戦後、同博物館に収蔵されて以降は長らく静態保存の状態にありましたが、オリジナルのエンジンやトランスミッションがそのまま維持されているという希少性から、修復プロジェクトの対象に選ばれました。
25万ユーロを集めた市民による修復支援
博物館のチームが目指したのは、単なる展示物ではなく、再び大地を走る戦車の姿でした。2023年末に開始されたクラウドファンディングキャンペーンでは、当初15万ユーロの資金調達を目標としていましたが、最終的には2,300人もの支援者から25万ユーロ以上が集まりました。この潤沢な資金により、砲塔から履帯に至るまで、外装の再塗装を含む車両全体の完全な修復と再稼働が可能となりました。
世界で唯一のオリジナルエンジン駆動
ティーガーIは世界で8両のみが現存していますが、その多くはレプリカや非稼働の状態です。これまで動態保存されていたのは英国のボービントンの戦車博物館が所蔵する1両のみでしたが、この車両はエンジンにティーガーII用のものを搭載しています。そのため、オリジナルエンジンを維持したまま自走を実現したソミュール博物館の114号車は、技術的にも歴史的にも唯一無二の存在となりました。
オーバーホールを経て実現した再稼働の瞬間
修復作業は着実に進められ、2026年4月には変速機のオーバーホールとベンチテストが無事に完了しました。そして同年9月、ついに一般公開の場で力強く走行する姿が披露されました。長年エンジンに火が入ることのなかった歴史的兵器が、当時のままの心臓部で再び動き出したのです。この瞬間を目の当たりにした観客は、どのような感慨を抱いたのでしょうか。
今後の展示と博物館の取り組み
ソミュール博物館の今回の成功は、軍事遺産の保存における大きなマイルストーンとなりました。今後予定されている一般展示では、この114号車は「オリジナルエンジンを搭載した世界で唯一の走行可能なティーガーI」として紹介される見通しです。博物館は、この貴重な車両を末永く維持していくための運用体制を整え、歴史を伝えるための活動を継続していく方針です。