2026年10月上旬、全米のディーゼル燃料価格は記録的な高値圏で推移しています。この燃料価格の急騰は、物流コストの増大を通じて食料品や日用品の価格に転嫁され、学校や農業経営、食料銀行などの地域経済に深刻な財政的打撃を与えています。
なぜディーゼル価格がこれほど高騰しているのか
AAAのデータによると、ディーゼル燃料の全国平均価格は1ガロンあたり6.52ドル前後で推移しており、9月22日に記録した史上最高値6.53ドルに迫っています。これは1年前の3.69ドルから大幅な上昇です。特にカリフォルニア州では10月7日時点で8.35ドルという高値を記録しました。石油アナリストのパトリック・デ・ハーン氏は9月初旬、価格上昇が続けば「一部の給油機はこれ以上の価格を表示できない設計になっている」と指摘しました。
この急騰の背景には、イラン戦争によるホルムズ海峡でのタンカー航行の制限や、ペルシャ湾岸の製油所およびインフラへの攻撃といった地政学的リスクがあります。さらに、ウクライナ戦争におけるロシアの製油所への攻撃も供給不安を煽っています。ミシガン州立大学の食品経済学者デビッド・オルテガ氏は、「ディーゼルは経済の働き手となる燃料だ」と述べ、世界的な需要の強さや高い物品税も価格を押し上げていると分析しています。

食料価格と物流への波及効果
ディーゼル燃料は、トラクタートレーラーや配送トラック、農業用コンバインなど、アメリカ経済の根幹を支えています。専門家は、ディーゼルコストの急騰がインフレを加速させる可能性があると警告しています。インフレ率は2026年初頭の2.4%から8月には年率3.4%へと上昇しました。
特に生鮮食品の輸送コストは顕著です。カリフォルニア州サリナスからニューヨークへレタスを輸送するトラック1台あたりの費用は約10,000ドルに上り、そのうち4,200ドルをディーゼル代が占めています。1年前であれば、同じ燃料費は約2,700ドルでした。オルテガ氏は、「当初、コスト増の多くはサプライチェーン内で吸収されますが、契約の見直しや燃料サーチャージが適用されるにつれ、そのコストは食料品店へと転嫁されていきます」と説明しています。
食料銀行と地域社会の苦境
食料銀行などの非営利団体も、本来であれば食糧支援に充てられるはずの資金を燃料費として支払わざるを得ない状況です。アトランタ・コミュニティ食料銀行のサプライチェーン担当役員ケネス・ヒル氏は、「今年、予想外のディーゼル燃料価格に10万ドルを追加で支払うことになります」と述べました。
「もしこの支出がなければ、12万2,000食の食事を困窮世帯に提供できたはずです。」 Kenneth Hill, アトランタ・コミュニティ食料銀行 サプライチェーン担当役員

ヒューストン地域のMETRO(交通局)やサイプレス・フェアバンクス独立学区(CFISD)などの組織は、このような価格変動から自衛するため、圧縮天然ガス(CNG)やプロパンガスといった代替燃料への転換を急いでいます。METROは連邦政府の資金を活用し、ニューフライヤー社との9,300万ドルの契約に基づき100台のCNGバスと関連インフラを導入する計画です。CFISDは、2019年に承認された債券を活用してプロパン車への投資を進め、1ガロン1.02ドルという安定した価格のプロパンを利用することで、教育予算をインフレから守っています。