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2025-08-28 05:30:00
2025年7月に創業7周年を迎えたヘラルボニーが、次なる挑戦へ踏み出した。
“ちがい”が活きる組織を探究・実践することを目的に、新たな知の拠点として「HERALBONY ACADEMY(ヘラルボニーアカデミー)」を創設したのだ。
ヘラルボニーはこれまで、障害のある作家とライセンス契約をし、アートを軸にしたプロダクトの展開や企業・ブランドとのコラボレーションを行ってきた。一方、2023年からは体験型DE&Iプログラム(DIVERSESSION PROGRAM)の提供を開始し、これまでに約40団体・2000名以上が受講。このプログラムをさらに深化・洗練させ、「ヘラルボニーアカデミー」として新たなスタートを切った。
ちがいを乗り越えるのは「簡単ではない」けれど……

2025年8月、記念トークイベントとオリジナルカードゲーム型ワークショップの先行体験会が開催された。
「80億人がちがいを面白がれるほうの世界へ。」というビジョンを掲げるヘラルボニーアカデミー。統括責任者の神(じん)紀子さんは、事業立ち上げの歩みをこう振り返る。
「ろう者の菊永(ふみ/コンテンツ開発者)とともに歩き始めたこの道は、決して平坦ではありませんでした。私たちは、互いを知り、理解し合い、時にはぶつかりながら前に進んできました。
その中で感じたのは、ちがいを乗り越えるのは簡単ではない。しかし、ちがいに気づくことはとても面白く、人生を豊かにしてくれるということです。
ヘラルボニーアカデミーでは、一人ひとりが自分らしさを発揮しながら、互いの挑戦を称え合える組織や社会のあり方を追求していきます」(神さん)
ヘラルボニーアカデミーが提供するプログラムは、謎解きゲーム型ワークショップや福祉施設への訪問などを行う「DE&I研修」のほか、対話やアート創作を通じて一人ひとりの“らしさ”を尊重しながら成長し続けるチームをつくる「チームビルディング研修」(2025年秋頃より提供開始予定)、ヘラルボニー独自のカードゲームで“ちがい”を楽しみながらDE&Iへの関心を高める「FUNclusionプログラム」などがある。

さらには大学との共同研究もスタート。アカデミックな視点を取り入れ、プログラムに還元するとともに、将来的には子ども向けの教育事業も見据えているという。
“ちがい”を力にするには、どうすれば?
2025年8月に行われたトークイベントでは、「“ちがい”が力になる組織とは?」をテーマに、ヘラルボニー 代表取締役 Co-CEOの松田崇弥さん、MIMIGURI アートエデュケーターの臼井隆志さん、ブラインドコミュニケーターの石井健介さんがトークを展開。

松田さんは、ろう者の菊永さんがヘラルボニーに入社した際のエピソードを紹介した。
「(菊永さんから)手話通訳者を雇ってくれないか、と相談があったんです。その理由は『環境を整えてもらうことで、自分の実力をきちんと発揮したいから』。なるほどと思い、すぐに手話通訳の募集を始めて無事採用が決まりました。
予想外だったのは、菊永さんたちが手話をつかうのを見て、まわりの社員も手話に興味を持つようになったこと。皆で一緒に勉強を始めて、今ではほとんどのメンバーが手話で簡単な挨拶や自己紹介ができるようになっています。
“知らなかった世界のことを知る”のは純粋に面白いし、学びがあります。コストや時間は多少かかったとしも、ちがいを面白がれるマインドを持って中期的に取り組むことが大事なのではないでしょうか」(松田さん)
一方、視覚障害のある石井さんはブラインドコミュニケーターとして活動する傍ら、体験型DE&Iプログラムの講師として2025年2月からヘラルボニーに参画。「見える」「見えない」のちがいを乗り越えるために、一緒に働く仲間が率先して「石井さんと楽しく働くためのガイドライン」をつくり始めたことに感銘を受けたと話す。
“ちがい”を力にしようとするヘラルボニーの文化について、企業の組織マネジメントに携わってきた臼井さんはこう分析する。
「多様性を活かして価値を生み出すために、さまざまなアイデアを組み合わせていく。そのプロセスを皆さんが楽しんでいることが伝わってきます。
『異彩を、放て。』というヘラルボニーの経営理念そのものが組織の土壌になっているからこそ、ちがいを活かし合い、組織の力にすることが当たり前にできているのではないでしょうか。そういう意味でも、理念やゴールの設定は重要な要素だと考えます」(臼井さん)
「アイデンティティ」と「ラベル」はイコールではない

一方、ちがいを象徴する“アイデンティティ”や“ラベリング”についてもトークが白熱。松田さんはヘラルボニーが「障害者アート」という言葉を使わない理由について、「障害のある人だからこそ描けるものがある。でも一人ひとりの作家が描いたものを簡単に一括りにはできない。伝え方はとても重要」と述べた。
これを受けて石井さんは、当事者としての想いを語った。
「“視覚障害者”というラベルの中にもグラデーションがあり、一括りにはできません。
だから僕は『あくまで自分はこうです』と自分の場合はそうであることをきちんと伝えるようにしています。
ちがいを押しつけず、尊重し合えたらいいなと思います』(石井さん)

アートに次いで、アカデミーという新たなアプローチにも挑戦するヘラルボニー。その現在地は、松田さんの目にどう映っているのか。
「たくさんの人や企業がヘラルボニーに目を向けてくれて、『素敵だね』『一緒に何かしようよ』と言ってくれることに心から感謝しています。
実はアカデミーは、完全に社員からの起案なんです。ヘラルボニーは7周年を迎えましたが、ここまで来ることができたというのと同時に、ようやくスタートラインに立った感覚があります。
これまでの7年間はとにかく楽しかったし面白かった。ヘラルボニーアカデミーという新たな活動でも、初心を忘れず挑戦を続けていきます」(松田さん)
(執筆:星野愛、編集:中島日和)
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