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2024-08-22 23:15:00
EV市場の成長鈍化が指摘される一方で、EV電池のリユース・リサイクルが世界的な関心を集めている。
シャッターストック/イリーナ・インシナ
中古EV電池のほとんどがEVごと海外に輸出され、貴重な資源が海外流失している──。
一大産業への成長が期待されるEV電池リユース・リサイクルの行方が注目されている。
日本総合研究所は8月22日、日本におけるEV電池のリユース・リサイクル市場について、中古EV販売などの関連市場を含め、2050年に約8兆円規模に達するとの予測を発表した。
「8兆円という数字は、先日岸田首相が言及した2024年のインバウンド消費の市場規模予測と同程度。かなり大きな市場になると言える」
発表を行った日本総研創発戦略センターのシニアコンサルタント、籾山嵩氏はそう指摘した。
新たな産業創出のチャンス

日本総合研究所がまとめたEV電池のサーキュラーエコノミー市場規模の予測(2025〜2050年)。いずれの市場も2050年にかけて継続的に成長し、市場全体では、2030年に6000億円、2050年には8兆円近くに達すると予測。
出所:日本総合研究所
EV市場の成長鈍化が指摘される一方で、いま世界的な関心を集めているのが中古EVを含め、EV電池のリユース・リサイクル、いわゆるサーキュラーエコノミー(循環経済)市場の成長だ。
今回の予測では、EV電池のサーキュラーエコノミー市場を「中古EV関連市場」「リユースEV電池関連市場」「EV電池リサイクル関連市場」の3つに分類し、全体として2030年時点で約6000億円、2050年には約8兆円に達すると予測した。
このうち、中古EV販売を除く、リユースEV電池関連市場とEV電池リサイクル関連市場に関しては、2030年に合計1200億円規模、2050年には2兆円を上回る規模に成長すると見込んでいる。
注目は、EV電池のサーキュラーエコノミー市場が形成に伴って、新たな産業創出効果が期待される点だ。
「例えば、シェアリングサービスなどの新しいサービスの創出や電池の品質評価技術などの新たな技術の創出、あるいは循環製品のリースといった既存事業の高機能化も進むといったさまざまな波及効果が考えられる」(籾山氏)
8兆円市場を失うかどうか、分岐点に

日本おけるEV電池サーキュラーエコノミー市場形成に立ちはだかる課題。最も深刻なのは、中古EVの輸出という形で中古EV電池が海外に流出している点だという。
出所:日本総合研究所
日本総研が日本で初めて将来予測に関する調査を行った背景の一つには、中古EV電池のほとんどが中古EVに搭載されたまま海外に流出している実態がある。
「2023年には約2万台の中古EVが海外に輸出された。(国内での)EVの販売台数は2020年前後に2万台前後で推移していたことからすると、おそらくかなり高い割合で中古EVが海外に流れている」(籾山氏)

海外への中古EVの輸出台数は年々増加傾向にあり、EV電池もEVに搭載されたまま輸出されている(左図)。2023年はロシアが最大の輸出先だった(右図)が、同年8月にロシアへの輸出禁止措置が拡大され、中古EVも対象に含まれるようになった。
出所:日本総合研究所
このまま中古EVの海外流出に歯止めがかからず、日本にEV電池のサーキュラーエコノミー市場が形成されない場合、将来的にどのような問題が起こるのか。
「レアメタルの確保など資源安全保障の問題が解決されないという課題に加え、8兆円という規模の潜在的な市場が国内から失われるリスクがある。この市場がなくなるかどうかの分岐点に立っている」(籾山氏)
海外では、欧州が規制強化を加速させている。製造から再資源化までのCO2排出量や再生材料使用量の明記などが義務付けられる「電池規制」が2024年8月に施行された。バッテリーパスポートという、バッテリーのトレーサビリティ(追跡可能性)を担保する動きも進んでいる。
EV大国・中国ではすでに、サーキュラーエコノミーの市場が具体的に動き出しているという。
「基本的にはバッテリートレーサビリティがかなり精度の高い状態で担保されている。加えて、バッテリーを特定の事業者に集約するような仕組みも出来上がっている。
中国では、もはや適当に廃棄することができないような強制力を持った政策が実行されており、(サーキュラーエコノミーの)動きがかなり進んでいる印象だ」(籾山氏)
目先の利益より、長期的な経済効果に注力すべき

日本総合研究所 創発戦略センター シニアコンサルタントの籾山嵩氏は「8兆円という規模の潜在的な市場が国内から失われるリスクがある。この市場がなくなるかどうかの分岐点だ」と警鐘を鳴らした。
撮影:湯田陽子
先行する欧州・中国に対し、日本はどうすべきか。
レポートでは、現状ではEV電池の品質や安全性への不安から、製造・供給企業に過度な品質管理コストが発生し、結果的にユーザーの利用コスト増加につながっていると分析している。
この課題を解決するため、日本総研が提唱しているのが「スマートユース」という考え方だ。これは、ユーザーが主体的にEV電池の安全性や品質管理に関与し、適切な利用を行うことで、全体的なコストを削減しつつ、中古EV電池の価値を最大化する取り組みを指す。
そのためには、新車EVの利用段階から、中古EV、リユースEV電池、そして最終的なリサイクルに至るまで、各段階でユーザーを支援するDXサービスの提供が重要だと指摘した。
例えば、新車EV段階では中古販売価格の確保・向上、中古EV段階では電池の品質管理や保証、リユース段階では性能維持・安全性管理、リサイクル段階では再生材料の品質確保などの機能が求められるという。
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