アメリカのドナルド・トランプ大統領は2026年7月、カナダ産ワインやセメントなど約200億ドル相当の輸入商品に対し、50%の追加関税を発動すると発表した。これに対しマーク・カーニー首相は、米側の措置を非難しつつも米国側と協議の加速で合意したことを明らかにし、両国の貿易摩擦は新たな局面を迎えている。
1930年関税法を持ち出したトランプ政権の50%関税
米国政府は、カナダによる報復措置や米国のアルコール、自動車、乳製品に対する「差別的な扱い」を理由に、新たな関税措置に踏み切った。ホワイトハウスの発表によると、今回の関税は30日後に発効する予定である。
今回の発表で特筆すべきは、トランプ大統領が1930年関税法の第338条を発動した点である。同法は、米国の商業に対して差別的な扱いをする貿易相手国に対し、大統領が最高50%の懲罰的な関税を課すことを認めるものであり、この法律がこの目的で運用されるのは約1世紀の歴史の中で初めてのこととなる。
この関税の対象となるのは、ワイン、セメント、アイスホッケー用具をはじめ、乳製品、スイミングプール、家具、釣り竿、種子、衣料品、かつらなど多岐にわたる。一方で、原油、ガス、重要鉱物、カリウム、そして鉄鋼やアルミなどすでに分野別関税の対象となっている物品は免除されることになった。
争点となった州による米国産アルコールボイコット
米加間の緊張を高める大きな要因となったのが、カナダ各州による米国産アルコールの販売禁止措置である。昨年に米国が自動車や鉄鋼、アルミ、製材品などに関税を課したことへの対抗措置として、アルバータ州とサスカチュワン州を除くすべての州や準州が、米国産ビールやワイン、スピリッツの販売を禁止した。
米国勢局の統計によれば、これらのアルコール規制により、2025年のカナダ向け米国産ワインの輸出額は前年から3億6000万米ドル減少し、スピリッツの輸出額も1億5000万米ドルの落ち込みを記録した。アルコールに関する大統領布告では、カナダの諸州が2025年3月以降他のどの国に対しても同様の禁止措置をとらず、他国を利する一方で米国を不利に扱っていると指摘されている。
この問題について、ブリティッシュコロンビア州のデイビッド・イービー首相は、米国産アルコールを棚に戻すことはあり得ないと強硬な姿勢を示している。
ブリティッシュコロンビア州のデイビッド・イービー首相はCBCを通じ、いじめっ子を勢いづかせる唯一の方法は屈服することであり、明らかにいじめっ子であるトランプ氏を勢いづかせるべきではないと述べた。
一方でマーク・カーニー首相は、店舗における米国産アルコールの扱いを変更するかどうかは個々の州が判断すべき事柄であるとしつつも、そうした変更は全体的な合意の一部としてのみなされるべきだとの見解を示している。
カナダの反応と米国との貿易交渉の行方
トランプ大統領による今回の関税発表を受け、マーク・カーニー首相はトランプ氏と会談を行い、今後数週間にわたって交渉を「強化する」ことで合意したと発表した。カーニー首相は、連邦政府として対応策についてあらゆる選択肢を検討し、各州の首相らとも協議を進める方針を示している。
また、カーニー首相は、カナダが講じた報復措置は米国の自動車関税に単に対応したものであり、国民や労働者、企業を守るための正当な権利行使であると強調した。

カナダのマーク・カーニー首相はアルジャジーラを通じ、今回の貿易摩擦により特米国家庭の負担が増大していると指摘し、カナダは市民の相互利益のために米国との未解決の課題に対処すべく、集中的に関与する準備ができていると述べた。
野党・保守党のピエール・ポワリエヴル党首は、今回の関税を「不当であり間違っている」と批判し、連邦政府と協力して関税阻止のために戦う構えを見せている。また、オンタリオ州のダグ・フォード州首相は、米国の関税が撤廃されない限り、米国側に対して「ドル対ドル、関税対関税」で対抗すべきだと主張している。