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2023-09-15 10:00:00
「フジアンヴェナトル・プロディジオサス」の想像図。この恐竜の化石の発見により、これまで謎とされてきたジュラ紀前後における鳥類の進化の過程が明らかになるかもしれない。
趙荘
- 「フジアンヴェナトル」の下腿は、大腿の約2倍もの長さがあったようだ。
- この1億5千万年前に存在していた恐竜は、始祖鳥と同じくらい古い、極めて初期の鳥類である可能性が高い。
- このことは、鳥類の長い脚が、これまで考えられてきたよりもずっと早く進化した可能性を示唆している。
1億5000万年前の恐竜が発見された。これによって鳥類の進化の歴史が塗り替えられるかもしれない。
「フジアンヴェナトル・プロディジオサス(Fujianvenator prodigiosus)」と名付けられたこの恐竜は、最初の鳥とされている始祖鳥(始祖鳥)と同じくらい古いと考えられている。しかし、これまで発見されたどの生物とも似ていない。
この「奇妙な」新種は特徴的な長い脚を持っており、走るのは得意だったが、上手に飛ぶことはできなかった可能性があると、この研究をリードした中国科学院の古生物学者、王敏(Min Wang)がロイターに語っている。
「フジアンヴェナトルは現代の鳥類とは似ても似つかない」
この発見に関する論文は、査読を経てネイチャー誌に掲載された。恐竜がこれまで考えられていたよりも早い段階で鳥のような特徴を持つように分化したことを示す研究は増えており、この論文がそれをさらに裏付けることになった。
フジアンヴェナトルは走禽類あるいは渉禽類だった
鳥類は、ティラノサウルス・レックスやヴェロキラプトルを含む恐竜の一群である獣脚類から進化したと考えられてきた。
しかし、獣脚類から鳥群(翼を持つ恐竜とそれらの子孫である鳥類の総称)への変遷を示す化石が少ないため、どのような進化をたどったのか、まだ限られたことしか分かっていない。これらの化石はジュラ紀の終わりごろのもので、骨が空洞になっているため壊れやすく、かなり珍しいものだとネイチャー・ニュースが伝えている。
最古の鳥群の化石は、始祖鳥だと考えられてきた。これは1億5000万年前に存在していた羽のある恐竜で、飛ぶことができたとされている。
しかし、2022年10月に福建省南平市近郊で発見されたこのフジアンヴェナトルの化石は、同時期に起こっていたまったく異なるタイプの進化を垣間見せている。
見つかったニワトリ大の骨格には頭と尾がなく、指の保存状態も悪いため、どのような姿をしていたのかを正確に知ることは難しい。
頭と尾が欠けたフジアンヴェナトルの化石。
ワン・ミン
それでも、このひょろ長い脚は、これまで記録されてきた他の化石とは完全に一線を画している。
下腿の長さは大腿の約2倍もあるのだ。つまり、ミチバシリといった走禽類のように素早く走ることができたのではないか、あるいはツルやサギといった渉禽類のように脚で沼地をかき分けていたのではないかということが考えられる。
「私は『素早く走っていた』という方に賭ける」と王はロイターに語っている。
フジアンヴェナトルの化石に基づき、骨格を分かりやすく示した図。
ワン・ミン
フジアンヴェナトルが飛べたかどうかについて、王の考えはまだまとまっていない。肩甲骨と指が短いことから、前腕は物をつかむのに適していた可能性がある。だが研究によると羽が生えていたとも考えられている。
「骨格の特徴からすると、フジアンヴェナトルは少なくとも飛ぶことが得意だったというわけではないようだ」と王は言う。
このことは、フジアンヴェナトルが始祖鳥とはまったく異なる生態的ニッチを占めていたことを示唆していると、論文の共同執筆者で中国科学院の古生物学者である尤海魯(Hailu You)がネイチャー・ニュースに語っている。
1億5000万年前までに、恐竜は単一の種からの進化というより、すでに異なるタイプの鳥類の特徴を進化させていたと考えられており、今回の発見により、それがさらに裏付けられることになったとユタ大学の古生物学者マーク・ローウェン(Mark Loewen、今回の研究には関与していない)がネイチャー・ニュースに語っている。
とはいえ、鳥類の進化を理解するには、まだ多くのことを明らかにする必要がある。
始祖鳥やフジアンヴェナトルと、白亜紀の層から発見された鳥類の化石との間には、化石記録上まだ3000万年もの空白期間があると、論文の著者らはプレスリリースで述べている。
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