北海道大学理学研究院の化学部門で、複数の准教授が教授会により組織的に孤立させられていた問題で、大学のハラスメント対策室がこれを「組織的なアカデミックハラスメント」と認定した。2022年2月頃に問題が発覚してから約2年5カ月を経て、大学側が長期間にわたる不当な扱いを公式に認めた形だ。
組織的アカデミックハラスメントの認定と背景
北海道大学理学研究院の化学部門において、教授会に相当する「講座委員会」が主導した一連の行為が、大学のハラスメント対策室によって「組織的なアカデミックハラスメント」と認定された。この問題は、退職や異動で教授が不在となった研究室の准教授らを「旧スタッフ」と呼び、他の教員と区別したことに端を発する。2020年度、講座委員会は学生の新規配属を停止し、居室を移動させるなどの内部基準を決定。この決定は本人たちに伏せられたまま実行され、対象となった准教授らは孤立した環境での研究を余儀なくされた。
最長4年間の孤立を強いられた准教授の実態
2024年5月時点で、「旧スタッフ」として扱われていた准教授は4人いた。札幌市北区の北海道大キャンパスでは、学生の配属がなくなった実験室で、准教授がたった一人で研究に取り組む姿が確認されている。学生を配属しない根拠とされた内規については、後に有効ではないことが判明した。最長で4年以上にわたり孤立状態に置かれた教員も存在し、研究活動やキャリア形成に多大な影響が及んだ。この間、声を上げた准教授の中には、大学を去る選択をした者もいる。
「時代錯誤」と批判される閉鎖的な運営
当時の状況について、旧スタッフとされた元准教授は「准教授以下は独立した研究者や教育者としては認めないという時代錯誤な扱いだった」と振り返る。また、教員に通知することなく内部基準が作成されていた点について「当然の結果だ。これが組織的なアカハラと認定されなければ、大学内での組織とは何か」と憤りを隠さない。部門関係者からも、アカハラ認定は当然であるとの評価とともに、大学側からの十分な説明がないことに対する失望の声が漏れている。
謝罪なき認定と放置される現場の教員
北大関係者によると、今年7月にアカハラ認定が下されたものの、講座委員会から旧スタッフに対する謝罪などは行われていないという。2025年4月からは、准教授の独立した研究室運営が認められ、学生指導も再開されることになった。しかし、長期間にわたる組織的な排除に対する大学側の責任の所在や、当時の部門長が主導した内部基準の策定プロセスなど、解明されるべき点は依然として残っている。大学のガバナンスが問われる中、現場の教員への説明責任をどう果たすのかが今後の焦点となる。
研究環境の正常化に向けた今後の課題
長年続いた「旧スタッフ」という呼称や、それを根拠とした学生配属の制限は、ようやく撤廃の途にある。しかし、失われた研究期間や孤立によって傷ついた教員たちの信頼回復には至っていない。大学という組織が、特定の教員を意図的に排除する仕組みをいかにして許容し、またそれを是正できなかったのか。このアカハラ認定を機に、北海道大学は再発防止に向けた具体的な制度改革と、被害を受けた教員に対する誠実な対応を求められている。今後の対応次第では、大学の教育・研究環境の公正さが改めて厳しく問われることになるだろう。